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本書は新書で200ページくらいだけれど、絵画は全てカラーで掲載され、美しく切なく悲しいハプスブルク家の物語がぎっしり詰まった良書。
中身が濃いので、読書感想文(っていうか備忘録)を2回に分けて書いてみようと思う。
世界史を習ったはずなのにさっぱり覚えていないから、逆に新鮮。かなり面白い。
前半はスペイン系ハプスブルク家(なので基本はスペイン語読みをベースにします)。
1500年にカルロス1世が誕生。ちなみにカルロス1世の母親である狂女フアナもキャラが立っていて大層面白い。改めてフアナの本を読んでみたい。
さてカルロス1世の息子がフェリペ2世で、スペイン帝国を継ぐ。ここからスペイン系ハプスブルク家が始まる。オーストリア系ハプスブルク家は”書類王”といわれ、大変有能な行政官僚だったみたい。そして、4度結婚している。1度目はイングランド女王メアリー1世。あのブラッディ・メアリーのメアリー。先天性梅毒のために精神錯乱状態にあったという説もある(感染症は世界史を動かす(感想文08-16)参照)。ここでつながるのかぁ。
まあ、色々あって4度目の結婚でフェリペ3世が生まれ、晴れて跡継ぎとなる。ここら辺からスペインの斜陽が始まる。”怠惰王”といわれたダメ王。
続くはフェリペ4世。審美眼に優れ、多くの芸術家を庇護した。本書でも登場するベラスケス、ネロが死の淵で見れたことで有名なルーベンスに多くの絵を描かせた。現在のプラド美術館の基礎となった。
最後は、カルロス2世。近親婚の悲劇的末路とでもいえよう。王が無能でも何とかなるけれど、世継ぎがいなくなると王族は滅んでしまうという好例。ウィキペディアには家系図が載っている。
せっかくのなので近交係数(inbreeding coefficient)を計算してみよう。と思った・・・けれど、あまりに複雑な家系図を見て断念。これは無理だ。せめて近いところだけでも、ということで父親のフェリペ4世と母親のマリアナは叔父・姪の関係。これだけでも0.125。
で、調べてみると同じように興味を持っている人もいるらしく、09年4月に論文として発表されていた。
The Role of Inbreeding in the Extinction of a European Royal Dynasty, PLoSONE. 2009;4(4):e5174. Epub 2009 Apr 15.
結論を言うと、近交係数は、なんと”0.254”。もはや親子、兄妹よりも濃い。そりゃあダメなわけだ。ちなみにこの論文では、16世代で3000人以上を対象にして、近交係数をコンピュータにより算出している。ぼくの手計算では不可能だ。
結局、カルロス2世は40年も生き長らえず、1700年に亡くなった。1500年のカルロス1世誕生から1700年のカルロス2世の死没までの200年間がスペイン系ハプスブルク家の歴史。
こうしてまとめてみて感じたのは、字面だけでは全然頭に入ってこない、ということ。
ところが絵画を見ながら、歴史を学べばすっきりと覚えられる。何かしらの絵は理解に必要だ。なぜか教科書に掲載されている絵は、落書きの対象となってしまったのだけど…。
そして、画家についても備忘録を記しておこう。
アルブレヒト・デューラーは、ドイツ史上最高の画家といわれている。確かに精密でありながら美しい絵だ。1515年の犀の木版画は有名。インパクトあります。
続いて、エル・グレコ。日本語的には”あのギリシャ人”って感じで、本名ではありません。暗い雰囲気と、ぐにょんと伸びた人体が特徴的。彼の作品は大原美術館(岡山県)にもあるみたい。見てみたい、っていうか行ったことあるんだけど…。”岸田劉生”のイメージしか残っていない…。
最後にベラスケス。大変美しい絵です。ラス・メニーナスを見るだけでも本書を購入する価値があると思えるほど。その絵にある歴史を知るとさらに愛おしく思えるから不思議。
前編だけでずいぶん長文を書いたものだ。一息つけよう。ということで、後編はまた今度。
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