40代ロスジェネの明るいブログ

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感想文14-08:かの名はポンパドール

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※2014年2月12日のYahoo!ブログを再掲
 
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黒王妃以来の佐藤賢一さんの小説。主人公はポンパドール公爵夫人(1721-64)。ウィキペディアによると『ルイ15世の公妾で、その立場を利用してフランスの政治に強く干渉し、七年戦争ではオーストリア・ロシアの2人の女帝と組んでプロイセンと対抗した。』とある。この2人の女帝とは、オーストリアマリア・テレジアとロシアのエリザヴェータのこと。

可憐で、類い稀な美貌、多彩な才気とセンスで、ロココの華と呼ばれ、その名を歴史に残した。自らの努力と才覚で、果敢に生きた女性。

フランスを舞台にした歴史小説が得意な佐藤さんの真骨頂とでもいうべき一冊。名前は知っていても実際にどういう人かを知らないポンパドールについてすごく魅力的に描いている。

恋愛は有夫の女の特権のようなもの-それを男の立場からいえば、どれだけ好いても、誰かと結婚しないうちは、その女を愛人にはできないという意味になる。どうでも愛人にしたければ、まず誰かの妻としなければならない。

錯綜している恋愛観だけれど、これが当時のフランスの考え方だった。誰かと結婚して初めて夫以外の人と恋愛ができる。これは王の『寵姫(メトレス・デュ・ロワ)』も例外ではない。

ポンパドールの本名は、ジャンヌ=アントワネット・ポワソン。出自は平民であるが、貴族と結婚し、サロンに出入りし、王の目に留まり、寵姫となり、ポンパドールという重みのある称号を与えられた。

ブルジョワの資金力と哲学者の革命思想。かたや、貴族の権威主義イエズス会の古典道徳。まさに水と油だった。

歴史的に見るとルイ15世の放漫財政によって国が斜陽に向かい、国民の不満が爆発するフランス革命に繋がっていく。ポンパドールは次第に政治に介入していくが、旧体制との多くの戦いもあった。王の息子は敬虔なカソリックで、最愛王と呼ばれ多くの愛人を持ったルイ15世を嫌っていた。当然、その愛人であるポンパドールも嫌われた。

多くの抵抗や反発はあったものの、それでも苦しみながら懸命に生きるポンパドールの姿は魅力的だ。

美が全てを支配したロココの時代(中略)それは美しくあることを突きつめていくうちに、新しい価値を、それも不朽のものとなる価値を、思いがけずも発見した時代だった。

不朽となる価値とは、百科全書、セーブル陶磁器、エヴリュー館(現エリゼ宮)、陸軍士官学校(ジャン・ドゥ・マルス)のこと。42年という短い生涯ではあったが、外交革命を達成し、今も残る文化や産業、建築物を残した。

傾きつつあるフランスの最後の良い時期に彼女は生きたのかもしれない。
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(感想文の感想など)
日本でポンパドールの名は存外よく知られている。なぜならポンパドウル(POMPADOUR)という名のベーカリーチェーンがあるからだ。もちろん店名もポンパドール公爵夫人にちなんで付けられている。フランスの寿司屋でYOSHIMUNEって付けられるようなもんかな。