※2008年8月1日のYahoo!ブログを再掲
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本書は、アメリカドラマ「NUMBERS」をベースにして、実際の犯罪捜査等にどのように数学が活用されているかを紹介している。
行列、ニューラルネットワーク、DNAフィンガープリンティング、ベイズ推定、コードとデコードなど、ちょっぴり馴染みのある数学的な話がてんこ盛りで、その種のことに興味のある人なら楽しく読めること間違いなし。
っていうか、NUMBERSを見てみたくなった。DVDはまだ出ていないらしいけれど、いずれ発売されるでしょう。その日のためにDVDプレイヤーを買わないとね。
さて、気になった部分について感想なり、コメントなりを書いてみよう。
やっぱりDNA鑑定と指紋の話かな。
犯行現場に遺留した犯人のものと思われる生体物質(毛髪、体液など)のDNAを解析して、容疑者から採取したDNAと照合する。容疑者と一致すれば、そいつが犯人でほぼ間違いない。
他方で、容疑者がいない、あるいは一致しなかった場合。犯罪捜査目的のDNAデータベースがアメリカでは連邦レベルで構築されている。そのデータベースと照合し、一致する人がいるとする。これは容疑者で一致したのとは異なり、COLD HIT呼ばれる。
「HOT」は指名手配中のという意味があるので、その反意語として「COLD」が用いられている。
COLD HITした人は真の犯人なのか。そこが問題となる。DNAが一致する確率は非常に低い。もっそい低い。1兆分の1くらい。では、データベースに1000万人が登録されていればその中で同じ人がいる確率はどのくらいか。
誕生日一致問題と似ている。50人のクラスで誕生日が全員バラバラになる確率は?答えはわずか3%になる。50人もいれば、大抵は同じ誕生日の人がいるものなのだ。
要するにDNAデータベースの中には思いのほか、一致する人もいる(かもしれない)。偶然に同一のDNAを有している人は10兆分の1っていうわけではないのだ。
そして、古典的な方法として知られる指紋。ところが今では信頼性がかなり揺らいでいるらしい。一卵性双生児でも指紋は違うって言われているけれど、本当に全ての人が全く違うという仮定、そして、指紋が一致していると判断するポイントについて、疑問がある。実際に、指紋が一致したということで、犯人ではない人を捕まえてしまっている事件もある。
2004年にスペインで起きた列車爆破テロでは、指紋が一致したアメリカ人弁護士(海外旅行に10年以上行っていないにもかかわらず)を不当に拘束したことについて、FBIは謝罪している。
本書から一部抜粋。
1980年代、1990年代にはまだ「遺伝子指紋法」として科学的な検証研究を通して徐々に裁判所で地位を獲得しつつあったDNA鑑定が、今では指紋鑑定の主張する信頼性を検証する基準としてあげられているという事実には、なかなかの皮肉がある。
裁判における証拠の許容性という観点から、「信頼性」というのはなかなか重たい言葉なのだ。アメリカの裁判では、Daubert基準というのがあって、簡単に言うと「事件に関連性があり、専門家証言の信頼性があると裁判官が判断すれば、証拠として認めましょう」ってなっている。信頼性がないってことになってしまうと、指紋が裁判の証拠にならない。大変なのだ。
ベイズ推定も面白い話だった。色々と書きたいけれど、かなり長くなりそうなので諦めます。
「数学で犯罪を解決する」シンプルだけど奥の深いテーマだ。これからも数学は発展し、事件解明の一助となるだろう。ぼくたちが知らないうちに。
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(感想文の感想など)
結局、ドラマ見てない。Huluで見れるらしい。
DNA鑑定に使われる技術も当時から変わっているだろう。
日本では犯罪捜査と技術動向についてまとまったレポートは出されているのだろうか。あんまりよく知らないのだけれど。科捜研とかはドラマになっているけれど、そちらも見たことないので何とも言いようがない。