40代ロスジェネの明るいブログ

2020年1月11日からリスタート

感想文22-05:9割の社会問題はビジネスで解決できる

 

世の中にあるたくさんの社会問題に心を痛めている。そんなにナイーブな性格ではないのだが、自分の無力さを痛感している。今の仕事が世のため、人のために役立つよう、苦心しているが、硬直的な制度と大きな組織に挟まれ、クリティカルに世の中にインパクトを残すような成果に至った経験はない。

社会問題にビジネスで挑戦した事例として思い浮かべるのは、グラミンフォン(感想文09-50)蚊帳のオリセットネット(感想文17-50)だろうか。どちらも国際的に大きくかつ困難な社会問題である、途上国の貧困、感染症の解決に向けた取り組みであり、しかもビジネスだった。

えてして、金儲けとして悪のように捉えられている節すらあるビジネス。しかし、ビジネスは極めて強力で、そして自由度が高い。ビジネスによって社会問題が解決し、誰かを笑顔にできるのであれば、そんな素晴らしいことはない。

本書の主張ははっきりしている。ほとんどの社会問題はビジネスで解決できると言うのだ。

borderlessグループは、ビジネスによって様々な社会問題を解決することに挑戦しています。2007年に創業し2020年度の年商は55億円、世界15か国で約1500人が働いています(2021年4月現在)。(p.12)

ソーシャルビジネスについて以前から関心があったにも関わらず、恥ずかしながら、borderlessグループの存在を本書で初めて知った。1500人で年商55億円。単純計算すると一人当たり約367万円。確かにビジネスの規模は大きくはない。それでもビジネスとして成立している。

ソーシャルビジネスが取り扱うのは、「儲からない」とマーケットから放置されている社会問題です。(p.34)

大企業はもちろん、多くのビジネスパーソンが挑戦しない領域を開拓していく。そして逆説的ではあるけれど、ビジネスの力で開拓していく。つまり、ビジネスの拡張とも言える。

起業家たちは、「自立したい」と思っていても、「孤立したい」とは思っていません。経営上の問題が起きた時に、いつでも相談できる仲間がいる、そして自分ごととして真剣に考えてくれ、時には叱ってもくれる、切磋琢磨し合える仲間がいることの心理的セーフティネットはとても大きいのです。(p.66)

誰も挑戦していない小さなマーケットを開拓していくのは、とても大変で、似たような状況にある経営者たちが悩みを共有し、刺激し合い、切磋琢磨する。

MM会議と呼ばれる、社長4人一組でチームを組み、経営戦略や社長独自の課題など共有し、解決し合いながらソーシャルインパクトの拡大のために月1回集う会議がある。

これは良い仕組みだなと感心し、私も昨年から管理職になったのを機に、人事担当者に提案し、新任管理職が悩みを共有する場を公式に設置することに成功した。オンラインではあるが、月に1度集まり、ブレイクアウトルームで少人数グループをいくつかつくり、悩みを共有する。ややもすると孤立しがちな管理職、しかも新任だと悩みも多く深く重く、こういう場があるとありがたいと言われた。

borderlessグループの仕組みも興味深く、

特にユニークだと言われるのが、

・出資額を超える株主配当は一切しない

・経営者の報酬は一番給与の低い社員の7倍以内

の2つです。(p.72)

となっていて、一般的なスタートアップとは通底する思想が全く異なっている。リスクをしょったのだから、それだけ大儲けするみたいな発想ではない。

本書では実際に具体的かつ実践的なソーシャルビジネス立ち上げのノウハウやソーシャルビジネスを進めていく上での金科玉条が載っている。本書を読んで、刺激を受け、一気に行動を起こす若く意欲のある方もいらっしゃるだろう。

僕は2~3人程度の少人数で運営するマイクロ起業はすごく面白いし、可能性を秘めているのではないかと思っています。(p.342)

本書の存在にたどり着けたことが私にとっては大きい。今すぐに起業するのは難しいけれど、これからの人生でマイクロ起業という選択肢を念頭に置いておこう。

人生は一度しかない。自己資本を増やすためではなく、ソーシャルビジネスを通じて、世のため、人のために人生を費やしたい。