タイトルに惹かれて購入した文庫本。調べてみると2017年にドラマ化してたらしい。
著者は津村記久子さん。
ウィキペディアには
2000年、新卒で入社した会社で上司からパワーハラスメントを受け、10か月で退社。その後、職業訓練校などを経て2001年に転職。
なかなか身につまされる。私自身はひどいパワハラを受けたことはないけれど、仕事と人間関係のストレスで帯状疱疹に2回罹ったことがある。
本書は2015年に刊行され、
36歳中肉中背の女である私(382)
との記載があり、後になって主人公の女性は、著者自身がモデルになっており、さらには私とほぼ同年代ということがわかった。
本書では、「みはりのしごと」、「バスのアナウンスのしごと」、「おかきの袋のしごと」、「路地を訪ねるしごと」、「大きな森の小屋での簡単なしごと」とどれもユニークな仕事を主人公は担当することになるが、それぞれでちょっとした事件や転機や不思議な出来事が起こる。仕事に慣れ、軌道に乗るが、結局はどの仕事も長続きせず、仕事を変えていく。と同時に主人公の心も変わっていく。
私たちがやっていた仕事だけではなく、どの人にも、信じた仕事から逃げ出したくなって、道からずり落ちてしまうことがあるのかもしれない、と今は思う。(421)
基準がわからないけれど、私が所属する会社はハラスメントが横行しているとか、過度なプレッシャーがあるわけではない(部署による)と信じているけれど、それでも結構な数の職員が病み、辞めていく。
タイトルに反して、この世にたやすい(と感じる)仕事はあると私は思うけれど、あくまで期間限定で、上手くいかない時期が必ずくる。業績が絶好調で飛ぶ鳥を落とす勢いの会社であっても、栄枯盛衰で、しんどい時期は必ずやってくる。そこをどう乗り切るか、はたまた逃げ出してしまうか分岐点になる。でも自分自身がコントロールできることとできないこともあってままならない。
そもそもなぜ仕事をするのだろうか。私が働くのは残すところあと20~25年くらい。あれ?まだ折り返し地点過ぎていないのか。人生のかなりの時間を「働くこと」に費やしている。
未だに働くことの意味をきちんと見出せていない。いやいやもちろん、社会人として用意しておくべき優等生的な回答はいつでもご披露できる。でも深く考えていくと、たくさんの疑問が浮かび上がってくる。
この感想文らしきものを書いているのはお盆の時期。珍しく平穏な時間を過ごしていると、余計なことを考えてしまう。ずっと蓋をし、見て見ぬふりをして、正気を保ってきた。なぜ働かなくてはいけないのか、なぜ人生の大半を働くことに費やしているのか。働くこととはいったい何なのか。素朴な疑問が蓋をぐらぐらがたつかせ、私の心をざわざわさせる。
そっと蓋に重石を載せ、心穏やかに仕事をする。蓋の隙間からこちらを覗く眼に視線を合わせてはいけない。この世にたやすい人生はないのだから。