40代ロスジェネの明るいブログ

2020年1月11日からリスタート

西本統さんの活躍を言祝ぐ

このような無粋なブログで取り上げる内容ではないかもしれないが、バスケ仲間の西本統さんがモビエボで取り上げられた。

newspicks.com

山里亮太さんらと出演され、華やかな世界で、こうして注目されたことをまずお祝いしたい。さて、このブログを書いている私の実名を公表していないばかりか、そもそも誰かにこの存在を教えるようなこともほとんどしておらず、ひっそりと、あくまで読者は将来の自分という極めて身勝手かつ無責任な態度でちょくちょく更新している。

ほとんどは取るに足らない読書感想文めいた駄文を載せ、急に多面体折り紙を始め、たまに家族のことを書いている。40代ロスジェネという自身の属性をブログタイトルにしているが、そこまで拘りも恨みもあるわけでもなく、炎上もバズりもしないように、ゆるゆると書いている。

先程紹介した動画を見て、何かしら書き残しておきたいと思い、文章をしたため、このブログに載せることにした。これを統ちゃん(普段はこう呼んでます)に教えるかどうかは現時点では決めていないのだが。

前置きはこのくらいにして、この動画を見終わった時に、何かが心に引っ掛かった。何だろう。そうだ。動画の最後に山里さんが今日の学びとして「泥最強」とまとめたことだ。

確かに、自転車の再配置業務と実機の確認、新規ポートの設置、既存ポートの清掃、自転車のメンテナンス、新規開拓などで、朝早くから夜遅くまで365日働き、ワークライフインテグレーションと統ちゃん自身が表現したように、仕事と生活を一体化したような「泥臭い」と形容できる働き方だった。

わずか3名で日々拡大していく業務量をこなしている姿には感動すら覚える。しかしながら拭えなかったのが、「泥」という表現への違和感だ。

かの名著SLAM DUNKから引用しよう。

華麗な技を持つ河田は鯛…。お前に華麗なんて言葉が似合うと思うか赤木。お前は鰈だ。泥にまみれろよ。

体育館で大根の桂剥きをする板前修行中の魚住純の名台詞だ。

あいにく統ちゃんが仕事をしている姿はこの動画でしか見たことがない。確かに「泥臭く」働いている。感動すら覚える。しかし、バスケのスタイルは華やかなのだ。

長い手足を活かしたディフェンス、滞空時間の長い高いジャンプ力、速い縦への突破、スピードを優先したファンブル混合比率高めのドリブルによる速攻、精度の高いストップアンドジャンプショット、受け手への配慮を些か欠いた下投げノールックパス。こうした派手なバスケをするイメージが強く、泥っぽさを微塵も感じさせないこととのギャップが違和感の一つだ。

もう一つは「泥臭い」という言葉の曖昧さあるいは二面性だ。一般的に泥臭いという表現は、川魚へのネガティブな評価であったり、あるいは洗練されてない様子(unsophisticated)を指し示す。

他方で、必死さ、愚直さ、真摯さ、粘り強さ、一生懸命さという感じで、ポジティブに捉えられることもある。しかしながら、必死に頑張っている人に対して、「泥臭いね」とは、普通は言わない。

改めて動画を見直すと、田中道昭立教大学教授は、

「ものすごく手間ひまのかかるものすごい泥臭いビジネス」(43:58)

と発言していた。そして「泥」という言葉が出てくるのは、ここが初めてだ。

なるほど、違和感の正体がわかった。田中教授はビジネスを泥臭いと形容していたのだ。働き方を泥臭いとは評してはいない。一方で、山里さんは泥最強とその日、学び取った。

要するに、田中教授は統ちゃんのことを「経営者」として認識していた一方で、山里さんは「従業員」として認識していた、というパーセプションギャップが根本にあるのだ。

数年前はバスケ後にいつもの居酒屋(動画にも映っていたお店)で飲むと、統ちゃんはだいたいヒートアップしてきて、持論を語り出す。統節(おさむぶし)と呼ばれているが、その頃から、経営者か思想家(あるいは宗教家)向きだとは思っていた。現在、厳密には経営者ではないかもしれないが、動画を見ると、むしろしょうもないベンチャー企業の社長よりも経営者然としていると感じた。

今の会社の前のポジションで、企業経営者と接する機会が多くあった。大きな会社も中小企業もスタートアップもあった。競争を勝ち抜いてその座を手にした人も父親から引き継いだ人も引退した人も会社を潰した人も上場した人も社長の座から引きずり降ろされた人も知っている。

だが、私がこの経営者は優れているなと感じた人は、例外なく、ビジョンがあり、熱意を持ってそれを語れる人だった。優れた経営者は教祖に近く、否応なしに人を惹きつけるものだ。泥臭く働くことは美徳かもしれないし、感動を呼ぶかもしれないが、それが人を惹きつける重要なポイントにはならない。

そして統ちゃんには明確なビジョンがあったし、熱意を持ってしかも誰に対しても伝わるように説明することができた。そこがこの泥臭いビジネスが成功に向かって進めていけている最も大事なポイントである、と私は思う。だからこそ協力してくれる組織が現れ、ポートのスペースを貸してくれる方の理解が深まり、ユーザーが増え、事業が拡大していった。

ビジネスの世界はおそろしく苛烈だが、世の中を変えるのにこれ以上に合理的な方法はない。

私は統ちゃんのように若い人がビジョンを持ち、新しくビジネスを立ち上げ、そして社会を、世界を変えていく世の中になることを強く願っている。もちろん、若くなくても起業して良い。私自身だって、そういう一人になりたい。

私はこの動画を見て感動を覚えた。だからこそ「泥最強」とまとめられてしまったことに違和感が残った。せっかく、良い動画だったのだ。泥臭いというのはポジティブに用いられることもあることを重々承知しているが、新しく一歩踏み出そうとしている人の背を押す言葉としては不適切であり、また統ちゃんの生き方をまとめる言葉としても不適切であろうと思い、こうして駄文をしたためた次第である。

ともかく、今後の統ちゃんの活躍を楽しみにしている。また、一緒にバスケして飲みましょう。