※2010年10月7日のYahoo!ブログを再掲
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ルポ貧困大国アメリカの続編。
続編はたいていつまらないもの、という固定観念を振り払うほどの面白さと強烈さ。Ⅰでは貧困ビジネスで戦地に送り込まれる貧しい者について印象的だったけれど、今度は転落する人たちの幅がいっそう広がっている、つまりは貧困ビジネスが急成長している現状をルポタージュしている。
本書は、現時点で今年もっとも多くのポストイットを貼りつけた本でもある。
アメリカの現在について驚いたファクトを挙げていくと、
- 7秒に1軒家が差し押さえられている
- 帰還兵の自殺率は戦場での死亡率を超えている
- アイビーリーグへの一般家庭出身学生の入学はほぼ不可能
- 小児救急医は全米で758人しかいない
- アメリカの総人口は世界の5%だが、囚人数は世界の25%を占める
アメリカに生まれなくて良かったと思うほどの悲惨さ。転落したら這い上がれないのは日本でも同じだけれど、アメリカでは転落するようにあちこちにトラップが仕掛けられている。
本書では、「学資ローン」、「医療」、「企業年金」、「刑産複合体」という4つのテーマについて書かれている。気になったこと、特に「学資ローン」と「刑産複合体」についてちょっと整理してみたい。
まず「学資ローン」。
アメリカ最大の学資ローン会社であるサリーメイ。これがアメリカの学生を食い物にしている現状をありありと描いている。
学歴がないとアルバイトのような低賃金の仕事しかない。そのため、学生は大学に入ろうと必死になる。しかし、お金が無い。そこで学資ローンで借金をする。でも、途中でいきなり金利が上がり、返せなくなる。自己破産しても借金は残るような
子どもたちにとっての教育が、将来への希望ではなく恐怖や強迫観念に変わる時、彼らの不安はある種の業界にとって、有益なビジネスチャンスになる。
ということで、実際に
学資ローンは住宅ローンと並ぶ巨大なマーケット
になってしまっている。
つまり、アメリカにおいて
中流階級にとって最も大きな夢であるマイホーム、そして誰にも開かれた教育
がサブプライムローンと学資ローンという巨大産業になっている。
そして、「刑産複合体」。あんまり聞きなれないっていうか、聞いたことのない言葉だけれど、早い話が刑務所と産業界が結託しているということ。スローガンは
何?それでもよく分からないって。
そもそもアメリカでは刑務所の数が増えている。しかも民間企業が運営している。さらに、軽微な罪でもすぐに捕まるように州法が改正される。そして、
犯罪者が三度目の有罪判決を受けた場合、最後に犯した罪の重さに関係なく自動的に終身刑にするという法律
であるスリーストライク法によって、終身刑となる囚人が増えている。
刑務所には人が溢れている。彼ら彼女らが非常に低賃金な労働力に変えられる。例えばコールセンターのオペレーターといった仕事がある。囚人たちはアメリカ人なので英語ができる。だからわざわざ低賃金であっても英語ネイティブでない第三国にアウトソースすると格段に質が下がる。でもアメリカ人の囚人なら問題ない。こうして貧困ビジネスよりもいっそうタチの悪い刑務所ビジネスが誕生する。
これは学資ローンやサブプライムローンといった借金漬けになる人を作り出すシステムと地続きだ。教育や住宅といったごく当たり前のことのために借金を作らせ、返せなくなり、転落し、軽微な犯罪に走らせ、捕まり、極低賃金な業務に就かせる。
「国民総借金大国」アメリカというわけです。一部の人々にとってみれば、より効率よく利益を生み出すシステムに近づいているとも言えます。
そのとおりで、一部の金持ちが、より効率よく収奪するシステムが完成しつつある。これは、国民総借金大国という生やさしいものではない。奴隷大国アメリカだ。堤さんの続編は、きっと「ルポ 奴隷大国アメリカ」だろう。
オバマが大統領となり、アメリカが変わることが期待されていた。しかし、実際にはそうではないことがだんだんと分かってきた。普通の市民がいつ奴隷へと転落してもおかしくない、そんな状況になってきている。
世界を飲み込もうとしているのは、「キャピタリズム(資本主義)」よりむしろ、「コーポラティズム(政府と企業の癒着主義)」の方だろう。
とあるように、悲惨なシステムへとチェンジしつつある。コーポラティズムも資本主義の一形態(なぜなら資本を蓄積することを目的としているから)だが、先鋭化している。
ともかくブッ飛んでいる国アメリカ。続編を楽しみにしてます。
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(感想文の感想など)
残念ながら、続編は(株)貧困大国アメリカで予想はハズレでした。
アメリカかぁ。人生で再び渡米することはあるだろうか。ハワイには行ってみたい。