40代ロスジェネの明るいブログ

2020年1月11日からリスタート

感想文17-43:電卓四兄弟

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※2017年8月31日のYahoo!ブログを再掲。

 

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40年近く生きてきて、自分の常識のなさに卒倒しそうになる時がある。今回もそれだ。CASIOが日本企業とは知らず、さらに樫尾さんが起業してできた会社ということも知らなかった。CASIOって名字だったんだ。

カシオ計算機株式会社会社概要を見てみると、売上が連結で約3000億円、従業員数は約13000人という、立派な巨大企業だ。現社長は、樫尾和宏。創業者の血と知を受け継いでいる。

本書のタイトルにあるとおり、カシオ社は樫尾四兄弟である忠雄・俊雄・和雄・幸雄によって、設立された。初代の社長はその父である茂が就任した。なお、現社長の樫尾和宏氏は、三男である和雄氏の子どもにあたる。

既に忠雄・俊雄は亡くなっており、本書は四男である幸雄氏のインタビューという形式で構成されている。幸雄氏は1930年生まれ。同じ年生まれは、不破哲三ハナ肇クリント・イーストウッド和田勉平山郁夫妹尾河童チョムスキー深作欣二ザ・デストロイヤージョージ・ソロスショーン・コネリー藤岡琢也、西村京太郎、鈴木章有馬朗人、イマニュエル・ウォーラステイン、野坂昭如渡部昇一俵孝太郎キダ・タロー佐々淳行。このリストには亡くなっている方も含まれている。90歳近いわけだが、幸雄氏はまだまだご健在だ。

CASIOといって思いつく商品といえば、電卓とG-SHOCK。会社で使っている電卓は、カシオ社製で、使ってからしばらく放置しておくと、自動で電源が切れるのだが、切れるタイミングでCASIOという表記が浮かぶ。こういう細かいところにこだわりがあるんだなと、感心する。

G-SHOCKは私が学生時代の頃に流行った。流行に敏感な弟は持っていたかもしれない。私はあいにく時計というものを未だに身につける習慣がない。社会人としてどうなの、という気がしないでもないが、装飾品をつけるのが煩わしく、すぐに外してしまい、挙句の果てに紛失してしまうのだ。

本書は、幸雄氏がカシオ社の歴史を語っていくのだが、その話が面白い。画期的な商品を生み出し市場を席巻するが、ライバル商品の登場によりその地位を奪われ、破壊的イノベーションによって再びその地位を奪い返す。スリリングなビジネスの世界での激しい戦いが描かれている。

商品の常ではあるが、性能競争や価格競争にさらされる。電卓もそうだ。こういう状況において破壊的イノベーションが起きる素地ができてくる。カシオ社の選択は面白い。企業向け製品だった電卓の性能をあえて下げて、個人向けという需要を作り出す方向にシフトチェンジしたのだ。

BtoBからBtoCなので、販路も新たに開拓した。文房具屋を活用したのだ。電卓が文房具というイメージは今となっては当たり前かもしれないが、こういった販路開拓まで含めた戦略がなければ、今のカシオの電卓は存在しなかっただろう。

四桁まで表示を削り、機能を下げた計算機を開発本部の正式な開発テーマに上げると、反対意見が多数を占める可能性が高いとの理由です。(p.109)

一方で、社内の開発はそうは動いてくれない。性能を下げるなんてことは、当然、やりたがらない。破壊的イノベーションが大企業では起きにくいのはこういう理由からだ。そこで、開発本部を通さずに、少人数でこっそり開発した。そうして、カシオ社はカシオミニの製品化に成功し、大きな利益を得ることができた。

もう1つ、面白かったのはG-SHOCKだ。これも時計という製品の常識を覆した

時計は精密機械で、かつては落としてはいけない、大切に扱うべき商品でした。G-SHOCKはその常識を覆します。どんな場所や場面、どんな過酷な状況でも腕時計が気軽に使えるようになりました。(p.138)

衝撃に強く、防水性もある時計。今までにないタフさはアメリカで人気となり、日本に逆輸入された。実用性だけでなく、ファッション性でも注目を浴び、社会現象にまでなった。そうそう、バッタモンが売られてて問題にもなった。

昭和55年(1980)、最初に発売した電子楽器がキーボードの「カシオトーン」です。本物の楽器の音を電子技術で再現し、ピアノだけでなくギターやトランペットなど29種類の音色を出せるようにしました。(p.143-144)

電子楽器も出してるんだね。次男がこの4月からヤマハ音楽教室に通っていて、先日、面談があったんだ。先生から「ご家庭ではどのように練習していますか?」と聞かれたので、「お兄ちゃんのピアニカで練習してます」と答えると「長い音とか短い音とかそういう違いの練習も必要ですから、エレクトーンを購入されてはどうですか」と言われた。

長い音出したかったら長く息を吹けば良いのであって、エレクトーンである必要はないじゃないかと反論したかったが、どうもそういうことではないらしい。ヤマハ音楽教室に通っていて、適当に音楽に慣れれば良いやと思っていたのだが、そういう低い志の親は異端らしく、理解してもらえなかった。

「エレクトーン」の購入を促されたが、今考えてみると、エレクトーン自体は、ウィキペディアで調べてみると『ヤマハ株式会社が製造発売する電子オルガンの商品名であり、同社の登録商標(登録番号0529966など)となっている。』とのこと。

そうか。エレクトーンはヤマハの商標なのだ。よし。次の面談では、「カシオトーンで練習してます」って言ってやることにしよう。これなら文句はないはずだ。
さいごに幸雄氏の言葉を載せておこう。

私の経験から、若い社員たちに伝えたいことの一つは、創造に必要な積み重ねの大切さと、創造の楽しさです。(p.174)

カシオ社の社是は「創造」だ。何もせず、パッと閃いて、創造に繋がるのでは決してない。技術や知識や経験の積み重ねを経ないと、閃くことはないし、創造に至らない。
樫尾四兄弟が創り育てたカシオ社。会社の歴史を知るのは面白い。日本を代表するグローバル企業として今後も活躍し、これからも新たな製品を創造して欲しい。

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(感想文の感想など)

調べてみると樫尾四兄弟の三男である樫尾和雄さんが2018年6月18日にお亡くなりになっている。よってご存命なのは幸雄さんだけ。

調べてみると成城学園前に樫尾俊雄発明記念館がある。ちょっと行ってみたいな。