40代ロスジェネの明るいブログ

2020年1月11日からリスタート

感想文16-20:「学力」の経済学

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※2016年6月30日のYahoo!ブログを再掲。

 

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久しぶりに経済学の本。

現在、我が家の悩みの種は、長男の学校での振る舞いだ。最近、明らかになったのは、どうやら授業中に立ち歩いたりしているという衝撃の事実だ。

家ではおとなしく、聞き分けの良い長男だと思っていたのだが、どうやら学校では全く異なる一面を見せているらしい。

特段、勉強ができないとか、授業についていけてないとかそういうのではないようだが、どうも粗暴で横着な姿を晒しており、担任からは目をかけてもらっていると目をつけられているの中間地点くらいに対処されている。

もともと連絡帳をきちんと書かないとか、漢字を正しく覚えていないとか、思い返せばそういうサインはあったのだが、長男の性格がルーズなだけという、これまた親のルーズな判断で見過ごしてきた。

ようやっとことの重大さに気づき、妻とは発達障害とかADHDとかそういこともあるかもしれないと、真剣に相談するようになり、いろいろと調べ、もう少し手をかけて長男と接するという結論に至った。

前置きが長くなったが、この手の悩みは各家庭で多かれ少なかれ存在するだろうし、家庭によっては真剣に悩み、とにかく助けて欲しいと痛切に願っているケースもあるだろう。

さて、本書だが、私にとって非常に救いとなった。著者の考えに完全に賛同するし、教育行政や政策に対するモヤモヤが少しは晴れたように思う。

まずは、本書で示されていたエビデンスの例を挙げておこう。

ご褒美は、「テストの点数」などのアウトプットではなく、「本を読む」「宿題をする」などのインプットに対して与えるべきだということです。

勉強や成績の対価として褒美をあげてはいけないというのが、一般家庭の常識として根付いているように思う。仕事に対して報酬はあるが、勉学への報酬は良くないことと一般に思われている。

本書では、明確にご褒美はOK、でもあげるならインプットに対してあげましょう、と根拠に基づき主張している。よし、家で実践しよう。

子どもをほめるときには、「あなたはやればできるのよ」ではなく、「今日は1時間も勉強できたんだね」「今月は遅刻や欠席が一度もなかったね」と具体的に子どもが達成した内容を挙げることが重要です。そうすることによって、さらなる努力を引き出し、難しいことでも挑戦しようとする子どもに育つというのがこの研究から得られた知見です。

ほめるのは存外難しいものだ。ふむふむ。

能力をほめることは、子どものやる気を蝕む

とのこと。具体的に子どもが達成したことをほめる。これは部下の育成も同じかもしれない。

「自分のもともとの能力は生まれつきのものではなくて、努力によって後天的に伸ばすことができる」ということを信じる子どもは、「やり抜く力」が強いことがわかっています。

大事な「やり抜く力」。努力すれば伸びる、ということを分かっているかどうか。努力しても結局ダメだよねと思うと、最後までやり抜けないのだ。

非認知能力への投資は、子どもの成功にとって非常に重要であることが多くの研究で示されています。

非認知能力とは、意欲、協調性、粘り強さ、忍耐力、計画性などのこと。単に勉強漬けにして、テストが得意な受験秀才に育てても成功につながらない。良い大学を出ていても仕事で使えない扱いされる人は、きっと非認知能力が欠けているのだろう。

それから他に気になった箇所を挙げておこう。

経済学がデータを用いて明らかにしている教育や子育てにかんする発見は、教育評論家や子育て専門家の指南やノウハウよりも、よっぽど価値がある…むしろ、知っておかないともったいないことだとすら思っています。

そのとおりだ。教育評論家や子育て専門家とかなぜあんなにちやほやされるのか理解できない。同様に例えば3人の子どもを難関大学に入れた親とか海外の有名大学に入れた有名人とかの本を真剣に読もうとする人の気も知れない。根拠も何もないのに、いや、むしろないからこそ、自分にとって都合よく解釈し、拡散し、消費されるのかもしれない。

どこかの誰かの成功体験や主観に基づく逸話ではなく、科学的根拠に基づく教育を。

『教育にエビデンスを』という本書の主張は極めてシンプルだ。医療の世界では、エビデンスベーストメディシンという言葉があり、根拠に基づく医療の重要性が日本で認識され始めたのが、ようやっと2000年台前半くらいだ。意外なことだが、ほんの少し前まで医療にエビデンスは求められていなかったのだ。

さて、教育だが、こちらはさらに不透明な世界で、エビデンスがないばかりか、その重要性すらほとんど認識されていない。

文部科学省の調査によると、家計が大学卒業までに負担する平均的な教育費は、幼稚園から大学まですべて国公立の場合でも約1000万円、すべて私立の場合では約2300万円に上ります。日本政策金融公庫の調査では、子どもがいる過程は、なんと年収の約40%をも教育に使っています。

そんなにお金がかかるのかぁ。2人いるから最低でも2000万円。私立は無理だな。国公立に行けと言おう。ちなみに長男はテレビの影響で、京大ポケモン部に入りたいらしい。入れるものなら入っていただきたい。

これまで日本で実施されてきた「少人数学級」や「子ども手当」は、学力を上げるという政策目標について、費用対効果が低いか効果がないということが、海外のデータを用いた政策評価の中で既に明らかになっている政策である

多くの政策にエビデンスがなく、実証できるデザインが組まれておらず、よって実証すらされないので、効果があったかどうかすらはっきりしない。教育政策にかぎらず、全ての政策に実証は必須だ。実証がないために、自称専門家が横行し、感情的な議論で疲弊する。

経済学の適用範囲の広さとその効果の高さを改めて認識した。できればもっと早い段階で、実証主義的な学問を教えこむことも大事なのではないだろうか。ただ、そのような教育政策を適用する場合には、もちろん実証できるデザインにしておかないとね。

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(感想文の感想など)

本書は妻にも勧めた。教育評論家や子育て専門家の指南やノウハウを皆さん知りたがるが、あいにく夫婦揃って理系の我が家は、そういったことにエビデンスはないと鼻から信じていない。

本書のおかげか、何とか長男の中学受験を乗り切ることができた。公教育にも教育の実証研究の成果が取り入れられて欲しい。できるだけ早くに。子を持つ親の切なる願いだ。