40代ロスジェネの明るいブログ

2020年1月11日からリスタート

感想文17-59:戦略的交渉入門

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※2017年12月13日のYahoo!ブログを再掲

 

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今年、「交渉学(入門)」という研修を受けた。これまでに受けた研修の中で、なかなか面白い部類に入る体験だった。単なる交渉術について座学で学ぶということではなく、その場で初めてお会いする方とペアになり、互いに交渉するロール・プレイ形式だ。

残念ながら、ペアになった交渉相手は日本語読解能力が乏しい若い女性(新人くらい?)で、頑なに自らの意見を言うだけで、ほとんど交渉する余地がなかった。所属している会社の風土が垣間見れる気がする。

交渉学は、米国のハーバード・ロースクールで誕生しました。もともとは、法律家を養成する法科大学院で生まれた学問です。(p.4)

まず最初に、なるほど、交渉という行動が学問になるのだなということに、決して小さくない驚きを覚えたのだ。交渉学は実学なので、アメリカ生まれというのも当然に思える。ヨーロッパからは生まれそうにないな。

小学生から算数、国語、理科、社会、そこから派生して、数学、現国、古文、漢文、物理学、化学、生物学、地学、日本史、世界史、地理、などなどに高校生になるに連れて広がり、大学生からその先は学問が細分化していく。

根幹にある算数、国語、理科、社会から派生する先にあるのが学問とばかり、思い込んでしまっているが、実際にはそんなことはない。「学」をつければ、立派に成り立つのだ。

法学とか経済学とか、こういう学問も習うまでは何がどう「学」なのか分からなかったが、今となっては血肉になって私を構成する大事な学の一部となっている。

ということで、交渉学について研修後にもうちょっと勉強してみようと思い、読んでみたのが本書だ。研修を担当した隅田浩司先生が推薦した図書であり、何より著者の一人である。実際に研修を受けた後なので、読みやすく、理解がさらに深まった気がする。

交渉学では、交渉結果については、最終的に「賢明な合意」ができているか否か、という基準で判断します。(p.19)

これは、「賢明な合意」できるというのが、現実ではなかなかに難しいということの裏返しとも言える。だからこそ交渉学が成立し、発展しているのだ。

交渉学では、交渉前に準備することが成功への近道であると説明します。準備で8割方成功するとも言うので、準備することが交渉学の唯一の教えだ、と思われるくらいです。(p.23)

これは本当にそうだと思う。とにかく徹底して準備を行い、自らの武器を整理し、相手の思惑を入念に調べ、その上で交渉しないことには、懸命な合意に達することはできない。

交渉とは、自分の利益を最大化を目指すゲームです。しかし、そのために相手にも何らかの利益を提供しないと、持続性のある合意を作ることができないのです。だからこそ、相手の利益にも配慮した交渉の選択肢を準備する必要があります。自分の利益を最大限反映した合意にしたいのであれば、逆説的ですが、自分の提案が相手にどのような利益があるのかをきちんと説明することが重要なのです。(p.42)

これも非常に面白くて、互いに協力することが懸命な合意形成に必須となる。一方的に自分の利益を確保するだけではダメだし、互いに信頼関係を築いていかないといけない。

交渉相手であるパワープレーヤーの態度を改めさせようとか、相手の発想それ自体を変えていこうと思ってはいけないのです。そもそも、他人の態度を変えることは非常に難しいのです。コントロール可能なのは自分の行動だけです。(p.95)

ついつい、国際社会のことを考えてしまうけれど、中国やアメリカのような大国によるパワープレーにいかに対応していくかが重要だろう。某国のようにミサイルで脅してくるのもパワープレーと言える。

早い話が北朝鮮の態度を改めさせるみたいなことに期待しない方が良いということだ。話し合えば分かってくれるとかは、相手の行動を楽観的に予測しすぎ、つまりは、甘いということだ。

各国が行動をコントロールし、その姿を示す。慌てふためいたり、とにかく話し合いをしましょうとか、何が困ってるんですかとか、相手の行動をコントロールできるようなことを期待してはいけないのだ。

ビジネス交渉では、交渉戦術はディフェンスとして、すなわち、このような戦術には引っかからないことの方がはるかに重要なのです。こちらが戦術に引っかからないことがわかれば、交渉相手も戦術を使う意味がなくなります。このように戦術を使わせない交渉を目指す方が合理的です。(p.168)

脅してくるとか、二択を迫るとか、二分法のわなとか、とにかく交渉でオフェンシブな戦術があり、そういうことの重要性とか有効性を持ち上げる記事やサイトがあるけれど、学ぶべきは自分に有利になるような戦術ではなく、防御策の方だ。

ナンパとか詐欺行為とか飛び込み営業とか、そういうものに対して、いかに防御するかは誰しもが学んでおいて損のないことだと思う。

私は仕事の実務上、交渉する機会がそこまで多いわけではない。それでも社会で生きていく上で、交渉学という存在を知っていること、演習つきの研修を受けたことがある経験、そして本を読んだことがある経験、これらは交渉する上で、実践的にも気持ち的にも優位に立てる貴重な材料となることだろう。

とはいえ、私は愚かであろうし、すぐに忘れるし、理性を失ってしまうこともあるだろう。だからこそ、こうして感想文として取りまとめ、何かの際に見直し、生きていくための糧としていきたい。

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(感想文の感想など)

交渉学の研修で、その後、「応用」を受けた。ちなみに「極み」まであるのだが、それを受けるチャンスの前にあいにく異動とあいなった。