40代ロスジェネの明るいブログ

2020年1月11日からリスタート

感想文22-23:乳と卵

 

川上未映子さんによる小説。「ちちとらん」である。「ちちとたまご」でも「にゅうとらん」でも「にゅうとたまご」でもなく、「ちちとらん」である。振り仮名がついているので間違いない。英訳するとBreast and Ovumとなろう。Milk and Eggではない。

ウィキペディアによると『2008年に芥川賞を受賞<中略>樋口一葉の影響を色濃く残す、改行なしで読点によって区切られ、延々と続く文体が特徴的である』とある。なるほど。確かに「、」で区切られて、大阪弁の文章が続く。あいにく私は樋口一葉の作品を読んでないので、その影響の程度はよくわからないのだけれど。

本作品は3人の女性が登場する。豊胸手術をするために上京した巻子(40歳前後)、その娘である緑子(中学生くらい)が、巻子の妹である夏子が暮らす都内の家にやってくる。

巻子は豊胸手術のために上京する。私の人生に全く接点のない術式である。そういえばhttps://sky-and-heart.hatenablog.com/entry/2022/06/25/082556火花(感想文22-12)でも出てきたのだ。豊胸手術に文学的要素があるとは。あるいは文学的要素を見出すとは。いや、火花が本作品の影響を受けているのかもしれない。

緑子の日記が印象的だ。

あたしは勝手にお腹が減ったり、勝手に生理になったりするようなこんな体があって、その中に閉じ込められているって感じる。(p.32)

生まれるまえから生むをもってる。ほんで、これは、本のなかに書いてあるだけのことじゃなくて、このあたしのお腹の中にじっさいにほんまに、今、起こってあることやと、いうことを思うと、生まれるまえの生まれるもんが、生まれるまえのなかにあって、かきむしりたい、むさくさにぶち破りたいきぶんになる、なんやねんなこれは。(p.70)

男である私にはわかりにくい表現だが、女性は共感するポイントなのだろうか。子供をもうけるために、出生の段階から、体に卵子形成機能を授けられており、生理になることが運命づけられている。生と死みたいに避けられない生物としての仕組み。なるほど、文学的ではある。

続編的な位置づけである「夏物語」も手元にある。両方とも会社の方にお借りしている。感想書くの難しいな。生物学を学んでも、医学を学んでも、文学的に適切な解釈に至れる気配がない。もうちょっと成熟したらわかるようになるのかしら。