40代ロスジェネの明るいブログ

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感想文09-47:アルブレヒト・デューラー

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※2009年7月27日のYahoo!ブログを再掲

 

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名画で読み解く ハプスブルク家12の物語(感想文09-39)でも登場した、ドイツ最高の画家「アルブレヒト・デューラー」の生涯について日記的に描かれた本書。

息を飲むほど美しい銅板画、木版画、絵画が挿入され、見るだけでも楽しい。

デューラーはカネに細かい人間だと聞いたことがあったけれど、本書を読んでいてもよく分かる。誰に何グルデンで売ったとか、何グルデンもらえなかったとか、何グルデン奢ってもらって得をしたとか、そんな細かいことがいっぱい書かれている。

一方で、デューラーは信仰心の強い尊敬できる人間であると言うこともよく分かる。マジメで実直で曲がったことが大嫌い。美を探求し、美を客観的に数学的に記述しようと試み、技法を後人に伝えようとした。

正確で精密で丁寧な仕事ぶりと、知的探求心の強さ、そして信仰心の厚さは、人として尊敬できる。

デューラーの生きた時代(1471年~1528年)と関係した人物について、本書の記述も踏まえまとめてみよう。

ドイツのニュルンベルクで生まれ、絵画の修行のためにオランダやヴェネチアへ旅立つ。各地で工房の親方、芸術家、司教、資産家と親睦を深め、その凄腕で有名になっていく。

同時代に生きた有名な芸術家にダヴィンチがいる。時代はルネサンスルネサンスとは何であったか(感想文08-36)参照)。デューラーダヴィンチとも親交があった。また、ルネサンスは大航海ブームを呼び起こし、ヴェネチアは斜陽の時代を迎えつつあった。

デューラーが生まれたニュルンベルクは皇帝の街であり、大変栄えていた。後にデューラーは参事会委員に選定され、偉くなっていく。そして、ついにマクシミアン皇帝から肖像画の注文がくるようになった。そういう状況でも皇室からはそんなに代金は取れないなと考えるのがデューラーらしいのだけれど。

神聖ローマ帝国は、フランス、オスマン帝国とドンパチやらかし、宗教改革の予兆といった、混乱した時代でもあった。

印象に残っているのが、デューラーマルティン・ルター(1483年~1546年)に心酔していたということ。教科書的には、免罪符(今は贖宥状っていうらしい)批判が有名で、宗教改革の引き金となった。

フリードリヒ3世賢明公(若かりし頃の肖像画デューラーが描いている)に保護され、安全は確保されほっとしている様子が記されている。二人が出会った形跡はないけれど、ルターの思想はデューラーの心の支えになっていたようだ。

激動の時代を生きた天才画家デューラー。生き生きとした彼の人生を美しい絵とともに読むことができる。本書はぶ厚く、読破するのは大変だけれど、一時代を知ることができる素晴らしい本だ。必ずお金の話は1ページに1回は出てくるけどね・・・。

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(感想文の感想など)

国立西洋美術館で2010年10月26日~2011年1月16日に開催された「アルブレヒト・デューラー版画・素描展」に行った。そこで有名な「犀」を見ることができた。

それから、2014年冬にドイツに出張に行った。ミュンヘンのアルテ・ピナコテーク(15~18世紀の作品を展示)でもデューラーの作品を見ることができた。