40代ロスジェネの明るいブログ

2020年1月11日からリスタート

感想文17-14:イスラエルを知るための60章

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※2017年4月3日のYahoo!ブログを再掲

 

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いきなりのイスラエルに関連する本。これを読むに至った理由はシンプルだ。海外出張でイスラエルに行くことになったからだ。

何となく危険な国というイメージの強い、イスラエル。日本人でイスラエルに行ったことのある人は、5%もいないだろう。

私も周りでイスラエルに行ったことのある人はおらず、とにかく事前に学んでおこうと考え、移動の飛行機の中で本書を読んだ。もう1冊イスラエル関連本を持っていった。

本書を通じて初めて知ったことも多いので、まとめておこう。

イスラエルはもともとユダヤ人の民族主義的運動「シオニズム」によって生まれてきたイデオロギー国家だ。(p.3)

国家の虚構性について思いを馳せると、そもそもイデオロギーのない国などなく、イスラエルが特殊というわけではないだろう。歴史的な経緯、地政、宗教、民族など複雑な事情は、イスラエルという国を捉える上で、非常に重要であるが、私を含めた多くの日本人は、ほとんど不案内だし、強い関心もないだろう。

民族主義的運動シオニズムとは、何であろうか。

自分たちのホームランドパレスチナに作ろうとするユダヤ人の民族主義思想や運動(p.32)

ヨーロッパとアフリカをつなげる要所。パレスチナという地名がつくずっと前の3000年も前から、この地は人が暮らし始め、そして幾度となく支配者は交替していった。ユダヤ教キリスト教イスラム教と3つのメジャーな宗教が生まれ、さらにこの土地の支配について混沌とした戦乱が続き、今でも収まってはいない。

ディスアポラ(離散)したユダヤ人(と言っても一義的に決めることができない)がパレスチナに自分たちの国を作ろうとする運動がシオニズムである。

もともとパレスチナに住んでいたパレスチナ・アラブ人からみれば、シオニズムは侵略活動であり、ヨーロッパ帝国主義の手先だった。(中略)二つのコミュニティの間ではさまざまな対立や衝突が続き、現在にいたっている。(p.42)

何もない土地ではなく、既に生活している人たちがいる。イギリスの三枚舌外交によって、さらに混乱が生み出される。イスラエルの中にアラブによる自治組織があり、今でもこの土地にミサイルが打ち込まれたり、酷い時には空爆が行われている。それぞれの言い分と正義があり、衝突は繰り返される。

超正統派(ハレディーム)と呼ばれるこの集団は今でも、エルサレムやニューヨークでよくみかける。彼らはある意味で近代を拒否したのであり、19世紀で時計を止めてしまった。(中略)その意味では、同じように近代を拒否したキリスト教アーミッシュに通じるところがある。(p.40)

実際にイスラエルに行くと、日本では全く見かけることのない、超正統派(ハレディーム)を目にする機会が多い。興味深いのは、彼ら超正統派が、ユダヤ人の代表的な人物かというと決してそうではないということだ。

イスラエルという国は神によって復活されると信じている一部のハレディームは、人間が政治的決断に基づいて建国した現在のイスラエルという国家を認めていない。そのため、こうしたハレディームの子どもが学ぶ学校には国旗をはじめとする国家のシンボルが一切ない。また、政府が指定する教育要領にも従わず、聖書を中心とする独自の教育が行われている。その一方で、学校運営には政府の補助金が支払われ、国民の義務である兵役も免除され、男性は働かずにユダヤ教神学校で聖書を学び続ける人生が認められている。(p.88-89)

他のユダヤ人は、超正統派のことを疎ましく思っている。国民の義務である兵役を免除されており、しかも働かなくても良いのだ。イスラエル国民も決して一枚岩ではなく、国民同士での衝突も起きている。

キブツやシャブを基盤とした農業を中心に経済開発を進めていかなければならなかった。イスラエルが今でも食料のほとんどを自給できる農業大国であることはあまり知られていない(p.215)

実際にイスラエルに行って驚いたのは食事だ。ヨーロッパに数回行ったことがあるが、ホテルの朝食で新鮮な野菜が提供されることはほとんどなかった。せいぜいプチトマトとかキャベツとかニンジンくらいのものだ。

ところがイスラエルのホテルの朝食では、色とりどりの野菜、それらを活用した様々な料理が提供されている。カラフルで手間のかかった料理だ。ただ切っただけみたいなものではない。

ユダヤ教の戒律で、肉と乳製品を一緒に摂取してはいけないと決まっている。そのため、肉を調理するためにバターもチーズも利用できない。結果、野菜とチーズ中心の食事が多いのだ。

イスラエルの食料自給率は90%以上であり、思いの外、農業国なのだ。これは全く知らなかった。確かに近隣諸国との対立がある以上、食料を自ら賄えるというのは、大事な命綱なのだろう。

イスラエルでは、テルアビブにしかいなかったが、治安は全く問題なかった。乾燥地帯なのでやや埃っぽく、スプレーでの落書きにより景観は損なわれていたが、地中海側は非常に綺麗に整備されていた。

知らないところに行くのは良い経験になる。こうしてイスラエルに行く機会でもなければ、自ら進んでイスラエルのことについて学ぼうとも思わなかったことだろう。

たまには海外出張しないとね。しんどいけれど。

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(感想文の感想など)

イスラエル(感想文17-15)もご参考にどうぞ。たぶん、人生で2度とイスラエルに行くことはないだろう。

良いところだったのでまた行きたいのだけれど、気軽に行く旅行先ではないんだよな。