40代ロスジェネの明るいブログ

2020年1月11日からリスタート

感想文18-49:世界史を大きく動かした植物

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※2018年11月16日のYahoo!ブログを再掲

 

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植物たちの救世主(感想文18-43)に続く植物関連本。確かに植物が主役なわけだが、世界史と絡めているのが面白いところ。コムギ、イネ、コショウ、トウガラシ、ジャガイモ、ワタ、チャ、サトウキビ、ダイズ、タマネギ、チューリップ、トウモロコシ、サクラが登場し、それぞれにまつわる歴史的出来事がまとめられている。

これまで読んだ本の中から関係するのは、トウガラシの世界史(感想文16-21)炭素文明論(感想文14-11)砂糖の世界史(感想文09-52)といったところ。個人的には事件や人物から世界史を把握するのは難しいけれど、物質や現象(感染症とか)や科学技術を起点とすると理解がぐっと進むのが不思議なところ。

歴史は、人々の営みによって紡がれてきた。しかし、人々の営みには植物は欠くことができない。人類の歴史の影には、常に植物の存在があったのだ。(p.3)

改めて考えてみよう。地球を支配しているのは誰だろうか。残念ながらヒトではないようだ。圧倒的な物量で存在しているのは植物である。これは揺るぎのない事実だ。ヒトが大きな物語として歴史を描いているが、地球の支配者たる植物の存在無くしては語りえない。

さて、本書では知っている話も多かったけれど、初めて知ったことも多かった。そのあたりをまとめておきたい。

単子葉植物は、スピードを重視して、形成層をなくしてしまったのだ。(p.20)

小学生の頃に習った。単子葉植物双子葉植物。今でも植物は植物という大きなくくりでしか捉えていなかったし、小学生の私にとって、アサガオが双葉かどうかなんてかなりどうでも良いと思っていた。それは大きな誤解だった。

単子葉植物生存戦略上、全く違う構造を持つに至ったのだ。単子葉植物の特徴を挙げると、葉脈が平行、根がひげ根、直線構造であり、一方の双子葉植物は子葉が2枚で、導管と師管がある、となる。

イネ科の場合、成長点が根の付近にあるため、パクっと葉先を食べられても、また生えることができる。成長点が先端にある他の植物だと、そこを食べられてしまうともう戻らない。こういう違いもあるんだな。面白いものだ。

私たちの祖先の誰かが、人類の歴史でもっとも偉大な発見をした。それが種子の落ちない突然変異を起こした株の発見である。(p.27)

種子が落ちないので、普通であればその植物株は次の世代を残すことはできない。しかし、人間を利用すれば話は別だ。種子を落とさないからこそ、収穫が用意となり、だから人間はその株を増やし、維持しようとする。これが農耕の起源となる。野生では不利な特徴でも、人間の欲望と結びつければ、繁栄することができる。

(ジャガイモの芽の)ソラニンはめまいや嘔吐などの中毒症状を引き起こす。その致死量はわずか400ミリグラムというから、かなりの毒の強さだ。(p.89)

へぇ。ジャガイモの芽に毒があることは知っていたけれど、わりと強い毒なんだね。2017年7月に、広島の小学校でジャガイモが原因の食中毒が起こり児童9人が搬送されている。重篤に至らないまでも、今でもソラニン中毒は起きているのだ。

ケチャップは、元をたどれば古代中国で作られていた「茄醤(ケツイアプ)」という魚醤だったと言われている(p.116)

へぇ。ケチャップの語源は魚醤からきてるとは。魚醤を真似て創ろうとしたら、(似てない)非なるものができて、美味しかったので人気が出て定着した。そして起源の名前だけ残った。

江戸時代には浅い海を干拓して、耕作地を拡大していったが、干拓地は海水による塩害が問題となる。ところが、ワタは塩害に強かったのである。(中略)後に瀬戸内海地域や北九州工業地帯の礎となるのである。(p.131)

