最近、知って気になった新しい言葉「人新世(じんしんせい/ひとしんせい *本書での読みはじんしんせい)」。
ウィキペディアによると、『人類が地球の地質や生態系に重大な影響を与える発端を起点として提案された、完新世(Holocene, ホロシーン)に続く想定上の地質時代』とのこと。わかったようなわからないような。
それもそのはず、私が地質年代のことをさっぱり理解していないからで、ウィキペディアによると『区分の仕方は大きくは古い方から冥王代、太古代、原生代、顕生代の4つの累代、さらに細かく 代、紀、世、期と分類されている』とのこと。
スケールがデカすぎてイメージを掴みにくのだけれど、よく聞く白亜紀とかジュラ紀とかカンブリア紀とかは「紀(period)」のくくり。そのより小さい「世(epoch)」が本書の人新世であり、現在は完新世らしい(今までそんなことも知らずに生きてきた)。ちなみにちょっと前に話題になったチバニアンは「期(age)」のくくり。
ポイントは、そこそこデカいくくりの年代がすでに始まっていることについて、学術的な国際団体が同意するかもしれない、というところまで話が進んでいるよってことだ。
とはいえ、本書ではその議論がどうなっているかの最前線を紹介しているのではなく、サピエンスたる現代人類に異変が起きていること、そして起きている要因や背景を中心に描いている。
この本を読んでいる方々の多くは、自然死ではなくミスマッチ病による死を迎えるはずだ。だがそれは、正しい(あるいは誤った)DNAを持って生まれてきたからではない。ミスマッチ病は、身体とその身体が置かれた昨今の環境との緊張関係によって生じると考えられている。(p.9)
進化の圧力を受けるほど十分な人類の歴史(=時間)はなく、よって異変が起きる原因は、遺伝子ではなく、むしろ環境だということになる。有り体に言えば、仕事で座っている時間が長くなったので腰痛になる人がものすごく増えたという、なんだかわざわざ小難しく説明されるほどでもないという話になる。
足から始まり手に至るという構成で非常に丁寧に書かれている一方で、結論は、
私が持っている特効薬を使えば、人びとが苦しんでいる病的状態の95%以上を元に戻すことができる。その解決法はたった一行で表現できる。「世界中の政府が運動不足と肥満にとり組むこと」。(p.299)
ということになる。
座り仕事が多くなり、運動不足だからとジムに通い、ジョギングをしたり、肩こりや腰痛がひどくなれば整体に通う。こういう人は日本でも少なくないだろう。
かくいう私もそれに近い。新型コロナ対策で在宅勤務が奨励されたが、ほぼ家から出ず、近場のスーパーやコンビニへ自転車で買い物をして、さっと帰るみたいな生活をしていたら、これはマジで体に悪いなと直感し、いち早く普段の出勤に戻した。
今の会社は駅から徒歩20分で、家から駅の徒歩10分と足すと、合計で往復1時間歩くことになる。歩くことは大事というのは、本書で何度も何度も登場する。
人新世という新しいコンセプトについては、あとがきにあるように
人類が発明した多数の新化合物、核実験による放射性同位体、土壌に含まれるリン酸塩と窒素(人工肥料の成分)、プラスチック片、コンクリート粒子、ニワトリの骨など(p.314)
といった人新世たる新しい世へと移り変わったという客観的にサポートする証拠がある。人間という生命体が急激に増え、総じて活動が活発化し、環境を破壊し、互いを殺し合っている。地球の歴史を鑑みると極めて短い期間に人間が環境を変えてしまっていることはよく分かる。
改めて本書に戻るが、非常に大きなスケールの話題であるが、サピエンスの異変はどうにもしょぼい。腰痛、糖尿病、アレルギー、視力低下、骨粗鬆症、腱鞘炎など。
もうちょっとワクワクするような話かと思っていた。まあ、意識づけて歩くようにはしようとは思いましたけれど。他にも人新世の本を読んでみたい。