今村夏子さんによる小説。今村さんの作品は初めて読んだ。会社の方にお借りした本であり、40過ぎのおじさんである自分ではなかなか選択しない一冊。なお、本書は2020年に芦田愛菜さん主演で映画化されている。映画は見てない。
中学3年生の少女が主人公の小説を読む機会がそもそもないので、非常に新鮮だった。遡ると2008年に読んだ『西の魔女が死んだ』以来ではなかろうか。その前は、さらに10年以上前、たぶん私が大学生くらいに読んだ、『風葬の教室』かな。
長男が中学3年生ということもあって、完全に親、あるいは本書に登場する親戚のおじさん目線で読む。こういう家庭が親戚にいたら、どうするかな。あんまり深入りしたくはないな。
日本の10大新宗教(感想文16-35)を書いたときは、家族で宗教問題が発生していたのだが、コロナもあって、あんまりこの話題は出てこなくなった。でも解決はしていないだろう。宗教の話は難しいな。
好きな人や大事な人が信じていることが、残酷な事態を引き起こし、周りの人を巻き込んでいく物語は現代のホラーとも言える。巻き込まれた方はたまったもんじゃない。知人や親族が客観的に「あたおか状態」になったときにどうすれば良いのだろうか。
本書を読んでも指針はない。なにより余白の多い物語なので、色々と考えさせられてしまう。果たして主人公に「救い」はあるのだろうか。そもそも「救い」とは何だろうか。
歪みや狂いが徐々に顕在化し、主人公の成長とともに可視化され、認識していくが、それでもなお変われない状態にあるし、認知的不協和も引き起こす。周囲の人たちの冷静な行動や言動が絶妙な配合で描写され、気持ち悪さと怖さがミックスされ、何とも言えない読後感があり、その余韻は長い。
自分自身の認識そのものの根底を揺さぶられる。信じているものを本当に信じて良いのか。