昨年、11月にスペインに出張した。しかもバルセロナ。スペインの中でバルセロナは特別で、独立運動まであるというのは以前から知っていた。ただ、どういう歴史的経緯や考え方で独立しようとしているのかまであいにく存じ上げない。
せっかくバルセロナに行くのだからということで、読んでみたのが本書。海外出張で始めていく国や地域の場合にこの「○○を知るための〇章」シリーズを読んでみるのが恒例になっている。
これまで、イスラエル(感想文17-14)、フィンランド(感想文18-02)、フィリピン(感想文18-37)を読んできた。これで通算4冊目ということになる。
そして海外渡航については、中国、韓国、台湾、シンガポール、マレーシア、フィリピン、インド、イスラエル、ドイツ、スイス、フランス、イタリア、イギリス、フィンランド、ケニア、アメリカ、カナダ、エクアドルに加えて、経由地であるドバイとスペインが加わり、ついに21か国になる。
人生のささやかな目標は30か国への渡航なので、あと9か国だがここからがなかなか厳しい感じでもある。意外と東南アジアと南半球で行ってない国が多いから、達成できそうな気がしないでもない。
では本書を読んで初めて知ったことを引用しつつ挙げておこう。
カタルーニャは、強烈な個性を放っている地域である。独自の国家だった経緯を持ち、カタルーニャ語という独自の言語を持ち、しかもその言語が強い存在感を持つ。また、スペインでは珍しい工業的な地域で、カタルーニャだけでスペインのGDPの20%を占めている。そして、カタルーニャを一つの「ネーション(民族=国民=国)」だと主張する比較的強い地域ナショナリズムが存在し、近年では、独立を主張する人の割合が5割を超えるとも言われている。(3)
カタルーニャ語という独自の言語があり、スペインのGDPの20%を占める経済力があり、半数は独立したがっている。ただ、実際にバルセロナに行ったところ、確かにカタルーニャの旗を街中で見かけるけれど、声高に独立を叫んでいるような集団を見かけることはなかったし、半独立運動を見かけたわけでもなかった。街中はいたって平穏で平和だった。パリとかいっつも炎上しているイメージがあるのとは対照的。
バルサとレアル・マドリードの試合が、驚くほど盛り上がる背景には、カタルーニャ主義を背負うバルサとスペイン主義を背負うレアル・マドリードの戦いという、二つのナショナリズムの代理戦争の側面があるのだ。(5)
へぇ。そういう視点で見たことない。そういうものなのか。アオアシでもカタルーニャについての言及はなかったかな。単純なサッカー勝負ってだけではないのだ。
カタルーニャ自治州は、デンマークの人口をはるかに超える、およそ750万人を擁しており、その経済規模も170億ユーロで、人口1000万のポルトガルを超えている。(38)
カタルーニャ自治州だけで、人口ではデンマークよりも多く、経済規模はポルトガルよりも大きい。思った以上に巨大であり、ヨーロッパで十分に存在感を示せるネーションと言える。
国際機関では、カタルーニャ語は一つの国家の公用語として認知されている。それは、フランスとスペインにはさまれたアンドーラ公国の公用語だからで、人口わずか7万人のこの国が、1993年に独立国家となり、国際連合に加盟したためである。(38)
本書ではアンドーラ公国となっているけれど、日本の外務省的にはアンドラ公国で、基礎データを見ると確かに公用語がカタルーニャ語だ。そうなのか、初めて知った。
ここからは実際にバルセロナ出張で得た知見を書いておきたい。
- 空が青い。空の青さが日本と違う。
- ふらっと立ち寄ったシーフードレストランで日本語メニューはないけど、韓国語メニューはある。日本の凋落ぶりを思い知らされる。
- バルセロナの通勤ラッシュを経験。スーツ姿は私と同僚だけ。西洋から持ち込んだはずのスーツ文化はもうヨーロッパでは廃れてしまっているのか。
- サグラダ・ファミリアでは日本人の外尾悦郎氏が主任彫刻家を務めており、かなりの貢献をしていると初めて知る。
- アヒージョの残りの油をパエリアと混ぜ合わせて食べる。最高に旨い。アヒージョとパエリアの悪魔合体。お行儀が悪いのは申し訳ない。
あいにくジョアン・ミロやピカソ、ダリといった有名な美術館にはスケジュールの都合上(普通に仕事が詰まっていた)、行けず仕舞いだった。バルセロナをいつか再び訪れる日は来るのだろうか。
青い空と(悪魔合体させた)パエリアが恋しい。