40代ロスジェネの明るいブログ

2020年1月11日からリスタート

感想文09-10:物理学と神

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※2009年2月24日のYahoo!ブログを再掲。

 

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何とも興味を惹かれるタイトル。

本書では、物理学史とその時代時代の科学者たちの神に対する姿勢の変遷について書かれている。

科学史としての正確さや、物理学についての独自の比喩的表現に、若干の違和感を持ったりもするけれど、全体としては分かりやすく、物理学の移ろいを示していると思う。

むしろ、「神」に対する意識を織り込むことで、他と違う色彩の科学史が描かれている。

神の存在証明としての科学から、神の不在証明としての科学、そして変貌しては現れる神の御姿。時代時代で翻弄される科学者たちを透かして、物理学の歴史が見えてくる。
これは単純な宗教対科学論争ではない。価値と事実の衝突(そもそも厳密には衝突しないと思っているけれど)ではなく、事実を積み重ねていく作業の中で、神(完全性)を否定したり、悪魔(矛盾)に突き当たったり、神(完全性)を見出したりするということだ。

さて、印象に残っていることは、「非対称性」についてだ。不斉合成や鏡像異性体について、ちゃんとした本を読んだことがなかったので、知らないことが多かった。そうだった。野依先生は、不斉合成でノーベル賞を取っているんだった。サリドマイドの話は色々と調べてみると(といってもWikipedia先生だけど)、「神の催眠作用(R体)・悪魔の催奇性(S体)」という説は、今となったはアヤシイらしい。

ふうむ。

確かに、いつの時代でも神を意識せずに科学を考えることはできないようだ。これは先天的に神を感じざるを得ないように人間が作られているからかもしれない。

え?誰にって?

そりゃあ「神」にでしょ。

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(感想文の感想など)

改めて10年以上も前に書かれた自分の感想文を読み返すのも面白い。

サリドマイドについてちょっと触れると、東工大のプレスリリースサリドマイドが手足や耳に奇形を引き起こすメカニズムを解明にあるように、ようやっと最近になってサリドマイド催奇形性の詳細なメカニズムが解明されつつある。

ユビキチン化によるタンパク質分解は、ここ20年くらいで研究が進みつつある。面白いのが、植物ホルモンであるオーキシンによってもユビキチン化を介したタンパク質分解がなされているということだ。

タンパク質から見た生命現象という観点でも、今後、ホットになる研究分野だろう。ケミストリーとバイオロジーをつなぐ分野でもあるね。