40代ロスジェネの明るいブログ

2020年1月11日からリスタート

感想文16-34:ヤバすぎる経済学 常識の箱から抜け出す最強ロジック 

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※2016年10月28日のYahoo!ブログを再掲

 

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超ヤバい経済学(感想文11-20)に続く、スティーヴン・D・レヴィットとスティーヴン・J・ダブナーの名コンビによる一冊。

期待していたけれど、本書はブロク(Freakonomics Blog)を整理したものということだ。幅広く様々な話題がある反面、それぞれについて深みはあまりない。浅く広くという感じ。それでも刺激的だった。アメリカの事情に疎い私にとっては、理解が追いつかないことも多々あったのだけれど。

いつものように気になる箇所を挙げておこう。

外部の業者に徴税させるほうが自分たちで徴税するより高くつくのはIRSも認めている。(中略)22%の手数料を払って外部の回収業者と契約するより職員を増やしたほうが実入りがいいってことになる。

IRS(Internal Revenue Service)とはアメリカ合衆国内国歳入庁のこと。ウィキペディアによると『アメリカ合衆国連邦政府機関の一つで、連邦税に関する執行、徴収を司る。(中略)連邦政府の機構上は財務省の外局であり、日本の省庁になぞらえれば財務省の外局である国税庁に相当する。』とのこと。

日本でもよくある話だけれど、外部業者に業務を委託する方式は、コスト削減にはつながらない。でもIRSの予算監督者である議会はIRSに資金を与えたがらない。業務効率化でもコスト削減でもなく、異なる力学で意思決定がなされる。アメリカでもこういうことがあるんだなぁ。

経済学の研究者に終身教授なんて待遇を提供するのに意味があった時代が仮にあったとしても、どうみてもそんな時代は終わっている。大学の研究分野でもたぶんおなじだろうし、高校や小学校の先生に関してはなおのことだ。

終身教授の仕組みは、終身になるまで懸命に働くが、それ以降はさっぱり働かなくなるというインセンティブになる。知識は刷新される中で、古い知識のままアップデートされない終身教授がのさばると悲惨なことになる。他方であまり雇用が不安定だとなり手がいなくなる。とはいえ、日本ではもうちょっと人材の流動性が高まってほしいなと思うところ。

政治家に、自分が携わっている法案に対するストック・オプションみたいなものをあげればいい。

政治家の評価は難しい。短期的に成果が見えにくいことが多いからだ。政策の実証が非常に重要だけれど、実証されるまでにはどうしても時間がかかる。ポピュリズムや劇場型といった批判はあるが、きちんと実証し、その結果に応じて評価するという仕組みがないと変わらない。

www.WhoToHate.com(中略)このサイトのアイディアはこうだ。5ドル払って嫌いな人の名前を書くと、このウェブサイトがその人に、あんたを嫌いだって人がいるんですよと書いて送る。

私が感心したビジネスの一つ。人間の心理を巧みについている。一度、利用しだすとやめられないかもしれない。憎悪のメール。

ある頭のいい利用者が保険を作った。無賃乗車で捕まったら罰金の一部を払ってくれる保険だ。

もう一つ感心したビジネスの一つ。ムンバイの電車事情をうまく利用している。ムンバイの電車はチケットレス乗車と呼ばれている。みんなが電子カードを利用しているという意味では決してない。

切符を買わずに乗る。無賃乗車がバレたら罰金。めったに捕まることがないけれど、捕まったら払えないような高額を請求される。そこでこの保険が編み出される。

保険料≒罰金の期待値(罰金×捕まる確率)<切符代<罰金 ということかな。これ考えついた人は賢いなぁ。

とまあ、全般的に悪ふざけの内容が多いのだけれど、シリアスな話が盛り込まれているあたりが上手い。それは、スティーヴン・D・レヴィットの姉の死だ。まだ50歳と若く、がんで亡くなった。

この分子生物学の時代に、一番価値のある薬は鎮痛剤なのだ。つまり、200年近く前から使われている薬なのである。

がんは克服できる病気だと言われるようになってきたが、現実はまだそこまで追いついてはいない。多くの人ががんに苦しみ亡くなっている。鎮痛剤というアンティークな薬が苦痛を緩和し軽減する。

日本でも少しずつではあるけれど、実証主義行動経済学の重要性の認識が広まりつつある気がする。特に政治と教育の分野で日本は遅れていると思う。でもチャンスだと思うんだよね。実証主義を掲げる政党は貴重な存在になんじゃないかな。

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(感想文の感想など)

Freakonomics Blogは2017年10月9日以降、更新されていない。ラジオは音声と書き起こしが更新されている。ものすごい分量だ。全部を読むことは(聞くことも)到底できそうにない。