40代ロスジェネの明るいブログ

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感想文17-03:ドナルド・トランプ 劇画化するアメリカと世界の悪夢

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※2017年1月17日のYahoo!ブログを再掲

 

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2016年、最大のニュースと言えば、米大統領選でドナルド・トランプが劇的な勝利を収めたことだろう。投票日は日本にいる私も投票状況をウェブでチェックしていたし、外勤先の日本橋で若いサラリーマンがトランプが当確したといって騒いでいる様子を見て、初めて結果を知ったことを印象的に覚えている。

本書はトランプが勝利する前に出版された。当時はヒラリーが優勢であり、まさかトランプが勝つとは多くの人は予想していなかっただろう。それだけに、今、トランプは一体どういう人物なのかあちこちで注目されるようになった。過激な発言ばかりが取り沙汰されているがランプの本は何なのだろうか。

トランプは1946年生まれ。同じ年生まれの政治関連で言えば、丸山和也西川きよしビル・クリントン菅直人松浪健四郎猪瀬直樹宇都宮健児といった顔ぶれ。ビル・クリントンと同い年とは意外。70歳になる年齢だけれど、まだまだ元気いっぱい精力旺盛という感じだ。

いつものとおり、気になった箇所を挙げておこう。

富豪トランプ家の創業者は風俗ビジネスによってアメリカン・ドリームの階段を上り始めた。

トランプはドイツ系移民の子孫であり、祖父であるドイツ人フレデリック・トランプがルーツになっている。アメリカに渡ったフレデリックのビジネスは、風俗だった。これがトランプ一族がアメリカで成功していく第一歩ということを初めて知った。

トランプが一切酒をたしなまないのは、兄フレディがアルコール依存症によって寿命を縮めていったのを目の当たりにしたためだった。 

トランプは一切酒を飲まないというのは意外な感じがする。過激な発言と強烈な見た目が豪放磊落なイメージを生み出すので、さぞかし酒豪だろうと思ったら、飲まないのだ。ちなみに、祖父フレデリックアルコール依存症だったかもしれないとも言われている。トランプと親しくなりたいと思いワインをプレゼントしても喜ばないのだ。

トランプは実に分かりやすい嗜好を持っている。離婚・再婚を繰り返しながら、妻はどんどん若くなっていく。

トランプは3度結婚している。初婚は3歳年下、2度目は17歳下、3度めは24歳年下。それぞれに子どもをもうけている。興味深いのは、3度全てにおいて結婚前に離婚したときの慰謝料について取り決めた婚前契約を締結していることだ。自分の資産を死守しつつ、若い女性を妻に向かい入れる。ある意味、信念が貫かれている。

破産も四度経験しており、そのビジネス歴は錯誤の連続と言ってもいいほどだ。失敗した事例も多く、悪評もいつまでも消えない。トランプの事業を俯瞰すれば、トランプが決して傑出した神算鬼謀のビジネスマンではないことがはっきりと分かる。 

政治手腕は未知数だが、経営手腕は秀でているかのように報じられているトランプだが、4度も破産している。これも意外。アメリカでは4度破産しても大金持ちになり、大統領になれるという失敗が許容される社会というのは日本と大違い。メンタルはメチャクチャ強いことだろう。

トランプが最も嫌がり、屈辱に思うのは、財産を低く見積もられることだ。(中略)トランプの肥大した自我は資産額に比例している。財産を低く言われることほど自尊心を傷つけられることはないのがトランプなのである。そのあたりの心理は一種病的な、鬼気迫るものさえ感じさせる。

このあたりがトランプの本質に近いところだろう。自らのスゴさを外に向けてアピールし続けることに喜びを感じ、過小評価されることに恐怖を覚える。若い美女を妻にし、成功者としての自分をひけらかさないと生きてはいけない。

何でこういう人物が大統領に選ばれてしまうのか、アメリカ人の考えはさっぱり解らない。反知性主義の最たるものという感じに思えてならない。

トランプ現象の核心的部分は、置き去りにされたと感じている白人がエスタブリッシュメントに対して起こした反乱である。

反知性主義 アメリカが生んだ「熱病」の正体(感想文15-27)にあるように、反知性主義とは『知性が世襲的な特権階級だけの独占的な所有物になることへの反感』である。

現在のアメリカにある行き過ぎた格差もラディカルな平等主義も表裏一体だ。天秤の揺れ戻し幅が大きく、日本から見ると奇異に映る。

それでも毎度、大騒ぎする大統領選を見ていると、アメリカという国の熱量に驚かされる。政治集会に参加すると言うだけで変な目で見られる日本とは違う。単純にアメリカを羨ましがるわけではないけれど、国や国民の多様性を理解し、それぞれが考え、行動する姿そのものについてじっくりと考える機会があるのは良いことだと思う。

その結果がこういうことなのはどうしても理解しがたいのは、さておき。

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(感想文の感想など)

もう4年も経つのだ。トランプ大統領新型コロナウイルスに感染し、すぐに回復するタフさを見せるものの、バイデン氏(1942年生まれの77歳)にリードを許しており、逆転は無理かと言われているが、まだまだわからないのがアメリカ大統領選の面白いところ。

トランプとバイデンかぁ。私がアメリカ人だったらどちらを選ぶだろうか。究極の選択だな。