40代ロスジェネの明るいブログ

2020年1月11日からリスタート

感想文10-12:ピョートル大帝とその時代 サンクト・ペテルブルグ誕生

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※2010年2月19日のYahoo!ブログを再掲。

 

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生まれて初めてロシアだけに関連する本を読んだ。

ロシアに興味を持ったきっかけは、危険な世界史(感想文10-01)だ。その感想文で、『ふむ。ロシアが面白そうだ。ロシアについてもっと知りたい。』と書いた。

もう一つ、ロシアへの興味を惹起したのは、国家の罠(感想文09-60)。著者の佐藤優さんは外交官で、ロシアの情報収集・分析の専門家だった。そこで出てきた、生々しいロシアの文化や実像も印象深い。

さて、本書。主人公はピョートル(1671~1725)。彼のキャラがいかんせん濃い。本書によると2メートル13センチとのこと。デカ過ぎる…。シャキール・オニールが216センチなので、

ほとんどそのくらい。史上、最も巨大な皇帝だろう。

ロシアは言わずと知れた世界で最も大きい国であり、日本とも海を挟んで対峙している。しかしながら、日常生活においてロシアとの関係を感じる機会は少ないだろう。

思いつくのが、ウォッカイクラ(ロシア語)、シャラポアくらいか。ほかには、次の冬季オリンピックがロシアのソチ(意外と南方に位置する街)だということかな。

本書に戻ろう。日本人がロシアと距離を感じる理由の一つは、中心地が西にあるということではないか。本書の主役であるピョートルが築いた人工都市が、サンクト・ペテルブルグだ。聖なるペトロの街というのがその名の由来で、ペトロとはピョートルのこと。この都市は、バルト海に面し、ロシアの西の端っこにある。ちなみにモスクワも結構近くて、西の方に位置している。地政学的にロシアはヨーロッパに近いのだ。

ロシアはスウェーデンと戦争して、領土を奪い、西欧列強にロシアのプレゼンスを見せつけた。当時の先進国である西欧を見習い、工業化を進め、先端技術を取り入れた。

ピョートルの生き様もスゴい。最初の嫁さんを修道院送りにし、腹違いの姉を幽閉し、後継する意思のない息子を処刑した。エネルギッシュで、タフで、大酒飲みで、暴れん坊で、きかん坊だった。さいごには、真冬の海で溺れた漁師を助けて、風邪を引いて死んでしまう。

当時の民衆や聖職者にとっては、急激な西欧化を進めるピョートルは、偽物だと思いたいくらいの憎らしい存在だった。ピョートルの偉大さは、後世の人たちによって形作られていく。

印象深かったのが、2番目の嫁さんであるエカテリーナ(1684~1727)のこと。貧しい農家出身で、スウェーデン人と結婚したけれど、夫が戦死し、その後ロシアの将軍に引き取られ、さいごにピョートルの妻になった。彼女は、怪物のピョートルをなだめることができたらしい。巨大なピョートルが、妻におとなしくさせられているのを想像するだけで、何だか良いヤツに思えてくるから不思議なものだ。

何はともあれ、(西欧中心の)世界史でロシアの存在感が増したのは、誰よりも存在感のあるピョートルの誕生による。国の動乱期には、偉大な英雄が登場する。同時代の民衆には疎まれつつも、無意識的には求められていたリーダーだったのだろう。

西欧の列強になり、列強であり続けるという野心は、今もなおロシアには息づいている。たぶん。

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(感想文の感想など)

10年前から行ってみたい国としてロシアを挙げているが、未だに行けてない。暖かい時期にエルミタージュ美術館に行ってみたい。