40代ロスジェネの明るいブログ

2020年1月11日からリスタート

感想文10-39:OPEN INNOVATION―ハーバード流イノベーション戦略のすべて

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※2010年5月31日のYahoo!ブログを再掲。

 

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イノベーションに関連する本を読む企画第二弾。ちなみに第一弾は、クリステンセンのイノベーションのジレンマ(感想文10-29)

本書もイノベーションのメッカであるハーバード大から出されたもの。ハーバード大なんて行ったこともないし、きっとこれからも行くことはないだろう。たぶん。

さて、オープン・イノベーションという用語が、この業界で人口に膾炙するきっかけになったご本。気になった箇所を引用しつつ、まとめてみたい。

企業における"中央研究所"という名称に象徴された、自己完結型の研究開発体制が終焉を迎えようとしている。

そう、自己完結型の研究開発は、クローズド・イノベーションと呼ばれる。これからはオープンになる。これからといっても、本書が出版されたのは04年。原著は、03年に出版されているので、決して新しいコンセプトではない。

実際に国内企業でも中央研究所が閉鎖の憂き目にあっている。ぼくがずいぶん昔にお世話になった某L研究所も潰(さ)れてしまった。

(20世紀初頭の企業内研究所では、)創造的な研究活動ができるような環境を企業内で作り出す必要があるのだ。当時のリーディング産業である化学や石油産業では、こうした方法でイノベーションが行われてきた。

20世紀初期のこうした姿は、不毛な大地にいくつかの城が築かれている情景を思い浮かべればよい。城は企業内研究所であり、その中ではその企業の製品に関する詳細な研究が行われている。城はそれぞれ独立しており、外部からの訪問客はほとんどない。外部の者は、城の中から生み出される研究成果に驚くのみである。

なるほど、確かにそうかもしれない。企業という大きな城が、研究開発の広大な砂漠にぽつりぽつりとそびえ立っている。これがクローズド・イノベーション時代の心象風景といえる。

さて、著者のテクノロジーへのドライなところも本書では見え隠れする、っていうか、隠そうとしてない。

テクノロジー単独では何の価値も生まないということである。テクノロジーは商品化されてはじめて価値を生む。

多くの知的財産権は無価値であり、事前にどれだけの価値があるのか判断することも困難である。また、知的財産権の価値はビジネスモデルと独立に判断することも困難である。

知的財産権の価値はビジネスモデルに依存するということである。これまで知的財産権のマネジメントについて述べた書物は、知的財産権それ自体に価値があることを前提としてきたが、これには重大な認識の誤りがあったのである。

うーむ。ドライだ。テクノロジー知財も特許もそれ自体に価値はないと言ってのける。あくまで権利であり、そこにビジネスモデルがないと、価値を生み出すことはできない。

特許は伝統的に、他社を自社のテクノロジーから排除するための法律的な枠組みとして、ビジネス戦略に活用されてきた。これは、垂直統合により、企業内で安全に知識を移転させる方法が採用されてきたのと同じである。このように、クローズド・イノベーションの時代においては、特許は参入障壁と認識されており、利益の源泉としては認識されていなかった。

参入障壁としての特許から変貌しつつある。でも実際にはあんまりピンとこない。じゃあ、特許って何なんだろう。

1990年代になると、知的財産権は利益の源泉であり、企業価値を増加させる手段として認識されるようになった。自社内で活用されていない知的財産権を他社にライセンスして利益を上げることは、企業戦略の重要な一部となった。Dow Chemicalといった企業は特許保有を整理することにより、特許の保有コスト(申請料、翻訳料、年次更新費用等の管理費用等)を減らす戦略を採用した。

そうか、権利を売買することで価値を生み出すようになった。ビジネスモデルが大事で、自分が知財を持っているかどうかはあんまり関係のない時代になった。ビジネスモデルが思い浮かばない特許は、もう売っちまえということに等しい。

次世代の発明のためのシードは政府や大学が提供する必要がある。特に大学の基礎研究における役割は増大している。企業は大学との関係を深めて、その研究成果を受け入れ、適切なビジネスモデルにより商品化を行っていくべきである。

より踏み込めば、どこがどんな知財保有しているか、アクセスし、評価する人間がこれからは求められるし、そういう人間に多くの報酬が支払われるようになるだろう。保有している側は、どうやってアピールするかが大事になるだろうし、できることなら自らビジネスモデルを考えたい。

テクノロジーにとっては、有効なビジネスモデルが見つからない限り、そのテクノロジーの価値は僅少なものとなってしまう。ゆえに、知的財産権から利益を得ようとするならば、たとえ自ら商品化する予定はなくとも、知的財産権にとって有効なビジネスモデルを見つける努力をしなければならないのである。

そうね。研究開発する側も、ビジネスモデルを考えないとダメってこと。ダメっていうのは、価値を生み出さないってこと。まあ、価値を何に設定するかで、問題意識はまるで変わってしまうだろうけれど。

イノベーションとは、既存のビジネスを伸ばすだけではなく、新たなビジネスを成長させることでもある。これにはリスクがつきまとう。多くのイノベーションは失敗するのである。しかし、既存のビジネスは必ず限界に突き当たる。イノベーションしない企業には死あるのみである。

イノベーションの鍵は、社内だけにあるのではない。どこかへその鍵を探しに行こう。

No Innovation No Life.

今度は、もうちょっと企業よりでない、イノベーションとかに批判的な本を読んでみようっと。

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(感想文の感想など)

オープン・クローズ戦略とか、そういうことも学んだ。とはいえ、それはあくまで開発側の話。

市場を作るのは需要と供給だ。需要つまりはユーザーの受容も大事なんだけれど、両者がそろってはじめてイノベーションが起きるのだと、今はそう考えている。