40代ロスジェネの明るいブログ

2020年1月11日からリスタート

感想文09-80:近代ヨーロッパの誕生 オランダからイギリスへ

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※2009年12月19日のYahoo!ブログを再掲

 

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今年、感化されたウォーラーステイン近代世界システム論(感想文09-56)が出発点になっているという理由だけで、本書を手に取った。

率直な感想としては、経済史に通暁していないと難しい、ということだ。ちょっとしたウォーラーステインかぶれでは、手に負えない。もっと楽しい話が書いてあるかと思ったら、専門的で固い。土地勘のない人間には厳しい(と思う)。

さて、今、世界の覇権(ヘゲモニー)を握っている国は?と聞かれたらアメリカ?と答える人は多いだろう。一時ほどの勢いが無くなっているので、今のアメリカがヘゲモニー国家かというと意見は色々あるだろう。

歴史を紐解いてみると、その昔、オランダがヘゲモニー国家であり、その後、イギリスへと推移していった、と言われている(ウォーラーステインによると)。なぜオランダがヘゲモニー国家となり、どうしてそれがイギリスへと移行したのか、それについて本書では丁寧に説明している。

分かっていないなりにもぼくなりに整理してみたい。

16世紀になり、ヨーロッパでは人口が増加した。食糧が不足し、そして木材が不足した。当時、石炭も石油も使われてなかったので、実質的に木材が主要なエネルギー源だった。そして、海運業が基幹事業であったが、そのための造船用の木材も不足した。

ヨーロッパの中心地だったイタリアから、次第に北へと移り変わっていき、そしてオランダがその中心地になっていった。17世紀の半ばに最盛期=黄金時代を迎える。

ちなみに日本が出島でオランダと貿易していた時期(1641~1659年)と重なる。オランダがヘゲモニー国家だったからこそ、日本は貿易相手としてオランダを選んだのだろう。

当時のオランダは、中継貿易が巨万の富を得た。海運業で完全にヨーロッパを支配し、輸送料でがっぽり儲けた。初期的な金融業が発達し、近代の幕開けとなっていく。

ふむ。レーフェンフックとフェルメールは、黄金時代の人たちだったんだね(西洋博物学者列伝(感想文09-29)参照)。

その後、18世紀に産業革命が起こり、フランス革命が起こり、オランダ以降のヘゲモニー争いが、英仏間で起きる。フランスがしくじり、大英帝国が築かれていく。そして、イギリスはロシアと貿易をして、世界システムのプレイヤーが変わっていく。

まあ、こんな感じ。

本当は様々な角度から詳細に書かれていて、バルト海を中心とした近代の整理は面白かった。あまりにも知らないことだらけなので、うまくまとめられないけれど、ダイナミックな世界史は何となくざっくりと把握できたように思う。

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(感想文の感想など)

現在、アメリカと中国で覇権(ヘゲモニー)争いが行われている。アメリカはインドとオーストラリアを巻き込んでの中国包囲網で対抗し、ファーウェイへの半導体禁輸やTikTokの事業停止などビジネス面での制裁を行っている。

しかし、中国の台頭は、アメリカの落日とパラレルに起きている現象に思える。昨今の大統領選を見ても分かるように国家の分断はより深まっている。老人同士のうんざりするような醜い罵り合いは、アメリカの国家運営あるいは国家の仕組みそのものの老朽化を映し出している。

アメリカだけの話では当然なくて、国家そのものが陳腐化している。世界の覇権を握るのは、国家ではない時代が到来する、いやすでに到来しているかもしれない。GAFAといった超巨大企業が実態的にビジネスを掌握し、国家は独占禁止法くらいでしか対応できない。

いや、こういう状況になってくると、ヘゲモニーというコンセプトがそもそも成り立たなくなっているのかもしれない。ヘゲモニー国家主義がなければ存在し得ないからだ。

とまあ、適当に思うところを書いてみたけれど、GAFAも盤石ではない。新たに登場した技術やビジネスが塗り替えていくかもしれないし、そうなっていくのが健全だろう。