40代ロスジェネの明るいブログ

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感想文08-45:英単語500でわかる現代アメリカ

※2008年8月29日のYahoo!ブログを再掲

 

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題名にひかれて読んでみた。

序論に著者の英語学習に関する考え方が記されている。学校教育での英語学習は、いわゆる「詰め込み型」と「コミュニケーション型」に揺れ動いているとのこと。そして著者は、詰め込み型の方を重視している。

確かに、言語の基本である、文法の構造と単語が分からないと、聞き取れるとかしゃべれるとかそういう次元にさえつながらない。そりゃそうだ。知らない単語は、意味を把握することができないんだから。単語の意味が分からないと、原理的には何語かすら判別できない。

そういう考えを持つ著者が現代アメリカを論じている。

本書は、横書きで現代アメリカ論が日本語で書かれ、その一部が英語になっている。英単語500と思っていたら、実際にはもっともっと使われている。最初は読みにくく思う。けれど、だんだんコツをつかんでくると、英語と日本語が同時に頭に入ってくる。学習効果は分からないけれど、現代アメリカを理解するのには役だったように思う。

さて印象に残っているのは、今年の米大統領選における共和党の指名候補である「ジョン・マケイン」の話。民主党クリントンオバマのデッドヒートは日本でも盛り上がっていたので、二人のことはテレビでも良く取り上げられ、露出もあったのでよく知っていた。対するマケインのことはあまり知らなかった。

現在72歳。字句通り、壮絶な戦争体験をしている。簡単だけど、本書を元に紹介したい。

祖父も父も海軍の将校である、軍人一家に生まれる。時は折しもベトナム戦争。31歳の軍人マケインは、ハノイで撃墜される。両腕を骨折していたが、ほとんど治療を受けることもなかった。父親が海軍将校であることが北ベトナム側に判明し、捕虜となる。激しい拷問を受け、折れた両腕で吊されたりもした。その後遺症で、今も頭より上に腕が上がらない。結局、5年半ハノイで捕虜生活を送った。

こんな経験のある政治家は日本にいるのだろうか。この強烈なキャラクターは、民主党候補となったオバマと十分にわたりあえる。アメリカという国のすごさを改めて知った。

もう一つ、マケインのエピソードを紹介したい。マケインはハノイでの捕虜生活がきっかけとなって、国民に広く知られるようになり、政治家として新たな人生をスタートすることになる。

1982年にアリゾナ州選出の下院選挙に出馬。しかし、対立候補から「carpetbagger(落下傘候補)」と非難された。

その時の対立候補に向けた演説が・・・これだ。(ベストハウス風に)

"Listen, pal. I spent 22 years in the Navy. My father was in the Navy. My grandfather was in the Navy. We in the military service tend to move a lot. We have to live in all parts of the country, all parts of the world. I wish I could have had the luxury, like you, of growing up and living and spending my entire life in a nice place like the First District of Arizona, but I was doing other things. As a matter of fact, when I think about it now, the place I lived longest in my life was Hanoi."

「自分、よう聞いとけよ。わしは22年間海軍におった。おやじも海軍やったし、じいちゃんも海軍やった。わしらみたいな軍人は異動が多いんや。国中の、いや世界中のいろんなところに行かなあかんねん。わしやってな、このアリゾナみたいなええとこで、自分みたいに、ぜ~たくに暮らしたかったわ。でもな、わしはずーっとちゃうことやっとったんや。実際な、今気付いたけど、これまで一番長くおったんは、ハノイやったわ(爆笑)」

※ぼくの勝手な関西弁風翻訳

うーん、強烈。プロレスのマイクパフォーマンスかっていうくらい、皮肉のパンチの効いた演説。オバマの演説も何か人に訴えかける強さを持っているけれど、マケインも負けじと面白いことを言う。破天荒な人生は、凡人にはひどく魅力的に映るものだ。

11月からアメリカ大統領選(未だに仕組みをちゃんと把握できてないけれど)は本格化する。次の大統領が、オバマになるか、マケインになるか分からないけれど、両方ともさすがアメリカと言えるような、傑出した、魅力的で、面白い人物と言えるだろう。

本書は、アメリカ大統領選だけでなく、人種問題、中絶論争、国歌・国旗、アメリカの歴史、音楽など、様々な側面からアメリカを論じている。ある程度の予備知識がないと、読み進めるのは難しいし、受験勉強では目にしない単語もたくさん登場する。

それでも一読することをオススメする。500の英語は、アメリカを知る上で、いや、世界を知る上で、把握しておくべき大切なキーワードなんだ。

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(感想文の感想など)

我ながらマケインの演説の関西弁風翻訳はなかなか秀逸だ。残念ながらマケイン氏は2018年にお亡くなりになっている。知らんかった。

2024年はオリンピックイヤーでパリ五輪があるが、同時に米大統領選イヤーでもある。11月に決着がつくが、バイデンとトランプの一騎打ちになるのだろうか。アメリカ政治の混迷具合もなかなかに根深い。