40代ロスジェネの明るいブログ

2020年1月11日からリスタート

感想文16-18:若い読者のための第三のチンパンジー

f:id:sky-and-heart:20201023000930j:plain

※2016年6月18日のYahoo!ブログを再掲

 

↓↓↓

銃・病原菌・鉄の著者として有名なジャレド・ダイアモンドさんの著書。オフィシャルな紹介では、『ダイアモンド博士の第一作『人間はどこまでチンパンジーか?』が、最新の情報を取り入れてより読みやすくコンパクトに!』ということで、調べてみると

1993年に発売された本のリメイク版ということになる。

ヒトの進化についてさほど知らなかったので色々と刺激を受けた。気になる箇所を挙げておこう。

チンパンジーにとって、彼らにもっとも近い近縁の種とはゴリラなどではなく、遺伝的には私たち人間なのである。

チンパンジーとゴリラよりも、チンパンジーとヒトの方が遺伝的には近い。

ヒト&チンパンジーとゴリラの分岐は1000万年前、ヒトとチンパンジーの分岐は700万年前

なのである。

一夫多妻の哺乳動物では、雄と雌のあいだにうかがえる体の大きさの平均的な違いは、一頭の雄と交尾する雌の数に関係している。

へぇ。一夫多妻の哺乳動物として思い浮かぶのは、ミナミゾウアザラシだな。確かにオスは巨大だ。それからテングザルだな。鼻がでかい。ミナミゾウアザラシもテングザルも両方とも鼻がでかい。一夫多妻制の哺乳類では、体の一部が巨大化するということを知っていたが、雌雄の体格差がハーレム規模と相関する説は初めて知った。

捕らわれの身にあれば絵を描いていたチンパンジーが、どうして野生では絵を描こうとはしないのか。その答えとして私が考えるのは、野生に生きるチンパンジーの日常は、食べ物を探すこと、生き延びること、ライバルの群れを追い払うことで精一杯だからなのだ。

チンパンジーだって筆と紙を与えれば、絵を描く。創造性はある。しかし、野生では描かない。そんなことをしているヒマがないからだ。

孤立した集団が世界的な人口集落へと変化していくことは、多様性の点では圧倒的な消失を意味する。こうした消失はやはり悲しむべきだが、そこにも肯定的な面がないわけではない。それは、文化が融合して新たな文化が育まれているという希望だ。

広い世界のどこかにある孤立した集団は失われている。深い海の底や、地底の奥深く、分厚い氷で閉ざされた空間など、まだ残されたフロンティアはあるかもしれないが、人間が住んでいる場所で未発見なところはもはや残っていないだろう。発見され、交流が生まれれば、あっという間にその集落の文化は薄れ、そして消えていってしまう。

核兵器保有するようになった現在、自分を地球規模で共有する同じ文化の一員だと見なすことこそ、それに対する最善の方法にほかならないだろう。文化の多様性が消えていくということは、私たちが生き残るために払わなければならない代償なのかもしれない。

非常にリアリスティックな考え方だが、人間は既に地球を壊すことができるほどの兵器を保有してしまっている。そういう状況において、文化の多様性を守れという主張はナイーブすぎるし、多様性を失うことによって全体としての生存確率を高めるという考え方は刺激的だ。

私たち自身を含め、すべての種の生物学的進化と文化的進化の基本的なルールを決定しているのは地理にほかならない。

これは、銃・病原菌・鉄での主張に通底している。この地球で、もし陸地の配置が変わっていれば、全く違う世界が構築されていたことだろう。

最初の現世人類は、高貴な特徴を備えていたが、彼らは現在私たちが抱えている問題の根底に横たわる二つの特徴も背負っていた。そのひとつこそ、互いに人間を殺しあうという私たちの性質である。そして、もうひとつは、環境と資源基盤を破壊しようとする性質である。

著者の洞察から導き出された事柄。人間の2つの性質。それがジェノサイドと環境破壊だ。どうにも困った性質が人間には組み込まれてしまっているらしい。同族を殺し、破壊する。これだけ互いに殺しあっても、人口は増えている。そして、生きるために環境を破壊する。

今、地球規模の課題はいくつもあり、その根本原因はどうやら人間の本質にあるのかもしれない。

著者の宇宙人から見た視点とも言える、怜悧でドライで客観的な人間観は、刺激的であると同時にニヒリスティックにも感じる。

私たち人間は動物なのだ。遺伝的にはチンパンジーとわずかな違いしかない。知性があるように振る舞ってはいるが、殺し、壊すことから未だに抜け出すことはできていない。

人間の進化についてきちんと体系的に書かれた本を改めて読んでみたいと思う。

↑↑↑

 

(感想文の感想など)

気候変動でやや影が薄くなった印象があるが、核の脅威は変わっていない。人類を追い詰めるカードは人類自ら増やしていく一方だ。