40代ロスジェネの明るいブログ

2020年1月11日からリスタート

感想文09-29:西洋博物学者列伝―アリストテレスからダーウィンまで

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※2009年5月15日のYahoo!ブログを再掲
 
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本書は分厚く、立派。お値段は約1万円で、カラーの絵がたくさん入っている。図書館で借りた。

GWにのんびりと嫁さんの実家の洋間で、のんびりと美しい図を眺めながら、偉大な博物学者たちに思いを馳せる。

うーん、楽しい。こういう時間は幸せ。

題名には、「アリストテレスからダーウィンまで」とあるように、時代的にはものすごく長大だけれど、古代からルネサンスの間はすっぽり抜けているので、間延びした感はない。また、ダーウィン時代で終わっているのは、個人が自力で収集できる以上に探求できる世界があまりに広くなってしまったからだ。

うーん、買いたくなった。手元に置いておきたい。

さてさて、印象に残り、かつ、(たぶん)マイナな博物学者を簡単に紹介しておきたい。

まずは、アントニ・ファン・レーウェンフック。顕微鏡を使って微生物を見た初めての人。今では当たり前だけれど、顕微鏡がほとんど無かった当時は、こんなに小さい生き物がたくさんいるなんて想像だにできなかった。

「できそこないの男たち」に登場した「17世紀に初めて精子を見た男」というのが、まさにレーウェンフック。質の高いレンズを自作したので、その分野で一気に有名になった。

ちなみに同氏はオランダ人で、デルフトという街で生まれた。その1週間後に有名人が同じ街で生まれている。それは何と「フェルメール」。洗礼登録帳の同じページに名前が記載されているとのこと。数奇です。さらに二人の運命は交叉する。フェルメールの死後の遺産管財人が何とレーウェンフックなのだ。ところが両者が出会っていた明確な証拠はないようだ。縁があるような無いような・・・。

やばい、長くなりそうだ。

次は、ゲオルク・シュテラー。アラスカを発見した人(のうちの一人)。ベーリング海峡で有名なベーリングその人と一緒に冒険し、アラスカに到着した。そこで巨大な海洋ほ乳類である「ステラーカイギュウ」を発見した。動物の冠名は、シュテラーに由来する。ところが悲しいことに、シュテラーの報告により、アラスカで乱獲され、ステラーカイギュウは絶滅してしまう。

続いて、ジャン-バティスト・ラマルク。「獲得形質の遺伝」として生物学の教科書でも有名なその人。現在、いかにも間違った仮説の好例として取り上げられているけれど、その当時では斬新かつ危険な思想だった。

神が全ての生きとし生けるものを創造したというのが、キリスト教的な定説であった中で、「進化」を初めて提唱できたのは、同氏の類い希な観察力と洞察力と信念のたまものだ。ラマルクの価値は再評価されるべきだろう。

さらに、ジョン・ジェイムズ・オードゥボン。この人は、本書を読むまで全く知らなかった。ピンと来たのは、伊坂幸太郎のデビュー作「オーデュボンの祈り」。小説はまだ読んでないので、近いうちに読みます。

(本書の記述を尊重して)オードゥボンは、鳥類学者兼画家。息を呑むほど美しい鳥の絵をたくさん描いている。鳥類学者として特筆すべき点は、単純に鳥の絵を正確に書いているという点ではない。躍動感溢れる動きや食べている植物など、まさに「生態」を描いているという点で、単なる絵画以上のアカデミックな価値を包合している。

やっぱり長くなった。

さいごに、アルフレッド・ラッセル・ウォレス。大学生時代に読んだ岩井俊二の「ウォーレスの人魚」でウォレスのことを初めて知った。ダーウィンと同じ頃に独自に進化論の考えに思い至り、その仮説をダーウィンに手紙にしたためて送ったら、慌ててダーウィンが自分の説を公表した。先取権争いとして有名な逸話であるが、ダーウィンに比べてウォレスの知名度は格段に低いだろう。

ウォレスは博物学者であったが職業冒険家でもあった。秘境に行って、珍しい標本を集め、それを売りさばいて、その資金でまた冒険に行く。ところが、ブラジルで4年費やして集めた標本は、帰りの船が火事になり、ほとんど全部海の藻屑になってしまう。何とか命からがら助かったウォレスはそれでもめげない。今度はマレー諸島に行って、また標本を集めた。馬力がある。

ということで、以上の人たちは個別に偉人伝(武勇伝?)とかになっているかもしれないので、今度はそれを読んでみたい。

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(感想文の感想など)

その後、オーデュボンの祈りは読んだ。なかなかに難解な小説だったように記憶している。伊坂幸太郎さんの小説はその後もちょくちょく読んだ。重力ピエロが一番、お気に入りかな。