40代ロスジェネの明るいブログ

2020年1月11日からリスタート

感想文08-44:数学ガール

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※2008年8月26日のYahoo!ブログを再掲

 

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文句なく面白かった。現時点で今年一番面白い。

自らも主人公になった気持ちで、ミルカさんやテトラちゃんと一緒に数学の世界を旅する。違う国を渡り歩き、最終的に目的地に到達する。

その旅は驚きと興奮の連続だ。全く関係のない数式が、突如変貌する。自分の手で解いていったにも関わらず、にわかに信じがたい。身の毛もよだつ、総毛立つ。数式を追っているだけなのに、全身の感覚が鋭敏になる。

こういう感覚をうまく伝えるのは難しい。見たことないし信じてもいないけれど、幽霊のような見てはいけない何かを見てしまったような、そんな感じ。たぶん。

フィボナッチ数列の一般項を求める旅は印象的だった。

フィボナッチ数列とは、(1、1、2、3、5、8・・・)と続く数列のこと。この規則性は、2つ前と1つ前の数字を足すってこと。なので8の次は13。

そしてフィボナッチ数列の母関数を考える。漸化式を用いて、整理する。そして母関数から一般項を求める。この一連の旅はエレガントな美が詰まっている。

残念ながらブログは数式を書くのに全く向いていないので、表現できないんだけれど、この喜びを感じたい人は是非読んで欲しい。後悔はしない。

そして、もう一つ印象に残っているのは、バーゼル問題だ。あまりに有名なので詳細を書いても仕方ないけれど、ぼくは実際にバーゼル問題を解く方法(の一つ)を初めて知った。以前読んだ「素数に憑かれた人たち-リーマン予想への挑戦-」でもバーゼル問題を取り上げていたけれど、そこでは結論だけしか載っていなかった。

バーゼル問題とは、Σ(1/n^2)=1/1^2+1/2^2+1/3^2・・・がどんな数に収束するか、っていう問題。要するに、1/1+1/4+1/9+1/16・・・。

sinXの因数分解と母関数を利用して、導かれる見事な解法。数学の大天才レオンハルト・オイラーが若干28歳で解いたとされる。

ぼくもバーゼル問題の部分を電車内で読んでいて、思わずテトラちゃんと一緒に大声で驚くところだった。これは単純な驚きではない。ぞっとする。悪寒に近い。夜眠れなくなる。分かってスッキリするようなシロモノでは断じてない。

答えを言っちゃうと詰まらないので興味のある人は、ご自身で調べてみて下さい。

さて、本書は単純な数学的興奮だけが描かれているのではない。主人公と2人の女性(数学的才能に満ちた同級生のミルカさんと数学的好奇心に満ちた1年後輩のテトラちゃん)との淡い恋も描かれている。

本書は、数学的興奮とキャラ萌えのマッチングに成功したという点で大変希有な一冊となっている。ミルカさんに教わり、テトラちゃんに教え、そして読者は学ぶ。よくできている。

ぼくは高校時代に数学に目覚めた。でも目覚めたのは、高3の夏だった。急激にテストの結果が良くなっていった。そして受験が終わり、大学生になると、同じくらい急激に数学的能力は衰えていった。

今、改めて数学を学んでみたいと思う。最先端の新しい発見はできなくとも、様々な数学的武器を駆使し、過去の偉大な数学者の思考をトレースし、怖いほど美しい世界を少しでも味わってみたい。

そういう気持ちにさせる本だった。

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(感想文の感想など)

今、改めて数学を勉強したい気分になっている。数学ほど面白い学問はない。

数学で糊口をしのぐ才覚はあいにく持ち合わせていなかったけれど、趣味を数学にするのはボケ防止にもなるだろうか。