40代ロスジェネの明るいブログ

2020年1月11日からリスタート

感想文09-38:クリムト

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※2009年6月17日のYahoo!ブログを再掲

 

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日本でもファンの多い近代の画家の一人(1862年~1918年※森鴎外新渡戸稲造と同い年)。

代表作の「接吻(1908年)」は、有名だろう。

自慢にならないけれどぼくは芸術方面にはとんと疎い。30を越えて急に歴史とか芸術とかそんな教養的なものを身につけたいと"さもしく"思い始めた。

クリムトはなぜか好きな画家なので、軽い気持ちで本書を手に取り、読んでみた。

感想は、一言。

「これは玄人向きなので、素人は手を出してはいけない。」

・・・。

さてさて、小さい頃からどうにも"歴史"が嫌いだった。年代を覚えることはできないし、どこで戦争があって、誰が勝って、裏切りがあって、また戦争があって、という世界史を高校生の時に履修したけれど、地名も人名も全く覚えることができずに途方に暮れた。試験の前日に教科書を丸暗記して、試験の時にアウトプットすると同時にデリートされた。履修したけれど、今では履修した事実以外に何も残っていない。

大学に入り、社会に出て、ちょっとオトナになり、歴史に疎いとトークに加われなかったり、恥ずかしい思いをしたりすることを知った。

ということで歴史を勉強し始めたけれど、また同じように途方に暮れた。仕方ないので、興味のある分野の歴史を勉強してみることにした。"科学史"だ。

科学の歴史は17世紀以降が中心。ティコ・ブラーエが、地動説と天動説のアマルガムな説を唱え、そこから科学の歴史は明瞭になっていく。そうやって歴史を捉えていくと、するするっと頭の中に入っていき、18世紀の博物学、19世紀の進化論やメンデルの法則など、科学的発見とその歴史的背景というのが立体的に見えるようになった。

よし、玄人向けの本書に戻ろう。

クリムトは今でこそ絶賛され有名な画家ではあるけれど、当時は非難を浴びていた。挑発的な思想を描き、エロティックな女体は、見る人を怒らせ、悲しませ、呆れさせた。

本書ではデッサンも載っている。驚くほど上手い。当たり前かも知れないけれど。裸体のデッサンは艶めかしく、生唾を飲み込むほど。どうも接吻のようなキラキラしたモザイクのイメージが強かったので、デッサン力の凄まじさに驚かされた。

クリムトは、19世紀末にウィーン大学大講堂の天井画の制作を依頼され、「哲学」、「医学」、「法学」を描いた。

哲学、医学、法学ってタイトルの絵って想像できないよね。残念ながら今では焼失してカラーは残っていないけれど、白黒の写真は残っている。どれもインパクトがあり、"怖い"作品だ。依頼は「人間の知性の勝利」を描いて欲しい、ということだったらしいけれど、例えば「医学」だと知性の獲得には累々たる死人が土台になっているということが想念されるような作品になっていて、かなり非難を浴びたとのこと。

※本の表紙の画像がないので、医学を載せておきます。

非難があったのが1900年頃。当時、あのフロイトウィーン大学で教鞭を執っていたので、その騒動を見ていたかも知れない。

その後、オーストリアは大きな戦争に加担することになる。クリムトは良い時期のオーストリアで生きた画家だった。

一生に一度で良いから、実物を拝んでみたい。

それからオーストリアの歴史も興味があるので、関連する本を読んでみます。

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(感想文の感想など)

東京都美術館で2019年4月23日~7月10日に開催された「クリムト展 ウィーンと日本 1900」に行った。そこで、「医学」の天井画のために描かれた習作(完成品は焼失)を見ることができた。ウィーンに行きたいなぁ。