40代ロスジェネの明るいブログ

2020年1月11日からリスタート

感想文19-05:土 地球最後のナゾ

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※2019年1月31日のYahoo!ブログを再掲。

 

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土壌は「ファイナル・フロンティア」、つまり、地球最後のナゾといわれている。分かっていないことが山ほどある。(p.8

何とも興味を惹かれるタイトル。これまでの私の人生で「土」について考えようとしたことは一度もなかった。そうか。土も学問の対象となるのか。

土と学問の関係だと、地層とか化石といった、地学や考古学をイメージしていたが、本書の土は、農業や材料として利用する対象としての土だ。

肥沃な土の条件が明確になった。粘土と腐食に富み、窒素、リン、ミネラルなどの栄養分に過不足なく、保水力が高いと同時に排水もよく、通気性もよい土壌。(p.48

一言に土と言っても、多様だ。粒度、栄養分、保水性と通気性、酸性とアルカリ性、成り立ちなど。肥沃な土は限られている。気候、気温、降水量なども複雑に絡み合っている。要素還元論的にわかるものではなく、様々なパラメータがあり、ダイナミックに相互に作用し変化している。科学のターゲットにするのが難しいということがよく分かる。

本書で驚いたのは、土の種類だ。わずか12種類に分類されるという。世界は広いが、思った以上に土の種類は少ないようだ。

朝食はチェルノーゼムで育てた小麦パンに北欧のポドゾルでとれたブルーベリー・ジャム。粘土集積土壌の飼料で育てた牛からとれるミルク。お昼は、アジアの熱帯雨林強風化赤黄土が育む香辛料を豊富に使ったカレーライスと黒ぼく土でとれた野菜サラダ。おやつに砂漠土ナツメヤシの入ったオタフクソースをかけたたこ焼きを頬張る。夜は未熟土でとれたおコメ、黄砂(若手土壌)に育まれた太平洋マグロのお刺身。シベリアの永久凍土地帯からやって来る冬将軍に怯えながら、ひび割れ粘土質土壌で生産されたコットンを泥炭土の化石である石炭で青く染めたジーンズをはき、石炭で発電した電気ストーブで温まる。そして、オキシソルを原材料にしたスマホを大切そうに握りしめている。(p.210

12種類の土に関する詳細は本書をお読みいただくとして、土を軸として私たちの生活を眺めてみると、いかに土の恩恵を受けているかよく分かる。しかも食べ物だけではない。

アルミニウムの原料となった“粘土”は、ボーキサイトという。それはオキシソルの中のアルミニウム酸化物(ギブサイト)が高純度で集積・固結したものだ。オキシソルには資源としての価値があったのだ。(p.126

オキシソルは栄養分に乏しく農業に向かない土だが、アルミニウムの原料となる。小学校でボーキサイトって習った。言葉だけは覚えているけれど、この目で実物を見たことはない。

私たちが世界中で消費している工事用の砂の量は、少なく見積もって400億トンだ。といわれてもイメージが湧かないが、高さ100メートル、幅10メートルのコンクリート壁で赤道をぐるりと一周できる量だ。(中略)砂が生まれる速度の2倍の速度で砂が消費されている。(中略)今、世界で砂資源が枯渇しはじめている。(p.178

へぇ。砂資源が枯渇しているなんて全く知らなかった。砂とか無尽蔵にあると思っていたが、限りある資源であり、争奪戦が起きている。

そういえば、子どものサッカーのために石灰でラインをよくひく。こんなに大量に石灰を使っているけれど、土に悪影響はないのかなと気になっていた。でも石灰(石灰水はアルカリ性)によって酸性の土壌を中和させる効果があり、むしろ土を良くすることに貢献している。これからは気兼ねすることなく、ラインをひけるな。

家庭菜園をしていないし、趣味はインドアなので、普段から土に触れる機会はほとんどない。泥付きネギの泥を洗い流す時くらいだろうか。

普段、全く注目しない土。本書は改めて土について考える良いきっかけになった。

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(感想文の感想など)

202033日のプレジデントオンラインの記事中国の3年分のセメント使用量は、アメリカの101年分を超えているにあるように、砂資源の枯渇が叫ばれるようになった。

建物を建てるためにはセメントが必要で、セメントを作るためには砂が必要、ということでインドでは砂を握っている者が権力を握っているとのこと。

砂が権力に結びつくなんて思いもしなかった。公園から砂場が消えてなくなる日が遠くないかもね。