40代ロスジェネの明るいブログ

2020年1月11日からリスタート

感想文10-13:ウイスキーの科学 

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※2010年2月22日のYahoo!ブログを再掲

 

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小雪が登場するあのCMによりウイスキーの人気が上がってきている。

確かに、仕事に疲れた夜に、軽くレモンを搾ったハイボールを美女が提供してくれるというのは、世の男性にとってたまらないシチュエーションの一つだ。

大学生時代にバイトしていたバーでは、よくお客さんからウイスキーを飲ませてもらっていた。IWハーパー、アーリータイムス、ジムビーム、フォアローゼス、メーカーズマーク、ブラントンなどなど、そこでいろんなウイスキーの味を知った。たいていは酔っぱらってしまうので、ウイスキーの差を分かる前に記憶がぼやけてしまうんだけれど。

振り返れば、大学生時代に一番多く飲んだ酒はウイスキーだと思う。ウイスキーを飲むと、若い頃を思い出してしまう。ちょっぴり青春の味だったりするんだ。

さて、本書は、ブルーバックスだ。言わずと知れた科学専門の新書。特にウイスキーの熟成について科学的な解説が充実している珍しい本である。ウイスキーは樽の中で長い間、熟成されるお酒だ。熟成によりアルコールはウイスキーへと育っていく。

また、本書では、お酒一般の基本知識やウイスキーの歴史についても丁寧に書かれている。

せっかくなので本書を読んで知ったことをメモしておこう。

  • ウイスキーの語源が「生命の水」ということは知っていた。確かマスターキートンにそんな話があった。知らなかったのは、ラテン語で、アクア・ヴィテ(aqua vitae)といい、スカンジナビア諸国で愛飲されている「アクアヴィット」は、それが語源とのこと。そうだったのか。その昔、スウェーデン土産でアクアヴィットを飲んだ。早い話が、ジャガイモが原料の焼酎だと説明された。透明ですっきりとしていて、なかなか飲み慣れないのでキツかったのを覚えている。
  • ウイスキー蒸留酒であり、8世紀頃の錬金術による技術革新によって、蒸留酒を多く造ることができるようになった。錬金術は、当時の最先端科学だったのだ。
  • 18世紀初頭に、イングランド政府はスコットランドに酒税の大幅増税を適用した。結果、収税官吏の目の届かないハイランド地方の山奥で密造を始めた。密造酒はすぐには売りさばけないので、たまたまあったシェリー酒の空樽にウイスキーを入れて保存しておいた。よし、そろそろ売れるかなという頃になって、蓋を開けて飲んでみると、熟成し、琥珀色になって、芳醇な香りを放つ液体に変化していた。これが現代のウイスキーへとつながっていく。
  • 『大麦麦芽を原料にアランビック型の単式蒸溜器で造ったウイスキーを「モルトウイスキー」という。一方、トウモロコシなどの穀類を原料にして連続式蒸溜機で造ったウイスキーを「グレーンウイスキー」という。モルトウイスキーは「ラウドスピリッツ(主張する酒)」、グレーンウイスキーは「サイレントスピリッツ(沈黙の酒)」といわれている。』ふーむ。ラウドとサイレントを混ぜて、ブレンデッドにして、おいしいウイスキーが造られる。混ぜ物だからダメということではなく、むしろそれをどう混ぜるかが、ブレンダーの腕(舌)の見せ所なのだ。
  • 酸素の有無によって酵母の糖代謝が変わる。早い話が、糖と酸素があると酵母はエネルギーを造り出し、増殖する。糖があって酸素がないと、糖をエタノールに変換して、増殖しない。この現象を発見したのが、あの有名な化学者パスツール(1822~95)なのだ。『パスツールは、酸素が多い状態で増殖を盛んに行うことを「呼吸」、酸素のない状態でエタノールをつくるのに励むことを「発酵」と呼んだ。』とのこと。さすがパスツール
  • 『液体を注いでも氷が浮かず、グラスの底にずっしりと落ち着いたままでいる、つまり液体が「氷の上にある(オン・ザ・ロック)」状態というのは、ウイスキーを飲むとき以外はあまりお目にかかれない光景である。』確かに。北極でもオレンジジュースでも、氷は浮いている。著者のいうように、ウイスキーのアンダー・ザ・ロックは美しくない。でも本書で指摘されるまで気付かなかった。

ウイスキーは、多くの知恵が結集し、そして時間が育てた酒だ。樽で眠る長い年月は、ウイスキーに品格を与えてくれる。これからはゆっくりとウイスキーを味わってみたくなった。飲む側にもそれ相応の品格を求められているような気がするからだ。

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(感想文の感想など)

先日、久しぶりにバーでウイスキーを飲んだ。スコッチウイスキーの中でもアイラ島で造られる「アイラウイスキー」であるラフロイグ(LAPHROAIG) だった。

アイラウイスキーらしくスモーキーなフレイヴァーがテロワールを感じさせる。(こんな調子こいた文章を戯れに書いてみるのはこの歳になるとさすがに面映ゆい)

ウイスキーオン・ザ・ロックの物理現象はこの感想文を読み返すまですっかり忘れていた。次回はじっくりとオン・ザ・ロックアイラ島に思いを馳せて、味わってみよう。