※2011年7月1日のYahoo!ブログを再掲。
↓↓↓
現時点で今年最も面白かった新書。物質のすべては光(感想文10-32)以来の量子力学に関係する本。最近、こういう物理の話が楽しくなってきた。
本書は分かりやすく丁寧。すごく難しい話題だけれど、これほど分かりやすく書いた本に出会ったことがない。そしてこういう本が欲しかった。
宇宙の研究って、はやぶさとか宇宙飛行士のように実際に 宇宙に行って戻ってくるというミッションがイメージされる。
じゃあ、なんで量子力学が宇宙に関係するのかっていうと、
宇宙と素粒子のことを考えるとき、私はよくこの蛇(ウロボロスの蛇)を思い出します。宇宙という頭が、素粒子という尾を飲み込んでいる。広大な宇宙の果てを見ようと思って追いかけていくとそこには素粒子があり、いちばん小さいものを見つけようと追いかけていくと、そこには宇宙が口を開いて待っているというわけです。
ということなんだ。この感覚は分かる。だから素粒子を調べていくと宇宙のことが分かってくる。
まずは改めて用語をまとめてみよう。聞いたことはあるけれど、理解していなかった用語がたくさんあるんだ。ウィキペディアを参考にしてます。
- 素粒子:物質を構成する最小の単位。フェルミオンとボソンに分かれる。
- フェミルオン:スピンが半整数の量子力学的粒子。パウリの排他原理に従う。クォークとレプトンに分かれる。
- クォーク:6種類(フレーバーと呼ばれる)存在し、三つの世代を形成する。第一世代のアップ、ダウン、第二世代のチャーム、ストレンジ、および第三世代のトップ、ボトム。
- レプトン:6種類(フレーバー)存在し、三つの世代を形成する。第一世代の電子、電子ニュートリノ、第二世代のミューオン、ミューニュートリノ、第三世代のタウオン、タウニュートリノ。
- ボソン:スピンが整数の量子力学的粒子。パウリの排他原理に従わない。光子がその代表。
※パウリの排他原理:「2つ以上の電子が、全く同一の量子状態を持つことはできない」って書いていたけれど、椅子取りゲームの椅子に2人以上座れないってイメージ。ところがボソンは排他原理に従わないので、何人でも座れる。こういう感じらしい。
ええい!用語が多い。とにかく物質は素粒子でできている。性質とか世代とかで色んな名前がついている。以上。
じゃあ、素粒子から何ができるのか。まとめてみよう。
- ハドロン:強い相互作用で結びついた複合粒子のグループ。フェルミオンであるバリオンとボソンであるメソン(中間子)に別れる。
- バリオン:3つのクォークから構成される亜原子粒子。重粒子とも言う。例えば、陽子=uud、中性子=udd、ラムダ粒子=uds。
- メソン:一つのクォークと一つの反クォークから構成される亜原子粒子。中間子とも言う。例えば、パイ中間子=u・反d、K中間子=u・反s。
分かった。複数の素粒子が一緒になるとハドロンになる。組合せによって色んなものができる。バリオンにレプトンがくっつくと原子になる。こういう理解で良いよね。たぶん。
以上を踏まえて上で、本書では多くのことを知った。さらさらっと列挙してみよう。
電子が波であるという性質を利用したのが電子顕微鏡
だから小さいものが見れるのかぁ。でも実際に電子顕微鏡って使ったことないんだよね。
LHCの場合、1周27キロメートル(ちなみに山手線は1周34.5キロメートル)
でかっ!LHCとは、大型ハドロン衝突型加速器:Large Hadron Colliderのこと。スイス・ジュネーブ郊外にフランスとの国境をまたいで設置されているとのこと。実物見てみたい。
野口さんたちが滞在した国際宇宙ステーションが浮かんでいるのは、地上から375キロメートルの高さ(中略)地球がリンゴだとすれば、その皮から頭を出した程度のこと
国際宇宙ステーションってすごく遠いと思ったら案外近い。宇宙のスケールってそれほど大きいんだ。
