40代ロスジェネの明るいブログ

2020年1月11日からリスタート

感想文12-33:日本の1/2革命

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※2012年6月6日のYahoo!ブログを再掲

 

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小説フランス革命を書いている佐藤賢一さんと、こどもニュースのお父さんだったのが、「良い質問ですねぇ」ですっかり有名人の池上彰さんの対談本だ。さすが池上さん、目の付け所が良い。鼻が利く。

現在の混迷する日本、っていう言葉すらすっかり慣れてしまったほど、なんだかよく分からないし、もはやどうでもよくなってきつつある日本。地震でぼろぼろになり、原発をどうしていいか分からず、若者は搾取され、年寄りは怒る。ぼくとしては、ちょっとしたきっかけで一気に激烈で暴力的な何かが起きてしまうんじゃなかろうかという不安と期待、と同時に、やっぱり何も起こらないという諦めと失望がないまぜになっている。

現在の日本は、どうやらフランス革命当時のフランスと類似しているとお二人は考えている。気になる点を挙げてみよう。

(佐藤)フランス革命明治維新の違いは、変化の幅の単純な大小でなく、前者が二段ロケットだったのに対して、後者は一段しかなかったと、そこなのではないかと思うようになったのです。

ほうほう。明治維新江戸城無血開城にあるように、あんまり血を流していない。そりゃあ、実際には多くの方が亡くなっているけれど、フランスの恐怖政治のようにバサバサとギロチンが活躍したってわけではないのだ。

(池上)王様を殺したり、退位させたり、あるいは、アメリカみたいにそもそも新しくできた国は、だいたい大統領制を布いていますね。

なるほど。王様がいない国は、大統領制になると。天皇がいる日本や、王様がいるイギリスは、議院内閣制だ。

(池上)成功した「社会主義国」である日本も、世界の社会主義諸国より10年以上遅れて行きづまった。そこで、小泉さんがそれに対するアンチテーゼを出したんだと。

日本が、成功した社会主義国っていうのは、なかなかに皮肉が効いているけれど、実際にそうだとも思える。長い間、一党独裁状態であり、(池上さん的には)王権神授的な自民党政権と官僚によってこの国はずーっと運営されてきた。現在が革命の端緒なのかどうかは、まだ分からないけれど、自民党から異端な人が首相になり、ついには政権まで変わってしまった。混迷に拍車がかかっているけれど。

(池上)1783年にアイスランドラキ火山という火山が噴火しまして、ほぼ同時に、そこからちょっと離れたところにあるグリームスヴォトン火山というのも噴火したんです。(中略)同じ1783年に日本の浅間山も噴火してまして、その影響で「天明の大飢饉」が起こりました。(中略)フランスの凶作も日本の凶作も噴火のせいだったというのは、火山学者などの間ではすでに定説になっているところです。

フランス革命の原因がまさかの火山噴火だったとは。存外、こうやって社会が大きく変わるのって、自然災害が影響しているのかもしれない。今回の地震も、地殻変動だけでなく、社会変動にまでつながっていくのかなぁ。

(佐藤)最近、冗談半分で、民主党の人たちをフランス革命の人たちになぞらえてるんです。たとえば鳩山由紀夫ラ・ファイエット。(中略)これに対して、小沢一郎ミラボー。(中略)パルナーブを僕は菅直人になぞらえているんです。

確かにほとんど冗談だろうけれど、こういう風に考えると確かに面白い。フランス革命ではミラボーが死ぬことによって、大きくパワーバランスが変わっていく。日本のミラボーはほぼ死に体状態なのだろうか。ラ・ファイエットもパルナーブももはや政治の表舞台には戻ってきそうもない。今の総理は…ロベスピエール?まさかね。

(佐藤)「人権宣言」というものこそ、つまりはマニフェストだったんです。

これもなるほど、って思った。国民に対する約束。まったく守られていないけれど。人権宣言をマニフェストっていうと、随分軽く感じられちゃうね。

(佐藤)「破壊」と「まとめ」と「創造」の三拍子

革命の三段論法とのこと。まだ破壊段階だろう。物理的にも。

(池上)政治家はやっぱり歴史に学ばなきゃいけないということです。考えれば考えるほど現代につながっていて面白かったです。

確かに。他方で、それでも、日本人は「戦争」を選んだ(感想文10-26)の文章を引用してこの感想文を終わりにしたい。

政治的に重要な判断をしなければならないとき、人は過去の出来事について、誤った評価や教訓を導き出すことがいかに多いか

歴史から学ぶことは大事。そして言うのは簡単。しかし、教訓を導き出すのは極めて困難である。佐藤賢一さんのような歴史小説家の仕事は、存外、重たいものなのかもしれない。

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(感想文の感想など)

感想文が書かれた時代感覚が味わえる。まさか日本のミラボーがまだ暗躍しているなんで、その当時は考えもしなかった。

さて、火山ではなく、感染症で革命が起きるのだろうか。たぶん、起きないな。