40代ロスジェネの明るいブログ

2020年1月11日からリスタート

感想文21-07:ゴースト

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下町ロケット(感想文11-59)ガウディ計画(感想文17-04)の続編に当たる本書。

図書館をブラブラしていたら見つけて、さらにその続編に当たるヤタガラスと一緒に楽しく読ませてもらった。

下町ロケットのドラマを見ていたので、佃航平は阿部寛さんで、山崎光彦は安田顕さんで再生される。ただ、ゴーストもヤタガラスもドラマ化していたらしいが、そちらは見てないし、ドラマの存在も知らなかった。ちょっと見たかったと後悔。

池井戸潤さんの小説を読むと改めて働くことについて考えさせられる

仕事で精一杯がんばっても報われないことは多い。雇用者たる組織は被雇用者である私をいつもいつまでも庇護してくれるわけではない。経営者の判断が、特定の労働者にとって有利になれば不利にも働く。昨今のコロナ禍で損した人もいれば得した人もいるだろう。

激しく流動するビジネスの世界で翻弄されるのは、組織もとより、個人は言わずもがなだ。働くはしがみつくにも、漕ぎ出すにも、流されるにも似ている。些細な判断ミスが命取りになるし、タイミングが早まっても遅れてしまっても致命傷になりうる。

右肩上がりに成長する時代はとうに終わり、組織を自らに同一視できない。生産性を上げろと檄が飛び、ワークライフバランスだとブレーキがかかる。

佃製作所経理部長である殿村のセリフを引用しよう。

「意に沿わない仕事を命じられ、理不尽に罵られ、嫌われて、疎ましがられても、やめることのできないサラリーマンだ。経済的な安定と引き替えに、心の安定や人生の価値を犠牲にして戦ってるんだよ。オレはそうやって生きてきた。ひたすら我慢して生きてきた。でもな、子どもも大きくなってきた。もう我儘のひとつぐらい言っていいと思う」(p.245)

我慢と我儘の字面が似ていることに初めて気づいた。殿村は本作で大きな決断をするが、私もいつかどこかで大きな決断に迫られるかもしれない。

不惑の40歳を過ぎたが、惑ってばかりだ。しかし、自分の正しさを信じ疑わなくなるのは、老いの証拠だ。惑い、迷い、躊躇い、悩み、そしてクリアでない言説を、おずおずと控えめのトーンで語るような人間でいたい。それはそれで迷惑な人間かもしれないが。