40代ロスジェネの明るいブログ

2020年1月11日からリスタート

感想文17-15:イスラエル

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※2017年4月4日のYahoo!ブログを再掲

 

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イスラエル関連本第2弾。本書は、2009年に出版された新書である。最新情報ではないかもしれないが、それでもコンパクトにイスラエルについてまとまっている1冊だ。

簡単に気になる箇所を挙げておこう。

本書では、建国からの歴史をたどりながら、イスラエル多文化主義的な現実とユダヤ国家でなければならないという理念のはざまで切り裂かれて苦慮するイスラエルの姿を描き出したいと考えている。(p.vi)

ともすると、ユダヤ人自らが建国したイスラエル単一民族国家であるかのように、日本では認識されているのかもしれない。本書を読んで初めて知った重要なことは、イスラエル多文化主義な側面があるという現実だ。

シオニズムとは、反ユダヤ主義者への対抗策としてのユダヤナショナリズムであり、反ユダヤ主義者とシオニズムはコインの表裏の関係なのである。(p.8)

シオニズムイスラエル建国の源泉ではあるが、その理念は、自民族の糾合と他民族の排斥を包含しているのである。特定の土地を奪い合う、ゼロサム・ゲームだ。当然、皆が納得し、きれいに決着することはなく、現在のイスラエルのように自治政府が残るモザイク状になっている。

イスラエルは多様なエスニック構造をもち、実態として多文化主義的な方向へと向かっている。(p.20)

パレスチナの地にはそもそもアラブ人が住んでいた。さらにロシアや東欧からの人口流入もある。当然、単一ではなく、見た目も考え方も違う国民が一緒に暮らしている。さらには超正統派という国家を国家として認めようとしない宗教集団もいる。また、アラブ人たちは、決してイスラエルに「同化」しようとしない。

ホロコーストは、シオニズムイデオロギーとは別のレベルで、ユダヤ教的な意味づけとその教育を介して、非シオニスト的なユダヤ人をイスラエル国民として統合していく機能をもつと同時に、イスラエルディアスポラを結合させる役割をも果たしていくことになったのである。(p.120)

意外なことに、もともとイスラエルは、ホロコーストをネガティブで屈辱的な出来事として捉えられていた。犠牲者や生還した人たちは、弱く無抵抗な恥ずべき人たちとして蔑まされていた。しかし、その考えは、大きく転換し、ホロコーストが政治的に利用されていく。

どういうことか。繰り返すが、シオニズムは、他民族の排斥という側面もある。排斥には暴力と破壊はつきものである。当然、国際社会はイスラエルを批難する。そこで反論する。ホロコーストはあんなもんじゃなかった、もっと酷かったんだぞ、と。

ホロコーストの被害者である私たちユダヤ人は、パレスチナに住んでいる人たちを追い出しても、国を作り、生活することが認められるのだ、という主張になる。圧倒的な大人数の虐殺の犠牲者を盾にして、現在進行系の相対的に小規模な暴力・弾圧・破壊を正当化する。日本では分かりにくい、イスラエルのえげつないところである。

さて、世界は混沌としてきている。イギリスのEU離脱ブレグジット)、トランプ大統領就任などで、大きく世界は変わりつつある。良い方に変わっているとは、全く楽観できない。

イスラエル政府による一方的な東西エルサレムの併合と東西統一エルサレムを首都とすることを定めた基本法を正式に承認している国はないために、現在、エルサレムに大使館を置いている国は存在しない。(p.219)

しかし、アメリカが大使館をイスラエルに移転しようと考えているというニュースが流れている。これも物議を醸している。

はてさてどうなるのだろうか。少なくともテルアビブにもその北にあるハイファにも多くのアメリカ発企業が進出している。イスラエルでは多数のベンチャーが立ち上がり、アメリカのファンドが投資し、有望なベンチャーアメリカ発企業が買収している。最近では、インテル社がモービルアイ社を1.7兆円で買収したことがニュースになった。

イスラエルアメリカの関係は深い。これについては改めて別の本を読んで、学んでみたい。世界が変わろうとしている。日本から遠く遠い国であるイスラエルについて学んでみると、また異なる視点で世界が見えてくるような気がする。

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(感想文の感想など)

結局、在イスラエルアメリカ合衆国大使館は、2018年5月14日にテルアビブからエルサレムへ移転した。

そして、2020年8月13日、アメリカの仲介で、イスラエルアラブ首長国連邦UAE)との国交正常化に合意したことを発表(アブラハム合意)。

さらに、2020年9月11日、アメリカのトランプ大統領は、イスラエルバーレーンの国交正常化で合意したと発表。

中東和平に介入するトランプ大統領。はてさて、11月のアメリカ大統領選挙はどうなることか。