40代ロスジェネの明るいブログ

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感想文09-16:性転換する魚たち―サンゴ礁の海から

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※2009年3月16日のYahoo!ブログを再掲

 

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雌と雄のある世界(感想文09-13)で知って、読んでみようと思った本書。

魚が性転換するというのはよく知られていると思う。

群れで生活する魚の種類で、一番サイズの大きな魚がオスになり、残りはメスというハレム状態にある。一番大きなオスがとある事情でいなくなると、残りのメスのうち一番大きな魚が、性転換してオスになる。

本書に登場するホンソメワケベラもメスからオスに性転換するタイプの魚だ。専門用語では「雌性先熟」という。

一方、ファインディング・ニモで一躍有名になったカクレクマノミは逆で、メスからオスに性転換する。クマノミは一夫一妻で体の大きい方がメスになり卵を守る。これを「雄性先熟」という。

なるほど。

メスがオスになる現象は知っていたけれど、逆は知らなかった。子育ての関係で、性転換の戦略を取っているんだね。ふむふむ。

もう一つ新しく知ったことは、先ほど登場したホンソメワケベラは、メスからオスになるだけでなく、状況によってはオスからメスにもなるということだ。つまり、逆方向性転換するのだ。性転換は必ずしも一方向性ではなく、可逆的な変身なのである。

非常に興味深い。

さて、本書で印象的なのが研究の方法だ。こういう性転換する魚をどうやって研究するのだろう。それは、一個体ごとにタグをつけて区別して、一匹一匹の生態を調べるんだ。

あの広い海で個体識別して研究するって本当にできるの?って思うけれど、題名にあるようにサンゴ礁は魚たちにとって住処になっている。基本は生活圏が決まっているので、個体を対象とした研究ができるのだ。

こういった研究方法は、著者が京都大学出身であり、そのため個体を対象とした研究の草分け的存在である今西錦司の影響を受けている。サルの個体研究の魚応用版である。

社会性研究における個体識別の威力の大きさを知ることができた。

確かに著者の言うとおり、生物は多様であり、その種の常識が他の種では通用しない。

生物の性の世界は奥が深い。

魚の世界にどっぷり浸かり、個体を見つめる。ぼくは泳げないので、余計に著者のような研究は羨ましく映った。

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(感想文の感想など)

数年前の家族旅行で奄美大島に行ったときのこと。釣りをしていて、目で見える範囲にカクレクマノミのつがいが生活していた。戯れで、釣り針を放り込んでみたら、なんと食いついたではないか。あれよあれよとつがいの片割れをゲット。

ガイドさんからカクレクマノミは食べられるし美味しいけれど、炎上するから逃してくださいと言われ、それもそうだなとあっさりとリリース。

すると、元いたすみかに迷うことなく帰巣していく。出迎えてくれる片割れ。2匹は危機をこうして乗り越えた。映画化決定。って、私が悪者じゃないか。ってことを思い出した。