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感想文09-14:毒と薬の世界史―ソクラテス、錬金術、ドーピング

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※2009年3月8日のYahoo!ブログを再掲。

 

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本書では薬と毒に関連するエピソードを古代、中世、近世、近代、そして現代にわたり、数多く取り上げている。

考えてみれば、世の中にはほぼ無限の化学物質があり、取り上げる素材には事欠かない。

そして同一の化学物質はある時代には薬として用いられることもあれば、またある時代には毒として用いられることもある。つまり、毒も薬も表裏一体で、著者は「薬毒同源」であると主張している。

さらに、

人類は、毒や薬のことを記録したいがために、文字や粘土板・紙を発明したようなところさえある

とも言う。

ふうむ。なるほど、古代の書物を紐解くと、毒や薬についての記載を多く発見することになるのだ。

さて、本書で初めて知ったことを備忘録的に残しておこう。

まずは、「毒を持つ鳥」について。

古代中国の書物では鴆鳥(チンチョウ)という毒のある鳥がいると記されていた。しかし、実際に毒を有する脊椎動物といえば、フグとか、ヤドクガエルとか、ガラガラヘビとか、要するにせいぜいは虫類までと考えられていた。毒のある鳥類やほ乳類はいないというのが通説で、鴆鳥は空想上の生き物と信じられていた。

ところが、1992年に「ピートフーイ」という毒のある鳥がパプアニューギニアで発見され、サイエンス誌で発表された。その鳥自身では毒を産生できないので、毒のある虫を食べて、毒性を有するようになるらしい。

ということで鴆鳥は本当に存在してたのかもしれません。

ちなみにほ乳類では、トガリネズミとカモノハシがそんなに強力ではないものの毒を有しているとのこと。

もう一つは「アルカロイド」。これだけでものすごくたくさんの事件について書けそうなほど多種多彩。

アルカロイドとは、ウィキペディアによると「窒素原子を含み、塩基性を示す天然由来の有機化合物の総称」だそうな。

有名なアルカロイドとして、カフェイン、コカイン、テトロドトキシンドーパミン、ニコチン、モルヒネがある。この短いリストを見るだけで、「薬毒同源」という言葉の意味を実感できるかも知れない。

さいごに「ナス科」。植物の分類についてあんまり知らなかったけれど、食卓を賑わす食材にナス科が多い。ナスはもちろん、ピーマンもジャガイモもトウガラシも、それからタバコだってそうだ。そしてナス科はアルカロイドを含むものが多いということを知った。

身近なところでは、ジャガイモの芽に含まれる毒素のソラニン、トウガラシのカプサイシン、タバコのニコチンなどがそう。

ちなみにハリーポッターやファンタジーゲームで登場するマンドラゴラもナス科でアルカロイドを有していて、さらに村上龍の「コインロッカー・べイビーズ」で出てくるダチュラ(チョウセンアサガオ)もナス科。

なかなかアルカロイドの世界は面白い。

無邪気に○○という物質で痩せるとか代謝が良くなるとか血液がさらさらになるとか信じちゃダメだね。

だって毒にも薬にもなるんだもの。

 

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(感想文の感想など)

自分の感想文ながらアルカロイドについて今ではすっかり忘れていることに驚く。二次代謝産物の中の一群なのかぁ。薬の研究はたくさん聞くけれど、毒の研究はあんまり聞かない。まあ、人体実験できないものね。