40代ロスジェネの明るいブログ

2020年1月11日からリスタート

感想文21-02:データ分析の力 因果関係に迫る思考法

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メインの仕事ではやってないけれど、サブの仕事ではちょいちょいデータ分析もどきをしている。メディアに登場する自称評論家が発する、データ分析に基づかない言説を私はほとんど信用していないばかりか、害悪ですらあると考えている。

私を含めて、多くの人は数字に騙されやすいし、相関関係と因果関係を取り違える。信じたいものしか信じないし、信じたくないものは例えそれを見ても認識しない。

情報通信革命がもたらす一つの大きな変化は、データ分析の力が特定の専門職に就いている方だけではなく、これまで以上に多岐にわたる職種において要求されるようになってきていることです。(p.3)

そのとおりである一方で、データ分析する能力だけでなく、そのデータ分析の方法や結果の解釈まで、きちんと理解し、実務で役立てようとすると、それなりのトレーニングが必要となる。

本書では(中略)因果関係の解明に焦点を当てたデータ分析入門を展開していきます。なぜ因果関係に焦点を当てるかというと、因果関係を見極めることは、ビジネスや政策における様々な現場で実務家にとって非常に重要となるためです。(p.9)

真に因果関係を調べようとするのは非常に難しい。時間もお金も手間もかかることが多い。特に自然科学とは異なり、実験できない場合は、限定された条件でデータ分析するので、そこから導き出される答えは相対的に弱くなってしまう。とはいえ、そこが計量経済学の分野で面白いポイントであり、知恵の出しどころであり、魅力でもある。

オバマ前大統領や評議委員は「単に数字やデータを示すこと=エビデンス」ではないという考え方を非常に大切にしています。その理由は、Xという政策がYという結果にどう影響したかという因果関係を科学的に示すデータ分析こそが、政策形成に必要であるためです。(p.207)

EBPMが日本でも行われるようになってきたが、どこまでまともに実証研究がなされ、その対象となったデータが公開されるのかについて、現段階ではかなり訝しんでいる。都合の悪いデータも研究結果も公開されないのではないか、とこれまでの「お上」の行動原理からそう考えてしまう。

本書は非常にわかりやすく読みやすいが初学者向けである。入り口には丁度いいが、ある程度知識のある方はもうちょっと難易度の高い本をお読みになるのが良いし、そのリストが本書では紹介されている。

RCTなどの科学的な方法で因果関係を示すことの実務的な利点は、イデオロギー論争などを超えた、データ分析の結果に基づく政策議論ができることだと考えられます。(p.234)

相関関係と因果関係を取り違えて官僚を圧迫し、論文著者に諭されたとされる某議員は、これを気にきちんと勉強されてはどうかと思うところだ。

未だに日本ではデータ分析の結果に基づく政策議論がなされているとは言い難い状況だ。私の知りうる限り、データ分析のトレーニングを受けた公務員も政治家も極めて少ない。そしてまた、批判すべきメディア側にも同様にデータ分析の意味を理解している人材は乏しく、感情を揺さぶり、煽り焚きつける情報発信が是とされている。

しかしながら、これは「好機」でもある。データ分析の力は強力であり、今の社会に違和感を覚える人は、是非、トレーニングを受け、自らを鍛え、それぞれの業界や分野で実務能力を発揮いただくのが近道であろう。たぶん、すぐには評価されないけれど、長期的にはその分野で重要なポジションを確立できると信じている。