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これから大事な学問は、「法」と「経済学」であると確信している。物理、化学、生物ももちろん大事。世の理(ことわり)だからね。それでも自然科学以外に何を学ぶかといえば、法と経済学が最も実用的で、社会人としてちゃんと基礎を知っておくことが大事だと思う。
振り返ると、雇用問題についてこれまでほとんど考えてこなかった。過去の感想文を見てもルポ賃金差別(感想文12-54)くらいだろうか。こちらもあくまでルポなので、法も経済学もどちらの視点も足りてない。
そこで本書。そもそもタイトルに「法と経済」と書かれている本が少ない。実は修士論文でやや雇用問題について関わってもいるので、行き着いたんだ。
気になる箇所を挙げてみよう。
非正社員は、なぜ増えてきたのであろうか。この図で示される非正社員の継続的な増加は、規制緩和やいわゆる「新自由主義的な経済運営」と呼ばれるものが真の原因ではなく、継続的に進行している経済環境の変化が原因であることを示唆している。
ふむふむ。具体的に何かというと、
非正社員の増加は非正規で働きたい人が増えたという供給(労働者)側の要因とIT化による業務の切り分けの容易化や将来の不確実性の増大への対応として人件費の流動化が進んだという需要(企業)側の要因の双方があるのである。
需要と供給、まさに経済学。頭のなかでさらっと需給曲線が描けるくらいには勉強した。働ける人口が増え、そんなに高スキルでない仕事も増え、結果として非正社員が増えた。法律が変わったからとかそういうことが背景にあるのではない。
いかにして、非正社員の若年者の生産性を上げるための手を国家が政策として打ち出すかが重要であるということが明らかとなろう。
若いうちにトレーニングして、スキルを身につけないと、後々困ることになる。非正社員はトレーニングを受ける機会がなく、しかも期限が切れると放り出されるかもしれない。『柔軟で技能訓練の効果も上がりやすい若年期に、そのチャンスを逃してしまうと、もう挽回できないおそれもある』のだ。スキルのない中年を救うよりも、若年期にいかにスキルを身につけさせるかが大事だ。
結局のところ労働市場における「情報の非対称性」と一度雇った労働者を簡単には解雇できないことが新卒一括採用を生み出していると言える。
ふむふむ。シューカツ! (感想文09-28)を思い出す。新卒採用が「ゴールデンチケット化」しているのは、情報の非対称性と解雇規制が影響している。ちなみに情報の非対称性も経済学用語だ。ほんとに解雇規制なんとかならないの。
正社員の雇用保障を弱めたり、有期労働契約の期間規制を緩和したりするなどのフレキシブルな雇用形態の可能性を認めることについては、労働者の保護を低下させるという批判もあるが、ワークシェアリングを進め、正社員の働き過ぎを回避するための方策となるという重要な効果があることにも留意しておく必要がある。
なるほど。結局、会社は労働者をなかなかクビにできないから、新しい雇用に対して尻込みする。結果、人手が足りず、オールジャパンでブラック企業状態になってしまう。非正社員はスキルを身につけられず不安定で、正社員は安定だけれど働き過ぎ。このおかしな現状はまさに雇用規制が根幹にある。ほんとに何とかしてよ。
経済学は、このように現実に生起する現象をよく観察した後で、一歩引いて問題の構造を把握して対策を考えようとするものである。
うんうん。雇用規制は労働者を守るものと考えられて導入されたけれど、実際は労働者を苦しめている。そのことを実証的に示すのは経済学の役割で、法と経済学は双方がうまく機能することで、より良い社会システムが構築されていくと考えられる。
なお、本書はちょっとした小説みたいなものが挿入されている。展開は昼ドラ的でドロドロだ。人生の半分以上は働くので、会社がドラマの舞台になることはよくある。それって、要するに雇用のことだ。様々な雇用形態がある中で、きっとドラマも変わっていくのだろう。最近、全く見ていないけれど。
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(感想文の感想など)
『雇用規制は労働者を守るものと考えられて導入されたけれど、実際は労働者を苦しめている。そのことを実証的に示すのは経済学の役割で、法と経済学は双方がうまく機能することで、より良い社会システムが構築されていく
自分で書いたけれど、良いこと書いているな。もうちょっとこの分野で深く考えられるようになりたい。実証主義。もっと浸透して欲しいし、させたい。
EBPM(Evidence Based Policy Making)を政府は推奨しているけれど、実態は果たしてどうか。その数学が戦略を決める(感想文10-91)でも書いたようにPolicy Based Evidence Makingになってやしないか。
実証を政府に任せるのではなく、実証したデータをオープンにし、その実証を検証できるようにするのが重要だな。