ようやく神戸での単身赴任生活が終了し、この春から関東に戻ってくることができた。家族は(おそらく)喜んでいると思う。
新しい部署は量子コンピュータに関連するということで、これまでのHPC(ハイパフォーマンス・コンピューティング=スパコン)とはまた別のコンピュータについて勉強する必要がある。
量子コンピュータが本当にわかる!(感想文22-02)を読んでもわかったようなわからないような感じがするので、もうちょっと踏み込んで勉強したい。
さて、本書の著者は真山仁さん。小説家だ。私も過去にプライド(感想文13-01)と当確師(感想文19-11)を読んだことがある。小説家の真山さんが量子物理学者である古澤先生にほれ込み、こうして一冊にまとめている。そして、古澤先生をモデルにした人物が登場するタングルという小説まで書き上げている。タングルも読み終えているので感想文はまた改めて書きたい。
実のところ、古澤先生とは本書を読む前に面識がある。ただ、本書の存在を知らず、懇親会の席だったので、お酒が入っていたこともあって、そんなにすごい先生だとは知らなかったし、分からなかった。仕事柄すごい先生と会う機会が多いので、私自身の感覚がマヒしてしまっている可能性は十分にある。
さて、感想文はどうにも書きにくい。仕事上、今後も古澤先生との付き合いはあるし、本書の内容が一般向けであるために、かなり平易に書かれていることも影響している。
他方で、量子コンピュータの実現が地球の滅亡を救うテクノロジーであるという主張になるほどと思わせる。スパコン業界の力がまだまだ強い日本で主張するのは勇気が要ることであろう。
題材に対して、個人的に興味がなくても、必ず魅力は存在する。あるいは、自分に響かなくても、感動する人がいるのであれば、それはどういう人かを分析し、その人に届くためのアピール法を考える。<中略>だから本書で述べてきたことは、「天才特有の偉大な発想」ではなく、臨めば誰にでもできる発想の転換なのだ。(188)
本書は天才論でもある。天才になるためには発想の転換が重要というのは、凡人たる私に響く。まあ、天才になりたいってわけではないけれど。陰で天才らしいよって噂されたいくらいの凡人的承認欲求は持ち合わせている。
量子コンピュータについては勉強中であり、まだまだ説明できるほど理解が及んでいない。そもそも量子力学が人間の想像を超えてしまっている。それでも理解を深めていき、研究の一助になれば幸いである。
この歳になって新しいことを学べる機会があるのは有難いことだ。気持ちも新たに新年度をスタートしたい。