40代ロスジェネの明るいブログ

2020年1月11日からリスタート

感想文20-17:図解 よくわかる電磁波化学

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何度勉強しても理解できていない「光」のこと。光は身近なものだし、目に見えるのだけれど、光って一体全体何なんだと考えると、やっぱりよく分からない。

本書は決して易しいわけではないけれど、かなり丁寧に電磁波とそれに関連する化学しかも最先端のことについて解説してくれている。

光は、横波としての性質をもつエネルギー粒子で光子(photon)あるいは光量子(light quantum)と呼ばれます。(中略)光は携帯電話やテレビなどの情報伝播に使用される電波と同じ電磁波(electromagnetic wave)の仲間で、振動数(frequency)あるいは周波数(frequency)または波長(wavelength)で区別します。(p.104

私の理解でいつも暗礁に乗り上げるポイントが、光子のこと。電子ならわかる。高校の化学で習った。でも光子は習っていない。そもそも光子ってなんなんだ。

ウィキペディアによると『光子は無質量の粒子であり、電荷を持たず、安定である。』とある。質量がない。電荷もない。物質を構成する最小単位であるとされる素粒子の一つだ。

宇宙は何でできているのか(感想文11-25)素粒子について整理していた。光子はボソンであり、パウリの排他原理に従わない。やっぱり分からないが、ここまでの理解で以降を書いていこう。

本書の副題は『マイクロ波化学・テラヘルツ波化学・光化学・メタマテリアル』である。私はマイクロ波化学を学ぼうと思って本書を手にとった。しかしながら、他にもたくさん勉強になる記載があった。気になった箇所を挙げておこう。

20世紀には触媒反応を利用することで、化学の反応時間の短縮と生産性の向上が行われてきました。マイクロ波化学はこれらをさらに革新的に短縮させることができる手法として期待されています。(p.18

マイクロ波と言って思いつくのは電子レンジ。化学反応している場所にマイクロ波を当てると、あら不思議、反応が劇的に加速するというもの。

迅速な化学合成を行うことができるマイクロ波は、化学プラントの熱源をマイクロ波に変えることで、総使用エネルギーが85分の1に軽減でき、プラントのサイズも生産性を残したまま数百分の1にダウンサイジングできることも提案されています。(p.28-29

反応が速くなるってのはものすごく大事で、反応を進めるために高温とか高圧が必要だった(自然に起こる化学反応なら苦労しない)のを高効率化できるし、さらには使用する触媒(たいていレアメタル)の使用量を激減させることができるかもしれない。

生ごみ等の乾燥濃縮(減容)にマイクロ波が使われていますが、マイクロ波を水熱分解の熱源として使うことで、食品ごみからアミノ酸を分解抽出できることが知られています。(p.41

そういう使い方もあるのか。生ゴミをレンチンして、アミノ酸抽出。食品版の錬金術だ。

意図的に誘電率透磁率を制御し、その結果として屈折率をコントロールします。(中略)電磁波によって物質や材料を制御する「電磁波化学」について解析してきました。一方、メタマテリアルは「物質や材料で電磁波を支配する」ことから、非常に近い立場にあります。(p.144

電磁波、つまり光によって物質や材料を制御できる。光硬化性樹脂とか光触媒による水分解とかがその例になる。メタマテリアルはその逆。光を制御できる材料だ。透明マント(光学迷彩)が実用化するのではと期待されている。

メタマテリアルのクローキング現象を応用して、地震波に対する「建物の透明化」を行い、新しい免震技術に応用する試みを行っています。(中略)メタマテリアル構造(電磁波ではなく地震波ですが)の土台を使うことで地震波が迂回し、あたかもそこに建物がないような挙動を示すことができます。(p.158

なるほど、って言いたいけれど、よく分からない。光以外の波である地震波にもクローキング現象を適応するってことだが、その発想たるやすごい。とはいえ、実用化はまだまだ先のことだろう。

メタマテリアルは自在に屈折率を制御できることから、この構造を持った固体触媒(メタマテリアル触媒)を合成できれば、高い反応効率を実現できると考えられます。固体触媒のエネルギー源として、光やマイクロ波などが知られています。(p.162

マイクロ波には光のレンズのような集光装置がありませんが、メタマテリアルは「マイクロ波レンズ」を実現できると考えられます。(p.162-163

化学反応にマイクロ波を使えるけれど、まだまだ改良の余地はある。障壁となっているのは、まだマイクロ波を制御できるような材料ができていないということ。マイクロ波を制御できる材料はメタマテリアルであり、その開発が進むと、さらに触媒反応の高効率化を達成することができるかもしれない。

分子レベルで見た触媒の働き(感想文18-1)にあるように触媒化学はそれ自体、これまた難しい分野だ。光と物質と反応と触媒と電子。それから表面化学。まだまだ勉強が足りないということを実感した。