※2009年3月5日のYahoo!ブログを再掲
↓↓↓
生物学的な意味で性に関する新書。
テーマの重なる新書できそこないの男たちでは、読者をぐっと世界に引き込ませる迫力があった。スリリングに展開し、さいごには大胆な仮説が提示される。
一方で、本書では、生物学で明らかになったことを真摯に解説し、雌と雄が織りなすこの世界の不思議を丁寧に教えてくれる。至って誠実で真面目な本だ。
あとがきにこうある。
目的論的に現象を説明することもしたくなかった。話をおもしろく、わかりやすくするためにという誘惑はきわめて強いのだが、それは本末を誤っている。
確かにある現象に目的を求めてしまいがちだ。そこをきちんと自戒して書いているということについて、読者たるぼくもきちんと敬意を払いたい。
(いちおう)生物学的知見があるので、書かれていることについて、特段目新しさを感じたわけではなかった。アポトーシス、テロメア、iPS、クローン、はたまた生物の多様な性の分化についても。
とはいえ、知っているから良いやと読み飛ばすようなことはなかった。淡々としたいかにも理系然とした文体ではあるが、著者のタフな科学の土台を感じたからだ。
いきなり前の本と比較するのもどうかと思うけれど、「サイボーグ・フィロソフィー」のような話題性のある最先端科学だけをつまみ食いするような、軽々しさはない。どうしてもアレは貧弱だよなぁ…。
とにかく本書は良書である。こういうのを新書でどんどん出して欲しい。
魚は簡単に性転換する。内分泌攪乱物質(いわゆる環境ホルモン)でメス化したり、集団で一番大きな魚がオスになったりする。こういう現象があるということは知っていたけれど、どういう風にしてそうなるのかは知らなかった。「性転換する魚たち」という本があるので、今度読んでみようと思う。
さいごに。生物が個体としてではなく、集団として性システムを維持していることについて印象に残った。最たる例が、ミツバチだ。社会性昆虫と呼ばれているけれど、「社会」というよりも、個体が細胞であり、集団が個体(超個体)という理解の方がすんなり受け入れやすいように思う。
ふむ。社会性昆虫のことについても関係する本を読んでみたい。
↑↑↑
(感想文の感想など)
そうだったか。この本がきっかけで、生物の性の本を読み、社会性昆虫であるハチの本を読んで、CCDを知ったのか。
本を読んで、そこからまた新しい未知なる本へとつながっていく。本の樹状図を作れるはずだが、作るのはかなり面倒そうだな。