私の関心は幅広いが偏っている。そして取り留めがない。集中と発散を繰り返したい。
2012年に経済学を学んでから、経済学への関心も広がっていった。○○の経済学の本にはたくさん手を出した。本書のその中の1冊と言えよう。
- 炎上とクチコミの経済学(感想文18-39)
- 人質の経済学(感想文17-24)
- 「学力」の経済学(感想文16-20
- 夜の経済学(感想文14-60)
- 悪い奴ほど合理的―腐敗・暴力・貧困の経済学(感想文14-36)
- 「幸せ」の経済学(感想文13-65)
- 〈反〉知的独占(感想文13-17)
- 貧乏人の経済学(感想文13-05)
本書で気になった箇所を引用しよう。
国際連合の資料によれば、日本にいる「移民」は250万人にのぼる。(中略)また、2018年度時点で日本にいる外国人労働者は146万人。その数はこの10年で数倍に増え、(中略)現在の日本経済は、外国人の存在なしには語れない。(p.ⅰ)
コンビニでも飲食店でもたくさんの外国人労働者を目にする。雇用者側でちゃんとしたマニュアルがあるのだろう、トラブルを経験したことは全くない。
移民による「恩恵」があるとしても、すべての人に等しく享受されるわけではないことだ。いやらしい言い方をすれば、「得する人」と「損する人」が出てくるのだ。(p.iii)
この損得の有無やその程度を定量化するのが経済学の仕事と言える。さらには因果関係や条件を明確にすることも重要な経済学の仕事だ。
難しいのは、損する人と得する人がいる以上、移民に賛成する人と反対する人に分かれる。日本の人口が減少している中でどうしていくかはみんなで考えていく必要があるが、どういう結論に至ったとしても、必ず不満が残る。民主主義が問われる課題であるが、お上が決めたことに従うっていう体質の人にとっては、苦手な課題である。
国連に勤務する外交官の駐車違反を調べ、国によってズルをする程度が違うとする。社会の腐敗度が高い国からの外交官は、外交特権を私的に乱用し、反則金の支払いを怠る傾向があるのだ。(p.158-159)
こういう発想は面白いし、ヤバい経済学に通じるものがある。こういった発想に起因して実際に研究できるというのが経済学の魅力。もっと若い頃に出会っていれば、行動経済学者を目指したかもしれない。
議論を単純化すれば、今後の社会の方向性は、変化を望まない「現状維持」、移民を受け入れる「多文化共生」、AI・ロボットと社会を推進する「技術革新」に分類される。(p.210)
当然、3つの世界線があるというのではなく、入り混じった未来が待ち受けているのだけれど、どうしていきたいかというのを考えるのはとても大切だ。
地球環境が大きく変動し、日本の人口は確実に減少している。経済成長を今後も目指していくのか、また別の道を模索していくのか。
もちろん日本だけの問題ではない。グローバルと言いながら、国家とその構成員は、自国第一主義を推し進める。国家を超越しつつある企業は、有能な人材を国籍関係なく集め、技術開発を行い、時には技術やビジネスを買い、ビジネスの基盤を盤石なものにしていく。
改めて考えてみると、「移民」というのは「国家」が存立してはじめて成り立つ概念だ。その土地に帰属するからこそ、本書で言うところの移民と市民のコンフリクトが生じるわけだが、グローバルなビジネスではそもそも移民というコンセプトは意味を成さないのだ。
他者を排除し、自国民を分断するような政策は、いずれ国家の崩壊につながる。
日本や世界の未来はどうなるだろうか。移民という切り口ひとつでも考えさせられることはたくさんある。私自身もまだまだ勉強が足りない。