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感想文09-19:さらば財務省!―官僚すべてを敵にした男の告白

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※2009年3月30日のYahoo!ブログを再掲

 

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著者の高橋洋一は、財務省の元官僚である。

本書では、小泉政権下に起きた郵政民営化の全体像が、実働部隊にいた著者の視点から生々しく記されている。

郵政民営化は、05年9月の解散総選挙で、民意を得て、達成された。とはいえ、本当に郵政民営化の是非がきちんと国民が判断したかというと疑問が残る。

何となく、勢いで小泉純一郎を支持したけれど、郵政民営化って一体どういうことなのかは、案外、多くの国民は分かっていなかっただろう。ぼく自分も含めて。

本書ではっきりしたのは、郵政民営化は是か非かの問題だったのではないく、避けられない事態だったということだ。

そして、現在の政治の大雑把な見取り図を知ることもできる。どの政治家が「上げ潮派」でどの政治家が「財政タカ派」なのか、だれが「小さな政府」をだれが「大きな政府」を目指しているか、同じ自民党内でもこうも違うかということが分かる。

また、「政治家と官僚と国民はジャンケンの関係」という話も印象深い。上手く関係性を言い表している。政治家は官僚に強いが、投票権のある国民に弱い。官僚は国民に強いが、政治家の圧力には屈する。国民は政治家を選べるが、お上にはあっさりと従う。

なるほど。

この3すくみによって、ある種の安定は築かれているのかもしれない。

さらに、著者が最後に関わったのが「公務員改革」だ。現在、すっかり骨抜きにされている感はあるけれど、郵政民営化よりも遙かに困難な改革だ。

現在の官僚は、ほんの少しでも既得権益を奪われそうになると、激烈な拒絶反応を示す。あらゆる手段を駆使して、改革案を骨抜きにし、無力化しようとする。

自身の将来の安定した基盤を揺るがしうる公務員改革が、遅々として進まないのは、公務員改革のために、公務員が関わらざるを得ないという構造的な問題があるからだ。

政治家が主導して改革を進めるのが理想だが、それが能力的にできそうにない。官僚でありながらも改革に協力した著者は、結果的に、副題の通り「官僚すべてを敵にした」のだ。

本書は新しい話題だからこそ、楽しめるものでもある。鮮度のあるうちに興味のある人はお読みすることをオススメします。

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(感想文の感想など)

著者の高橋洋一さんは菅義偉内閣で内閣官房参与(経済・財政政策担当)となり、密かにご活躍を期待していたのだが、「さざ波」が悪かったのか、「笑笑」が悪かったのか、ツイートが大炎上して辞任へと追い込まれたのは記憶に新しい。

うーむ、中野雅至さんよりも遥かに著書が多い。