ダークマターについては物質のすべては光(感想文10-32)でも書いてあった。96%がダークマター。なにそれ怖い。
パウリ(またまた登場)は、ベータ崩壊の際に、電子だけではなく、電荷を持たない謎の粒子がいっしょに飛び出しているはずだと考えた。1950年代に、実験室で、彼の予言した粒子=ニュートリノの存在が確認された。
ニュートリノといえば、スーパーカミオカンデ!ノーベルホルダーの小柴さんの研究が有名。パウリの時代から続いていたんだ。うーむ。
弱い力にだけ反応するニュートリノがすべて「左巻き」(中略)右巻きのニュートリノの存在を許さないほど、パリティ(空間対称性)は大きく破れているわけです。こうなると、弱い力がパリティを保存しないことを誰もが認めざるを得ません。たしかに、パリティの対称性は破れている。ニュートリノを鏡に映したような粒子は存在しない。しかし、反ニュートリノは右巻きだ。これを鏡に映したニュートリノだと考えれば、対称性は保たれているということになる。―これが「CP対称性」と呼ばれるものです。
理解の限界だけれど、まあ、早い話が、ドラえもんが「入りこみミラー」を使って鏡の世界でサンダクロスを作るなんてことはできないってことだ。パリティどころかCP対称性が破れているので、鏡の世界なんて存在することはできないんだ。たぶん。。。
クォークが持っている「色荷(カラーチャージ)」は赤・緑・青の3種類。その「色荷」をやりとりすることで、クォークとクォークのあいだに強い力が生まれるのです。
量子色力学のこと。まあこの辺からIt's greek to meなわけ です。本当に色があるって言うわけではなくって、色として考えると分かりやすいってことらしい。
湯川理論によれば陽子と陽子が「中間子」を交換することで結びついていると考えたけれど、それは厳密にはその先を見抜いていなかった。実際に結びつける働きをしているのはグルーオン(ボソンの1つ)。陽子(=uud)の3つのクォークをくっつけていて、えーっと、もう無理。説明できないです。。。
南部さんのアイデアから始まった超ひも理論によると、ひもは輪ゴムのように「閉じたひも」と、「開いたひも」の2つに大別されます。それが回転や振動などの運動をすることで、さまざまな状態になります。その多様な状態が、(中略)「素粒子」だと考えるんですね。ひも状態は無限にあるので、「素粒子」はいくらでもつくれるわけです。しかしひもの大きさは何と10の-35乗メートルという極小サイズ。これでは素粒子が本当はひもであっても、点に見えても不思議はありません。
超ひも理論ってそういうことだったんだ。超小さいひもはほぼ点に見える。ひもの状態が無限にあるので、素粒子は無限に作り出せるんだ。
うーん。いかん。さっぱり分からなくなってきた。結局、物質っていったい何だろう。どんどん細かく、小さくなってきたけれど、存在自体がはっきりしない(場所と動きを特定できない)し、(理解するために)色があったり、形はひもだったり、存在が無限にあったり。じゃあ、宇宙の始まりってどんな感じだったんだろう。
分からなさ加減がむしろ楽しい。ちょっと物理にはまりだしたかも。
↑↑↑
(感想文の感想など)
『STEINS;GATE』では、架空組織「SERN」が保有する「LHC」がタイムリープマシンとして登場するってことで、LHCが有名になった。
最近、予算がつかないことで話題になっている、 ILCは「International Linear Collider」のこと。Colliderっていうのは、粒子(衝突型)加速器のこと。
2020年2月18日産経新聞の社説 加速器の誘致 日本の未来見据え判断をによると、『10年間で数千億円の費用負担』とある。そんなに巨額ではない気もするが、アディショナルに予算がつくわけはないので、科学者間でのパイの奪い合いの様相を呈している。
現政権下では、ILCの誘致はかなり厳しいというのが個人的見解。