40代ロスジェネの明るいブログ

2020年1月11日からリスタート

感想文12-54:ルポ賃金差別

※2012年9月28日のYahoo!ブログを再掲

 

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タイトルだけで読んでみた本。賃金差別はある。確実にある。しかも能力による違いではなく、単なる雇用形態の違いによって差別がある。定年で雇用される人は、クビにならないから仕事は適当にするが、給与は高い。契約で雇用される人は、いつクビにされるか分からないから必死で働くが、給与は低い。リスクに対してプレミアムが付与されていない。何をどう考えてもおかしいのに、異なる雇用形態と給与の人が一緒に仕事をしている。そしてそれに対する不満は職場に底流している。

とはいえ、本書はあんまり印象に残っていない(読後から感想文作成までのタイムラグは2ヶ月くらいもあります…)。現実に賃金差別は平然と行われていて、同一価値労働同一賃金というのはまったく浸透していない。他方で、パートや派遣という立場を好ましく思っている人も決して少なくない。過剰な責任からは距離を置けるからだ。だからパートや派遣といった雇用形態が悪というわけでもない。

確かに賃金差別は良くない。こういうことは誰でも分かるし、誰でも言える。どうすれば解消できるのか、その点がどうも曖昧で政府批判的なことしか書かれていないように感じた。もうちょっと踏み込んでほしいなと。ルポってタイトルの割にはあんまりルポって感じがするほど肉薄してないし(わたしの読解力のせいかもしれませんが…)。

ちょっくら印象的な箇所を挙げておこう。

京都大学で非常勤職員が5年で雇い止めされたことについて裁判になった事例がある。首になった非常勤職員が京都大学構内でくびくびカフェの経営を始めたりもしている。さすが京大。いかにもらしい感じ。とはいえ、昨年の9月で店じまいしたらしい。しまった、行ってみたかった。

面白いのが判決文。

この判決文は、京大卒という裁判官から与えられた「君も立派な京大卒なんだから、まともな仕事に就いて家族を養えるようになりなさい」という「男同士」のメッセージにも見える。(中略)「長いこと裁判してきてこんなオヤジの説教のようなことを言われて終わるとは」なのである。

同じ京大卒のマッチョな裁判官からお説教される。面倒くさいことこの上ない。京大のこの裁判とか雇い止めについてもうちょっと真正面から取り上げた本はないのだろうか。

こういう事例は大学や公的機関では山ほどあるだろう。1年契約で最長5年。優秀者には定年雇用への道もあり、みたいな。かくいうぼくも20代後半で転職して、有期雇用だった。別段優秀だったわけでもないけれど、定年雇用になったけれど、どうも釈然としない。

同じ時期に入社した女性は、ついこの間、会社を去り、田舎に帰った。次の仕事も決まっていなかった。どう声をかければ良いのかわからない。

それでも有期雇用でも良いからと仕事を求める人たちは多い。その5年間で何かスキルを身につけ、ステップ・アップするなんてことが現実的には不可能に近いってことがあったとしてもだ。

ぐらぐらと煮えたぎった不平不満が溜まりつつある。いつどこで噴出してもおかしくない。もう全員、有期雇用にして、流動性を高めてしまえば良いんじゃないって思う。ぼくも今さら有期雇用に戻ったって別に何も怖くないしなぁ。

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(感想文の感想など)

その後、2013年4月1日の労働契約法の改正により無期転換ルールが導入される。大学での雇い止め問題はまだあるのだろうか。国が大学等への投資をしなくなったのが根本原因であり、結果、教育と研究が低下し、雇い止めが発生する。

労働問題は混迷を極めている。無期転換ルールは労働者に有利に思えるが、労働市場流動性を下げ、仕事のミスマッチを生み出す(のではないか *この方面の計量経済学の論文を読んだことがない)。

管理職となって労働について考え方が変わりつつある。管理職としての本を改めて読んでみたい。徒手空拳で何とかしようとするのに限界を感じている。