40代ロスジェネの明るいブログ

2020年1月11日からリスタート

感想文20-06:なぜ倒産 23社の破綻に学ぶ失敗の法則

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To err is human.
人は失敗するものだ。自らの失敗を教訓に学ぶことは誰しもがある。しかし、誰かの失敗を教訓とすることは難しい。なぜ失敗したのかよりも、どうやったら成功するのかという情報に飛びつきたがるからだ。

本書は、中堅・中小企業23社の事例を通じ、経営における「失敗の定石」を引き出すことを目指すものです。(p.002)

本書は、いわば会社版の失敗学あるいは会社版しくじり先生とも言える。とはいえ、本書ですら、倒産した経営者に取材を申し込んでも、ほとんど回答を得られていない。そういう観点では、やや情報と迫力が不足している。

失意のどん底にある倒産した会社の経営者は多くを語りたがらない。「敗軍の将は兵を語らず」である。他方で、「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」という言葉もある。さらに「守成は創業より難し」という言葉もある。

事業を興し、軌道に乗り、我が世の春を謳歌する、が、長くは持たない。成功体験に囚われてはいけない、環境の変化に対応しなければならない、そりゃあ、そういうことは頭ではわかっていても、行動が伴わない、あるいは気づいたときには時すでに遅し、ということがままある。

成功に定石はありませんが、失敗に定石はあります。「成功はアートだが、失敗はサイエンス」と表現してもいいかもしれません。(p.007)

なるほど。染み入る言葉だ。失敗はサイエンスと来たか。しかしながら、本書はサイエンスに資する事例を十分に揃えているかというとそうでもないし、実証分析を試みているというわけでもない。倒産した23社について、まとめてはいるけれど、仮説もなければ検証もない。失敗はサイエンスと豪語しているけれど、ちょっと物足りなさが残る。

1年間でどれくらいの企業が倒産しているか、ご存知でしょうか。2017年は全国で約8400件以上の倒産がありました。近年の倒産件数は漸減傾向にあります。(中略)「倒産」という言葉は法律用語ではなく、明確な定義はありませんが、基本的には「債務を弁済できなくなること」です。(p.090)

失敗の事例分析は本書をお読みいただくとして、初めて知った基本的なことをまとめておこう。

倒産や会社がなくなることは別段、珍しくはない。そういえば、私の前職の会社も消滅している。ビジネスという生態系の中で、新陳代謝は必須であるし、今ある大会社だっていつ倒産するか分からない。大会社に就職したら安泰というのは幻想に過ぎないということは、若い人ほど身をもってよく知っているだろう。

本書では「倒産」という現象そのものが多様であるということを知った。自分なりに整理しておこう。

まず、倒産は、①法的倒産と②私的倒産の2つに分類できる。

①法的倒産はさらに、①-1再建型と①-2清算型に分類できる。

①-1再建型は、①-1-1会社更生(株式会社のみ対象、原則経営陣の交替が要件)と①-1-2民事再生(個人・法人のいずれも対象)からなる。雑に整理すると、大きな会社は会社更生で経営陣を総とっかえ、小さな会社は民事再生で対応、という感じ。

①-2清算型は、①-2-1特別清算(株式会社のみ対象、債権者の同意必要)と①-2-2破産(個人・法人のいずれも対象、債権者の同意不要)からなる。

本書の事例でも、再建を目指したケースと、清算してきれいさっぱり会社がなくなったケースの両方があった。事業の将来性とか後継者とかさらには経営者の気力が倒産後の行く末を決める。

②私的倒産は、②-1銀行取引停止(6月以内に2回目の手形不渡りを出した場合の処分)と②-1任意整理(債務者が債権者らと任意に協議する財産関係の処理)からなる。

ウィキペディアで倒産事例がまとめられており、興味深い。JAL武富士ハウステンボスは①-1-1会社更生、タカタとそごうは①-1-2民事再生にあたる。(タカタのことは知らないけれど)確かに今でも会社が残っている。インターリースは①-2-1特別清算山一證券しんがり(感想文16-15)参照)は①-2-2破産、ジャパンライフは②-1銀行取引停止処分と分類されている。

倒産には該当しないが、吸収合併というケースもある。小さい会社が大きい会社を飲み込んだりと、会社の仕組みについて詳しくないので、よくわかっていないけれど、こういうのもビジネス生態系で見受けられる現象だ。

はてさて、本書が執筆された時期のためかもしれないが、リーマンショックの影響で倒産したケースが多々あった。アメリカの投資銀行の経営破綻が世界中に影響を及ぼす。そういう時代なのだ。

自らのビジネスが順調であったとしても、事業に全く関係のない外国の政策の判断ミスや、貿易摩擦や、自然災害によって、窮地に陥ってしまう。ビジネスとは難しいものだ。

他方で、無性に面白いと感じる人もいるだろう。そうでなければ、会社は生まれないのだ。一昔前に比べて、スタートアップを新しく立ち上げることへのハードルは心理的にも金銭的にも下がっている。

国家や既存企業はあてにならない。未来は不確かだ。だったらリスクを取った方が賢明なのか。色々と考えさせられる一冊。