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感想文08-54:告発! 検察「裏ガネ作り」

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※2008年10月14日のYahoo!ブログを再掲。
 

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本書は、以前読んだ、 ルポ 内部告発(感想文08-52)で登場した検察ウラ金事件の内部告発者本人が記したものである。

感想を書く前に、本書の背景について簡単に説明しておく。

著者の三井環さんは、現職の検事だった。検察が調査活動費をウラ金にして、ほとんど料亭の飲み食いやゴルフに使っていた。このことを「私憤」から内部告発しようとした。

02年4月に実名で内部告発し、同月22日には、テレビ収録が予定されていた。しかし、まさにその日、三井は別件で逮捕された。

325日間、拘留され、そして保釈が認められた。そして、本書が、03年5月7日出版された。本書が出版された時には、まだ裁判の途中であり、事件はまだ決着がついていなかった。そういう背景がある。

さて、本書では、不当に逮捕され、拘留されたことについて、こういったやり方を選択した検察に対して、そして著者本人を「悪徳検事」と報じるマスコミに対して、怒りと悔しさがにじみ出ている。

率直な感想としては、検察という組織の恐ろしさがよく分かる。

やろうと思えば、誰であろうと逮捕できるし、そして1年近く拘留することもできる。

自分がそういう身にならないという保証はない。薄ら寒いものを感じる。

一方で、著者も脇が甘い点が色々とある。実際に暴力団と付き合いはあったし、マスコミを検察に呼んだりもしていた。脇の甘さについてしっかりと反省していると書かれていることから、実直な人間であろうとも思う。

本書では三井氏以外に、朝日新聞の記者である落合博実氏の解説も掲載されている。

主観の強い三井氏よりも、冷静に状況を描写している解説の方がこの事件の理解の手助けになるし、何より本のクオリティを上げている。

私憤から始まった内部告発は、三井氏の心変わりで何度も揺れる。記事にしようとした落合記者が「これ以上ふりまわされるのはごめんだ」とメモしていたと語るように、内部告発そのものが抱える難しさを伝えている。

権力機構が本気を出せば、個人を簡単に社会的に抹殺できる。個人が組織に対抗できる数少ない手段の一つが内部告発であるが、三井氏が刺し違える覚悟で放った一撃は、結局、わずかな逡巡のタイムラグで、致命傷を追わすことができなかった。

本書はまさに裁判の途中であり、尻切れトンボのような形で終わる。そして、著者は裁判には勝てるという、楽観的に見込んでいる節が行間から伝わる。

著者は検事であり、刑事裁判のプロであり、法理論も熟知している。だからこそ、証拠も何もないのに、裁判で負けるわけはないと心底信じているように思えた。

結果どうなったか。

05年2月、大阪地裁で実刑判決。つまり、三井氏の負けだ。当然控訴する。

07年1月、大阪高裁は控訴を棄却。そして上告する。

そして今年08年8月29日、最高裁は上告を棄却。

決着がついた。

三井氏は懲役1年8月・追徴金約22万円で、実刑判決が確定した。今年の10月2日に産経新聞の取材を受けている。

64歳になった著者はもうすぐ収監されるという・・・。

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(感想文の感想など)

実際に三井さんは、2008年10月17日~2010年1月17日の間、収監された。

改めて内部告発の難しさ、検察という組織の怖さを思い知らされる。ううむ。