※2009年6月21日のYahoo!ブログを再掲。
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スペイン系は栄華と遺伝的頽廃の話だった。自らの血の呪いにより、途絶えてしまう。
一方のオーストリア系は、血生臭い。フランス革命のギロチンに、第一次世界大戦の幕開けがあり、ハプスブルク家の人間の多くが殺されるのだ。
ちょっと整理しながら書いてみよう。
偉大なる神聖ローマ皇帝であるカルロス1世(カール5世)の弟であるフェルディナント1世が、オーストリア系ハプスブルク家の始まり。しばらく神聖ローマ皇帝の座は世襲されていく。
本書では、有名なアルチンボルドの『ウェルトゥムヌスとしてのルドルフ二世』から話が始まる。Bunkamuraザ・ミュージアムで「奇想の王国 だまし絵展」が開催されており、その表紙になっている絵でもある。
描かれているルドルフ2世は、フェルディナント1世の孫にあたる。政治的には無能であったが、現代的にはオタクと呼べる人物で、芸術や科学にも関心が高かった。天文学で有名なケプラーとの親交もあったという。アルチンボルドに描かれている時点で、相当の変わり者と言えるだろう。
ちょっと間が空いて、オーストリア系で男子がいなくなる。そして、女帝「マリア・テレジア(1717-80)」が登場する。プロイセンのフリードリヒ2世と激しく対立し(2人が婚約するという話もあったのだけれど)、その結果、オーストリアはフランスとの協力関係の道を選ぶことになる。
女帝は生涯で16名もの子を産む。結婚政策により、子どもたちの多くは近隣諸国の王族と結婚する。最も有名なのが、言わずと知れた「マリー・アントワネット」だ。物語フランス革命(感想文09-21)については既に書いているので、割愛。
また少し時代を進めてみよう。フランスに嫁がせたのに殺されてしまったハプスブルク家は、”かたき”とも言うべきナポレオンに一族を差し出すことになる。この辺で一族の斜陽は容易に想像できる。マリー・アントワネットの甥の子供に当たる「マリア・ルイーザ(1791-1847)」がその人だ。
そしてナポレオンとルイーザの間に子が誕生する。ライヒシュタット公であり、「ちびナポレオン」と陰口を叩かれた。反ナポレオン派により幽閉され、父を渇望し、尊敬したが、父との再開は果たせぬまま、そして母の愛を受けることもなく、21才の若さで亡くなってしまう。
叔母であるゾフィーとの不倫など、想像逞しくすると楽しくなる話もあるけれど、同時に血生臭い話にもなってくる。
ルイーザの甥に当たる「フランツ・ヨーゼフ1世(1848-1916)」を中心にして、まとめてみる。彼は長生きしたからこそ数多くの悲劇を見ることになる。
妻のエリザベート皇后は、本書に載っているヴィンターハルターの絵画でも分かるように超絶美人だ。絵画の正確さは、もはや写真に近い。うっとりする。悲しいかな暗殺され、亡くなった。
次に弟のマクシミリアン(ライヒシュタット公とゾフィーの不貞の子であると想像すると面白いけれども)。ナポレオン3世にそそのかされて、メキシコの皇帝になる。が、あっさりはしごを外され、銃殺される。本書では、マネの『マクシミリアンの処刑』が掲載されている。写真も載っている。
そして、長男のルドルフは心中。どんどん悲惨になってきた。
最後に、甥のフランツ・フェルディナント。オーストリアの皇位継承者として期待されていたが、かのサラエヴォ事件で暗殺される。これが第一次世界大戦の端緒となる。
こうしてオーストリア系ハプスブルク家の歴史は幕を閉じる。数々の美しい絵画は、悲しみに満ちている。
スペイン系とオーストリア系の2系統について2回に分けてまとめた。
本書は美しい絵画とともに、喜びと悲しみに満ちた栄華な一族の歴史を分かりやすく示している。一読の価値は大いにあるので、オススメ。
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(感想文の感想など)
こちらはオーストリア系ハプスブルク家の感想文というかまとめ。