だから愛媛県今治市はタオルで有名なのか。納得した。

イギリスへの反感から、アメリカの人々は紅茶の代わりにコーヒーを飲むようになる。これが、紅茶の味に似せて、浅く焙煎したアメリカンコーヒーである。(p.139)

1773年のボストン・ティ・パーティ事件。この事件は、名前がとにかく明るく楽しいので覚えやすい。紅茶なんて俺らもう飲まねぇと、(たぶん)威勢よく茶葉を海に投げ捨てたアメリカが紅茶の国イギリスから独立する象徴的な事件。アメリカンコーヒーの味わいは紅茶を意識してだったのだ。アメリカンコーヒーは水増しした薄いコーヒーだと思っていたら、そうではないのだ。紅茶を意識して、あえて焙煎が浅いのだ。

今やアメリカは世界最大のダイズ生産国である。そして、アメリカとカナダをあわせると、世界の生産量の半分のダイズが北米地域で生産されている。(p.174)

へぇ。アメリカ人とカナダ人はダイズが好きなんだなというのは正しくない。ほとんど家畜のエサとのこと。でもダイズって凄いよね。醤油、味噌、豆腐、もやし、枝豆、納豆、豆乳、湯葉、厚揚げ、油揚げ、ソイジョイ。みーんなダイズ。貴重なタンパク源。

タマネギは球根であるが、実際には根ではない。この部分は、植物学では「鱗茎」と呼ばれている。つまり、ウロコ状になった茎という意味なのである。しかし、実際には茎でもない。私たちが食べるタマネギは、実際には「葉っぱ」の部分である。(p.180)

ちょっと待って。意味がわかんない。タマネギは地中にあるよね。球根だけれど、根ではなく、鱗茎という名前がついているけれど、茎ではない。葉っぱなんだって。やっぱりよく分からない。緑じゃないし。

食品だけではない。現在では工業用アルコールや糊もトウモロコシから作られており、ダンボールなどさまざまな資材も作られている。最近では、限りある化石燃料である石油に代替するものとして、トウモロコシから燃料であるバイオエタノールも作られている。(p.199)

本書によると、トウモロコシは宇宙から来たんじゃないか説があるくらい、謎だらけらしい。あんなに種がぎっしり詰まっているのに、なぜか葉っぱでくるまれている。自分で子孫を増やす気がないっていうか、人間に育ててくれと主張しているほど。

それから、トウモロコシって食べ物だと思っていたら用途はそれだけではないのだ。食料または燃料という二項対立を前提にすると、食べ物を燃料にするなんてけしからん的な発想に陥りがちだけれど、既に大量のトウモロコシはバイオ燃料でない工業製品に使われているのだ。

トウモロコシがバイオ燃料として優れているのであれば、生産し、消費する方が理にかなっている。食べられるかどうか関係ない。食べられるトウモロコシを飢餓に苦しんでいるエリアから奪っているわけではないのだから。

もし、地球外から来た生命体が、地球のようすを観察したとしたら、どう思うだろう。地球の支配者は作物であると思わないだろうか。そして、人類のことを、支配者たる作物の世話をさせられている気の毒な奴隷であると、母星に報告するのではないだろうか。人類の歴史は、植物の歴史なのかも知れないのである。(p.217)

人間はせっせと植物を育て、植物とともに繁栄してきた。しかし、気候変動、温暖化、異常気象、土壌汚染、塩害、水不足、森林破壊、砂漠化といった問題に直面している。植物がヤバイ=人類もヤバイなのだ。改めて植物の大切さに思いを馳せる。野菜も食べなきゃ。

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(感想文の感想など)

ニンニクもユリ根も鱗茎らしい。でもそれは葉。

サツマイモは根だけれど、ジャガイモは茎。

根菜という言葉があるけれど、根を食べる野菜という意味ではなく、土壌中にある部分を食用するものの総称なのだ。ややこしや。