※2018年6月12日のYahoo!ブログを再掲
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タイトルが気になって読んでみた本。樋口廣太郎(1926-2012)は実在する人物。残念ながら樋口さんはすでにお亡くなりになっている。
同い年生まれは、森英恵、菅井きん、渡邉恒雄、マリリン・モンロー、フィデル・カストロ、江沢民、星新一、小柴昌俊、ミシェル・フーコーといった面々。まだご存命の方も歴史上の人物も入り混じっているのだから、不思議な感じ。
これまでに経営者が主人公の本を読んだことがある。川崎製鉄(現JFEスチール)の創業者である西山弥太郎を主人公とした鉄のあけぼの(感想文15-16)、出光興産創業者の出光佐三をモデルとした海賊と呼ばれた男(感想文15-49)、カシオ社を設立した樫尾忠雄・俊雄・和雄・幸雄の電卓四兄弟(感想文17-43)あたりがそうかな。毛色が違うけれど、しんがり 山一證券 最後の12人(感想文16-15)も広くは経営モノに分類できるかもしれない。
前の部署では社長や元社長と話す機会が多かった。私はそこの会社の従業員ではないので、現実と乖離があったり、脚色されているかもしれないけれど、ビジョンやマネジメントなどを経営者の口から直接に聞くことができたのは貴重な経験であった。
そもそも本書は、樋口廣太郎の一生を描いているわけではないため、なぜ「瞬間湯沸かし器」とまで言われるほど、強烈でパワフルな人間が形成されたかについては、ほとんど描かれてはいない。
しかし、果たして最強の経営者なのだろうか。強運の経営者というのであれば、まあ、そのとおりだなと思うのだけれど。
本書で好きなシーンがある。樋口社長が新社長としてアサヒビール生え抜きの瀧澤勲夫(実名は瀬戸雄三)を指名する。
「はい。お受けします。一所懸命頑張ります。」樋口はじろっとした目を瀧澤に流して、「戻ってよろしい」と告げた。そして、頃合いを見計らって瀧澤のデスクに電話をかけた。「いいか。こういう時はな、一晩考えさせて下さいって言うのが礼儀だ」「失礼しました。申し訳ありません」「分かればよろしい」「はい」(p.222-223)
という感じで、かなり厳しいことを言う。社長になれと言って、一所懸命頑張ると答えたら、即答するなと文句を言われるのだ。たまったものじゃない。他にも今だとパワハラで問題になりそうな場面が多々ある。
では、経営者としての樋口さんと一緒に働きたいかと言われると、スゴい人だとは思うけれど、できれば適度な距離をおきたいな、というのが素直な気持ちだ。とはいえ、特に樋口さんを素晴らしいと思うのは、後釜を銀行員ではなく、アサヒビールの社員を引き上げたという判断を下したことだ。自分の影響力を残そうとするならば、住友銀行の人間を連れてくるという手もあったかもしれないが、現場のモチベーションを考えてあえてそうしなかったのは英断であったと思う。
少しビールについて書いて終わりにしたい。月刊BOSS 2015年4月号に載っているグラフが分かりやすいが、アサヒ・スーパードライの登場がいかにビールのシェアを大きく変えてしまったのかが分かる。私はプレミアム・モルツ派なので、実のところ、長らくスーパードライを飲んでいなかった。
この本を読んで久しぶりに購入して飲んでみたのだ。ベルギービールという芸術(感想文10-38)にあるように、スーパードライはまさしく「生理的な欲求を満たすビール」の代表と言える。
私が大学生の頃に、とある教授の部屋でお酒を飲む機会があった。その教授は食通であり、スーパードライは本物のビールではないと蔑んでいた。その影響と、社会人になって三菱系の会社にお世話になったこともあり、私はスーパードライを積極的には飲んでこなかった。
でも、やっぱりプレミアム・モルツの方が美味いかなぁ…って、おい!ヾ(・ω´・。)
「(前略)女性のニーズに応えたことが大きいのではありませんか。苦いビールが辛いビールに変化しました。ですから、女性たちが美味しくいただいているのです。(後略)」(p.154)
樋口廣太郎さんの妻である公子さんの言葉だ。なるほど、女性の社会進出が進み、苦さではなく辛さを求める女性のニーズにうまくハマったのだと言える。そういうニーズを捉えてスーパードライが開発されたわけではないが、うまく時代の潮流に乗ることができた。
でも、やっぱりプレミアム・モルツの方が美味いかなぁ…って、おい!ヾ(・ω´・。)
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(感想文の感想など)