40代ロスジェネの明るいブログ

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感想文14-09:クマムシ博士の「最強生物」学講座

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※2014年2月19日のYahoo!ブログを再掲

 

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著者の堀川大樹さんは、クマムシを専門とする生物学者だ。1978年生まれということで30代なかばの若手研究者だ。私と同い年で少し親近感がわく。

クマムシは聞いたことがある人も多いだろう。ものすごく過酷な環境でも生きられる、地球上で最もタフな生物の一つだ。本書では捕まえ方だけでなく、飼育方法まで掲載された実践的な一冊となっている。

2014年1月24日の日経新聞で『零下196度でも死なないヒルを発見』という記事があった。ヌマエラビルという種類のヒルで、凍結して解凍しても生きているとのこと。

また、2014年1月2日の産経新聞で『“絶食”のまま6年目 三重のダイオウグソクムシ』という記事もあった。6年間も餌を食べないでも生きていられる。世の中は広いもので、人間の常識では考えられないような生物が生息している。調べられていないだけで、まだまだ驚きの能力を秘めた生物がいるかもしれない。

さて、本書で気になった箇所を挙げておこう。

プロフェッショナルの日本人クマムシ研究者は、私を含めて5、6人といったところだ。

少ない。わりと知名度のある生物だけれど、プロの研究者は少ないようだ。意外だなぁ…。

堀川さんが発見したのは、「ヨコヅナクマムシ」という種類のクマムシ。発見したのはいいけれど、そのクマムシを飼育するためにかなり苦労されたようだ。要するに何を食べてくれるか分からないと、死んじゃうので、増やしようがない。

餌もクロレラ工業株式会社の「生クロレラV12」という特定の銘柄のクロレラしか食べない。

マニアックな生物は好みもマニアックだ。どうやら魚の餌らしい。ちょっと銘柄が違うだけで食べてくれないとのこと。

本書では、クマムシだけでなく、最先端の生物学について分かりやすく紹介している。印象的だったのは、人工化合物のクロロウラシルが、DNAのチミンに置き換わった大腸菌が生まれたという話。

今回の研究結果から示されたことは、「生物を作る部品は現存する分子でなくてもオッケー」ということだ。

DNAという生物の基幹ともいえる分子ですら置換可能という事実であり、いわゆるサイボーグ化した大腸菌が現実に誕生している。思った以上に生物は柔軟だ。

それから、初めて知ったこととして、サバクトビバッタの相変異のこと。

個体密度が低い環境では、孤独相とよばれるモードになっている。しかし、個体が密集した環境で生育すると、その子どもは親に比べて飛翔力に優れた形態をもち、群れを作るようになる。体色も、緑色から黒色へと変化する。このモードは、群生相と呼ばれる。 

大量のバッタが畑に飛んできて、食い荒らして去っていくといったことがたまにニュースになる。その犯人がサバクトビバッタだ。群れをなすとモード・チェンジする。ウィキペディアには写真も載っているけれど、孤独相と群生相では、色も違えば顔つきも違う。同一種だとは思えないほどの変わり様だ。こういう生き物もいるんだね。

私は、国に頼らずに十分な研究費を確保する手段として、キャラクタービジネスを提案したい。

ほほう。堀川さんは実際にクマムシさんというキャラクタービジネスを展開している。

確かに可愛い。もふもふしたい。実際の大きさとはずいぶん異なるけれど。

キャラクタービジネスは当たれば大きい。ふなっしーもテレビで引っ張りだこで、関連グッズはたくさん発売されて、結構売れている。とはいえ、既にたくさんのゆるキャラ自治体で製作され、過当競争になっている。巷にゆるキャラはあふれ、飽和状態だ。

それでもキャラクタービジネスは魅力的な資金源となりうる。特許権と同様に当たる可能性は低いものの、そんなに維持管理費用をかけずにビジネス展開できるのは長所といえよう。可愛さだけでなく、ある種のキモさ、際どさといった他にない魅力をアピールできるとブームになるかもしれない。国に頼らない研究費の稼ぎ方を模索するというのは、何とも現代の研究者らしい。

しかしながら、得てしてキャラクター性が強いのは、生み出されたクマムシさんではない。生み出した堀川さんご本人だろう。本書では、堀川さん以外にも生物学者が登場するが、どの方もキャラが濃い。世間的には変人と分類されることだろう。

キャラクタービジネスへの展開を推奨するのは、ご自身や付き合いのある研究者を投影した結果なのかもしれない。ポストさかなくんになれるか。今後の動向が楽しみだ。

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(感想文の感想など)

今現在、堀川さんはポストさかなクンにはなっていない。別に目指していたというわけでもなかろう。研究者によるキャラクタービジネスは私の知る限りでは進んでいるとは言い難い。

むしろクラウドファンディングを活用したり、(私はあまり知らないが)ユーチューバーとして研究費を確保している方がいるのではないだろうか。

国から基礎研究への投資は減少傾向にある一方で、国以外から研究費を集金する仕組みやアイデアはまだまだたくさんある。マジメに科研費を獲得するために書類を作成するのも良いが、拘らなければやりようはあると思う。別の道も、そりゃあ、大変だけどね。