40代ロスジェネの明るいブログ

2020年1月11日からリスタート

感想文14-36:悪い奴ほど合理的 腐敗・暴力・貧困の経済学

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※2014年7月8日のYahoo!ブログを再掲。

 

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○○の経済学という本をよく見かけるようになった。これまでも存在していたけれど、私自身が経済学を学んで認識するようになったのかもしれない。

これまでに貧乏人の経済学(感想文13-05)という本を読んだことがあった。貧乏な人に経済も何もあったもんじゃないと思われるかもしれない。しかし、経済学は人間の行動や行動変容をもたらすインセンティブについて考える学問であり、世界の大きな課題である貧困を解決するには、経済学の視点は欠かすことはできない、と思う。

本書の目標とそれが依拠している研究は、世界の経済的ギャングの腐敗と暴力がもたらした大惨事を理解し、その経済開発に対するインパクトをより鮮明に浮き彫りにすることにある。

クライシス・キャラバン(感想文14-13)で学んだことは、暴力があり、貧困が起こり、援助が行われるのではなく、援助を得るために暴力(しかも残虐で苛烈)が行われているということだ。暴力は援助の原因ではなく、手段なのだ。腐敗や暴力も経済学のテーマとなりうる。実証的に分析するためにはデータが集まらないという困難がつきまとうのだけれど。

僕らが対峙している世界の貧困と戦う最善の方法は何かとの問題が、画期的な重要性を帯びているというのは誇張ではない。(中略)10億人が1日1ドル未満の暮らしをしているし、世界人口の半数、つまり約30億人が1日2ドル未満の収入で何とかやっている。

世界の多くの人は貧しい。世界が抱える課題、世界の多くの人が悩む課題は、貧困であるといえる。約30億人が1日2ドル未満の収入というのは、驚きだ。

より大きな問題は天候だ。結局のところ、降雨が経済分析と、暴力に関するアフリカの最近の歴史の両方にとって鍵を握っている。雨が降らない時に多くの戦争が勃発している。

アフリカでは、旱魃によって引き起こされた経済的困難に見舞われた場合、その国は紛争に陥るリスクが20~30%も高まる。

貧困や紛争に関する本をそれなりに読んできたが、原因を天候であるという主張を見たのは初めてだと思う。そして、昨今の異常気象が紛争発生の可能性を高めているのかもしれない。

日本でもゲリラ豪雨だったり雨の降らない日が続いたりと、私が幼い頃に比べて天候が不安定になったような気がする。実際に気象は異常化しているのだろうか。そういえば気象に関連する本をあんまり読んだことがない。

終戦という人道的な至上命題と、参入障壁を維持するという既存企業のビジネス上の至上命題との間には悲劇的な不一致がある。(中略)戦争地帯における操業、あるいは腐敗した政府への協力によって味をしめた会社は、現状を維持したいと願う可能性があろう。というのは、それが収益にとっては良いことだからである。

紛争が新規参入の障壁となる。ブラッド・ダイヤモンドのような紛争地帯でダイヤモンド算出を独占しているとする。独占企業が独占を出来るだけ長く継続したいと考える。そのためには新規参入を防止したい。結果、紛争を継続させることになる。資源があるところに紛争は起きる。資源争奪で起きる場合もあるのだろうが、こうした新規参入防止のために紛争を長引かせることもあるということを初めて知った。

人間は合理的である。恐ろしく合理的である。自らの利益のために誰かを不幸にすることを厭わない。得てして暴力の犠牲になるのは子どもと女性だ。

合理性は経済学が介入する隙間となる。犠牲者の存在は介入の正当性となる。より合理的な行動変容を起こすインセンティブを導入することが紛争を回避し、貧困を生み出さないことにつながる。旱魃の際に最低限の生活を保証するという仕組みなど(例:保険)がそれにあたる。

経済学は万能ではないし、実証するには時間もコストもかかる。しかし、経済学をベースにした実証研究は世界を変え、多くの人を幸福にする力が確かにある。インセンティブにより行動が変われば社会は変わるのだから。

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(感想文の感想など)

気候変動により、農作物がとれなくなり、飢餓を引き起こし、紛争を引き起こす。栄養失調、病気の蔓延、貧困となる。SDGsの達成目標はつながっているのだ。